質問 五
谷川さんは、多くの優れた作品を翻訳していらっしゃいます。
しかし、ある母国語で書かれたものを日本語にする際、もとの言語がわからない人たちにうまく伝えることは難しいと思うのです。
違う言語を話す人が、同じ考え方をすることはとても難しい。
谷川さんは、このことについて何か秘密をお持ちではないかと思います。
ぜひ、そのことについておうかがいしたいのです。
(アブラール・アブドゥルマナン・バール 二十三歳)
谷川俊太郎さんの答え
秘密なんて持ってませんよ。
ぼくの専門の詩の分野では他言語への翻訳は基本的に不可能という前提で出発するほうがいいと考えています。
詩ではなくても一義的なデジタル言語はともかく、言語はすべて多義的なもの、アナログ的なものですから、その広く深い「含意」(connotation)は辞書だけでは分かりません。
でも実生活や本を通して母語を深く経験していくと、母語と他言語の含意の重なり合う部分が、とらえやすくなると思います。
それは翻訳と相互理解に役立つのではないでしょうか。
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