[糸井]
昭和のことって、なまじ、覚えている人が多いぶん、
「オレの記憶だと、そうじゃなかったぞ」って突っ込む人も多いですよね、きっと。



[重岡]
はい、それは想定しました。

[糸井]
時代考証なんかもしつこくやったんですか?

[三谷]
台本の段階で、かなり厳しくやりましたね。
事実からあえて離れるとしても、
「こういう解釈でやりました」ときちんと答えられるように。

[糸井]
なるほど、なるほど。

[重岡]
ですから、まず三谷さんに書いていただいて、それをもとに、実在の人物であれば許諾、事件や事故でも関係者の了承をとりまして、入れる話が決まったあとで、そこから時代考証の先生に見ていただくという感じで。
時代考証については、そうですね、一夜の話につき、だいたい100箇所くらいはチェックが入るような感じでした。

[糸井]
そんなに。

[重岡]
このころは豆腐の配給がありませんとかこの言葉はありませんとか。
あとは、うちの報道局にも相談して、事件の解釈が報道的に間違ってないかとか、いちいち確証を得ながら。
弁護士の方にも相談しましたし。



[糸井]
はぁー。
つまり、ドラマだけど、ドキュメンタリー成分も強い。

[重岡]
そうですね。
ですから、さきほどのオズワルドの話のようにぎりぎりで入れられない話も出てくるんです。

[糸井]
なるほど。

[三谷]
そういうこともあって、今回、あて書き
(出演する役者さんに合わせて脚本を書くこと)
は、ほとんどしてないんですよ。
とくに、実在の人物に関しては。

[糸井]
それはつまり、先に台本ができてないと、ドラマに登場させる許諾ももらえないから。

[三谷]
そうなんです。
だから、まぁ、役者が決まってからその人に合わせて本を修正する、みたいなことはやりましたけど、
「この役はこの人!」と決めて書いてはいないですね。
ただ、唯一、吉田茂役の角野卓造さんだけは、僕のなかで完全に決まってました。



[一同]
(笑)

[糸井]
はははははは。

[三谷]
以前、角野さんとお仕事したときに、
「この人で吉田茂をやりたい!」って、思ったんです。10年くらい前かな。

[糸井]
そんなに昔から(笑)。

[三谷]
そうなんです。
ずーっと夢だったんですよ。
あの人に吉田茂を演じてもらうのが。

[糸井]
ご本人も得々としてやってらっしゃいましたよね。

[三谷]
この10年でますます似てきた。
特に髪型が。
ノーメイクでもOKなくらい。

[糸井]
はははははは。
西田敏行さんは、あて書きですか?

[三谷]
西田さんは、かなりあて書きです。

[糸井]
そうですよね(笑)。
あの、西田さんの、ちょうどよい、おもしろさとずるさっていうのはあの時代にぴったりですよね。



[三谷]
そうですね。

[糸井]
絶妙の加減なんですよね。
気持ちよく生きられますようにって、いつも心から願ってる純粋さが根っこにあって、屈託がないんだけど、人から見たら、それはずるいじゃないかって言われそうな不真面目さもあって。

[三谷]
ああいう人って、あの時代にいっぱいいそうな感じがするんですよね。
バイタリティがあって、とかく夢見て事業を起こして、失敗して、家族に迷惑かけるんだけど、懲りない。
憎めない男なんだけど、、意外に憎めたり。

[糸井]
うん、うん(笑)。

[三谷]
客観的にみると、ほんと、どうしようもない人ですからね。
それでも嫌いになれないっていう加減は、西田さんじゃなきゃできない気がします。

[糸井]
いや、そのとおりだと思います。
さて、長く話してきましたけど、そろそろ時間が来てしまいました。
ま、ぼくはおもしろく観たのでいいとして、まだ観ていないぼく以外の方に、なにかあれば。

[三谷]
そうですね‥‥最初、この企画をもらったときに僕は、それは、3夜連続なのか、毎日なのかわからなかったんですけど、とにかく連続したものをやりたいんだ、っていう話をしたんです。
けっきょく3夜連続になったんですけど、その、やっぱり、1日目を観てで、1日置いて、2日目を観て、また、1日経って、3日目を観る。
3日間かけてこれを観ることがなんか、僕にとって大事な部分というか、やってみたかったことだったんですね。
まぁ、糸井さんは2日で観ちゃいましたけど。

[糸井]
すいません(笑)。



[一同]
(笑)

[三谷]
まぁ、それはしかたないとして、これから観る人は、この3日間をこの一家といっしょに過ごしてほしいなと。
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