[糸井]
いくらでも時間が過ぎちゃうから、そろそろおいとましなくちゃ。
ありがとうございました。
喘息なのにいっぱいしゃべらせてしまいました。
[横尾]
なにか、最後のほうは、とんでもない話になっちゃった気がするねぇ。
[糸井]
そうですねぇ。
[横尾]
まだ6時じゃない。
[糸井]
暗くなってきてますよ。
[横尾]
暗くなると焦るよね。
[糸井]
ところで、今回の横尾さんの写真集は表紙だけが画像加工されていて、
「写真ではないもの」が出てますよね。
[横尾]
全部写真だと、退屈するでしょ?
みんなも退屈するけど、ぼくも退屈するわけ。
[糸井]
だから、絵を混ぜる。
[横尾]
そう。あとはね、表紙を写真にしたら、照れくさいんですよ。
[糸井]
あぁ、そうか。
「これでどうだ!」という雰囲気になっちゃうんですね。
[横尾]
本の装丁としても、夜の暗い写真を使うよりは、こういうデザインのほうがいいかな、と思ってね。
‥‥でもね、すごい、いま言ってるけども、できあがった結果を説明するとそうなるってだけの話ですよ。
考えというのは言語だといわれるけどね、言語的じゃないです。
ぼくは、思いついたことに対して吟味して詰めていくことはしないから。
[糸井]
たくさん考えたうえでピックアップしていくという方法はいまの社会のやり方です。
だけどそれでは、みんなを納得させる、想像できることばかりがつながってくんですよね。
[横尾]
うん。
ぼくはその場の思いつき、これがいちばん確信できる。
今日装丁したならこの表紙だけれども、明日になると、またちがうアイデアが浮かぶと思うよ。
昨日のがいいか、今日のがいいか、さらには、明日はもっといいのができるか、そんなのわからないんです。
それで検討しようなんてできるわけがない。
現代の組織はそういう発想をするかもしれないけど、それはきらいなの。
昨日のアイデアがだめだったというのなら、昨日のぼくの生き方はつまらない生き方だったということになるじゃないですか。
[糸井]
そうですね。
[横尾]
オレの昨日の生き方、立派だった。
今日は昨日よりも立派に生きよう。
そんなしんどいこと、できないよ。
[糸井]
横尾さんはそういう考えで、出版社も美術館も社会も、全部を巻き込んでやっているから、すごいです。
[横尾]
巻き込む気持ちはないけれども、考えは揃っていきますよ。
揃わないところとはやらない。
途中までやっといて断った仕事はいっぱいありますよ。
[糸井]
そうか、そうか。
[横尾]
これ以上この人とやってたら、疲れるし、しんどい。これはダメだとわかる。
そういう場合はやめます。
だからいまは、はじめからぼくのしたいことを全部言って、それに賛成するかしないかだけの話になってる。
そこで共感してくれれば、あとはひと言も文句を言わないようなムードができますよね。
[糸井]
はははは。
[横尾]
別に、文句を言わせないつもりでやってるわけじゃないよ。
バカなことばっかり言いながらやってる。
だけど、共感してくれた人たちは、その「バカなこと」に共感してくれているんですよ。
[糸井]
いや、よくわかります。
社会的なルールで決まった道よりも、そっちの「旅」のほうがおもしろいからですよ。
[横尾]
自分のルールに従うしかないからね。
[糸井]
ぼくらもそうです。
いつもそういう気持ちでやっています。
[横尾]
みんな、すごいつらかったけれども、終わると同時に「またやりたい」って言うの。
そういう人としか、仕事できないですよね。
[糸井]
うん。
多くの仕事は、ほんとうはそうなんだと思います。
いまもそうです。たのしかったです。
長居しちゃってすみませんでした。
ほんとにもう、帰りますね。
‥‥これ、いま描きかけの絵ですか。
[横尾]
そう。依頼してくれた人をあまりにも待たせちゃってるから、今日もこれから、やってかなきゃなぁ。
‥‥寒くなってきたよね、最近ね。
[糸井]
そうですね。ここも冷えてきました。
あったかくしないといけませんね。
[横尾]
そうね。
[糸井]
それじゃ、失礼します。
また、横尾さん。
[横尾]
はい、またね。
車ぶつけないでよ、門のとこで。
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これで、この対談はおしまいです。
また次の、このふたりの
「THE エンドレス」があればいいですね。
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