第1回 自分が何時間寝たか? 時計を見ずに、当ててみて。
[池谷]
睡眠特集にさきがけて行なわれた
『「ほぼ日」睡眠アンケート』
の質問項目に、僕の訊きたい質問をじつは、まぜてもらっていました。
どの質問かというと、これです。
ふだんの睡眠時間
理想の睡眠時間
科学的に正しい睡眠時間のイメージ
この結果を見て、まず思ったのは、みなさんが実際に寝ている時間と、
「これだけ寝れば科学的に十分だろう」
と思う時間が、けっこう似ていることです。
みなさん、自分がやってることは正しいと思っていらっしゃるんです。
その一方で、当然といえば当然なんですが、
「何時間寝たいか」をたずねられるとより長い時間を答えています。
[糸井]
そうですね。
「理想の睡眠時間」で、もっとも回答の多かったのは8時間。
僕も、睡眠はやっぱり、長ければ長いほどいいと思ってます(笑)。
[池谷]
「もっと仕事したいから、3時間に減らしたい」
と、逆の答えをする人がもう少しいるかと思っていました。
つまり、多くのみなさんが長く寝たいと思ってるんですね。
[糸井]
それは、ある種の自己愛から来ているのかもしれませんね。
「こんなにがんばっているのに、 本来手にできる幸せを得られていない。
いずれは望んだ分だけ寝られるような、 自分になってみたい」
僕もそうです(笑)。
[池谷]
なるほど。
睡眠をたくさん取るということが、ひとつの理想、いわばステータスなんですね。
糸井さんは、睡眠時間は短いほうですか?
[糸井]
短くないです。
僕はいつも眠くて、いくらでも寝たい人間です。
だいたい6時間は寝ていて、それで、少ないと思っています。
二度寝も好きです。
[池谷]
二度寝は、みんなが好きですね。
[糸井]
二度寝は「俺は寝てるんだ」ということを意識できつつ眠るから、心地いいんでしょうね。
つまり二度寝は、ごちそう感がある。
ほんとうに熟睡している場合には熟睡と感じられないから。
[池谷]
まさにそうです。
最後の30分は気持ちいいとか、あと10分寝ていようとか、それは自分が「そう考えた眠り」です。
例えば、ほんとうに集中してるとき、
「オッ、俺、集中してる」とは思わない。
「俺、集中してる」と思ったら、それは集中してないんです。
同じように「俺、いま寝てる」と思えるのなら、それは寝てないわけです。
みなさんは、おそらく自然にフッと起きたときには、まず時計を見るでしょう?
[糸井]
見る、見る。
[池谷]
「自分が何時間寝たか」をほんとうは、脳はわかっていないんです。
もしわかっていたら、時計を見なくていいんですから。
[糸井]
いやあ‥‥それは、ほんとうに、わかってないですね。
「まだ暗いから3時くらいかな?」
なんてことは、すぐ考えるけど。
[池谷]
何時間寝たか、見当をつけても、意外とはずれたりします。
[糸井]
はずれる、はずれる。
[池谷]
そういう点から考えると、アンケートで訊いた
「何時間寝たいか」といったときの
「何時間」が、どういう意味合いをもってくるのでしょうか。
どう、たくさん寝たところで、
「寝た」という実感は、ほんとうはないんです。
[糸井]
ない、ない。
わかってないんだから、ない。
[池谷]
ですから、たくさん寝たという実感は、どれだけ、朝、ふとんの中でグダグダしたか、という感覚だけなのかもしれません。
それだったらば、ピュアな睡眠とはいえないです。
(つづきます!)
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