[南]
ジャムって、まだつくってるの?

[糸井]
つくってるよ、相変わらず。
こないだは、柿のジャムをつくった。



[南]
柿。へー。

[糸井]
そんなにおもしろくもないんだ、柿のジャムは。すぐできるから。

[南]
そうなんだ?

[糸井]
うん。
種だけ取っちゃえばたいして苦労もなく。
あ、でも、こないだの柿は
「種なし」だったな。

[南]
柿も「種なし」になってるのか。
なんか、最近の果物は、どんどん種がなくなってるような。

[糸井]
そういうふうに改良してるんだろう。
よかれと思って。

[南]
けど、スイカなんかは、元に戻ったね。
「種なしスイカ」っていうのが昔、ちょっと流行りかけたじゃないですか。

[糸井]
あー、そうだね。

[南]
でも、いつの間にか見かけなくなった。

[糸井]
そういえばないね。

[南]
評判よくなかったんだな。



[糸井]
苦情が来たりしたんだよ、きっと。

[南]
苦情?

[糸井]
あの、昔さ、男を侮辱するときに、
「この、種なし!」とかって言ったじゃない?
それを連想させてよくないっていうメールがたくさん来たんじゃないかな。

[南]
なんだそれ(笑)。

[糸井]
「種なしスイカという名前を見て 傷つく人がいると思います!」
みたいなメールがたくさん届いたんだよ。

[南]
どこに?

[糸井]
農家の、おじさんのところにさ。

[南]
おじさんのところに、メールが。

[糸井]
うん。
「『種なし』だなんて、 ショックです!」みたいな。
「がっかりです!」みたいな。
で、スイカの種は、元に戻すことにした。

[南]
ま、絵的には、スイカの種は、重要なアクセントになるから、ぜひ、あってほしいんだけどね。

[糸井]
ああ、絵的にね。

[南]
そう、絵的にいうと、ないと困る。

[糸井]
じゃあ、「種なしスイカ」が主流になると、
「絵的に、種がないのは傷つきます」
っていうメールが来ちゃうね。

[南]
なんでもメールだね、最近は。

[糸井]
なんでもメールだよ。
「絵的に、ショックです」
「絵的に、がっかりです」
っていうメールが、じゃんじゃん来ちゃう。



[南]
‥‥あ、晴れてきたね。

[糸井]
そうだね。

[南]
なんか、いい天気になってきたじゃない。

[糸井]
最近、伸坊と旅に来ると、いっつもこういう展開だね。
どこかで1回、ものすごい雨が降って、そんで晴れるっていう。

[南]
ほんと、そうだねー。
でも、なかなかいい雰囲気だ。

[糸井]
雨降って、地‥‥濡れる。
しっとりとした風景になったね。
まるで日光に来たかのような。



[南]
ほんとだ。日光みたいだ。

[糸井]
日光なんだけどね。

[南]
日光だね。

[糸井]
「日光と言うな!」

[南]
「日光と言うな!」

[糸井]
伸坊は日光の方が好きで、奥さんは月光が好きなんだよ。

[南]
はははは、逆だよ、逆(笑)。

[糸井]
あ、逆か(笑)。
知ったかぶりしちゃったな。
ひとんちの夫婦のことなのに。

[南]
ははははは。



(晴れてきたみたいですね。つづきます)


前へ 次へ
目次へ    
友だちに教える
感想を送る
書籍版「黄昏」
ほぼ日のTOPへ