打合せ@楽屋

ふたつ返事でこの企画に賛同してくださった志の輔さんとすこし詳しい打ち合わせをするため糸井重里は、「志の輔らくご in PARCO 2012」の楽屋におじゃましました。短い時間でしたが、親密な相談の記録をここに残します。



[糸井]
だいじな公演を前に、 貴重なお時間をありがとうございます。

[志の輔]
いえいえこちらこそ、 わざわざありがとうございます。 気仙沼で、落語の会をということで。



[糸井]
そうなんです。 じつは、ぼくはもう、 ツイッターで発表をしてしまいました。

[志の輔]
そうですか(笑)。

[糸井]
じぶんからリークというような感じで(笑)、 「志の輔さんが引き受けてくださった」と。

※糸井のツイッターの文面(1月10日 AM3:18)
立川志の輔さんに「気仙沼で、東京からでも九州からでもお客さんが来たくなるような落語会をやってもらいたいんです」とお願いしたとき、躊躇することなく「よくぞ、わたしに声をかけてくださいました」と答えをくれました。震えるほどうれしかった瞬間です。明日、また打ち合せします。

[糸井]
鉄道とか宿泊などの調整がいま、 いろいろな方々の協力のなかで 進んでいます。 みなさん、とても好意的でありがたい状況です。 1000人入る会場も予約できまして、 日にちも決まっていますので、 志の輔さんはもう逃げられません(笑)。



[志の輔]
わかりました(笑)。

[糸井]
「ほんとにそんな1000人も気仙沼に来るの?」 ということをご心配の方もおられそうです。 でもぼくは、心配しないことにしてます。 1000人、来てもらえるようにしようよ。 慰問の時期は終わったんだと。

[志の輔]
ああー。

[糸井]
もちろん、慰問も大事だったと思うんです。 でも、気仙沼に通って、みんなと話すうちに、 この方々はもう「慰問を受ける立場」 ではなくなったと感じたんです。 「気仙沼のみなさん、落語を聞いて楽しんで!」 ではなくて、 どこからでも気仙沼に来てもらうために、 知恵と労力を使う時期になったんだと‥‥。 稼ぎ手として、スタッフとして、 この落語会では 主催者側のスタッフとして お世話する側で活躍してください! と。



[志の輔]
ええ、ええ。

[糸井]
とにかく、そうですね‥‥ 日本中の人に「うらやましいな」って言わせたい。 お客さんたちも、すごい人たちだと思うんです。 わざわざ東北の、あの、気仙沼に来てくれて、 志の輔さんの落語を楽しもうっていうんだから、 なんか信念のある人たちなんですよ、きっと。 ぜったいにおもしろいんです。 陸の孤島とさえ言われた気仙沼の落語会で、 「福岡から来たんですけどあなたはどこから?」 「北海道から」なんていう会話があるだけで、 伝説になりそうですよ。

[志の輔]
なるほど、なるほど‥‥。 てことは、日にちは決まって、 そしてその、かならずしもJRで行かなくても‥‥。



[糸井]
ええ、車でも。

[志の輔]
で、なんですか、泊まる心配なんかも。

[糸井]
(ほぼ日乗組員に)宿泊はどれくらいの進行?

[ほぼ日]
はい。 受け入れ態勢を整理したりするのも、 はじめてのことが多いので、 旅行会社さんと意外なツアープランを考えたり、 いろいろ進めています。

[志の輔]
じゃあ、そっちの心配はしなくてよくて‥‥。 この気仙沼市民会館は まったく被災はしてないんですか。

[糸井]
してないです。

[志の輔]
ということは、音響関係やライト関係も、 心配をすることはない。

[糸井]
はい。

[志の輔]
なるほどぉ‥‥(ホールの写真を見る)。



[糸井]
ここは宮城県が設営した避難所の中で いちばん最後まで残っていた場所なんです。 ここから5組の家族が 1月にいなくなったのが最後でした‥‥ぼくは、 それをNHKのニュースで見たんですけどね。

[志の輔]
そうだったんですか‥‥。 そういう場所でやらせていただけるんですね。 ちなみに、 気仙沼って人口は何人なんですか?

[ほぼ日]
7万人です。

[志の輔]
7万人なら、1000人入るホールを持ってても ぜんぜんおかしくないですね。 そうですか、わかりました。



[ほぼ日]
なにかご心配な点は‥‥?

[志の輔]
大丈夫だと思います。 ただ、そうですね‥‥ 高座の高さについては多少の上下を‥‥。 当日会場に行ってみて、意外や意外、 角度を見たら、もうちょっと上げたいとか、 もうちょっと下げたいとか、 そういうことに驚かないで付き合ってもらえると ありがたいです。



[ほぼ日]
それはもちろんです。 ‥‥座布団などは?

[志の輔]
大きめのをうちから送るようにします。 地方でやるときに、 「すこし大きめのを」ってお願いしておくと、 近所のお寺さんから借りてきた、 金の刺しゅうの立派な座布団が、どん(笑)。 みたいなことがよくあるんです。 ありがたいんですが、 それはもう、ぱんぱんな座布団ですから、 乗っかると、ころんころん!(笑)



[糸井]
安定しない(笑)。

[志の輔]
なのでそれはうちから持っていきます。 あとはそうですね、 お客様の目がチカチカしてしまうので、 できれば金屏風ではなく、 申し訳ないんだけど白の屏風にしてくれないかと、 お願いしています。 「鳥の子」という白の屏風で。

[糸井]
なるほど。

[志の輔]
それと、毛氈(もうせん)のご用意も。 赤い緋毛氈ではなく、 できれば紺色の毛氈だとありがたいです。

[糸井]
それ、最低の条件にしましょうよ。 高座の高さ、白い屏風、紺色の毛氈。 それらは、「できれば」ではなくて、 ぼくらの義務にさせてください。



[志の輔]
ありがとうございます。 ‥‥そうだ、もうひとつ大事なこと。 三味線と太鼓の人がいっしょに行ってくれたら、 生のお囃子ができるんですよ。

[糸井]
おおー。 それは、そのほうがぜったいにいいですね。

[志の輔]
いいですか。

[糸井]
いいです。

[志の輔]
じゃあ、決まった。 それはぼくが頼みますので、 三味線と太鼓の人は心配しなくてもいいです。

[糸井]
ありがとうございます。 いやあ、たのしみが増えた。 そのほかに、 「できればこうしたい」 ということは言っておいていただければ。

[志の輔]
や、ぼく、きょう訊きたかったのはですね、 糸井さんがあいだに出てきてくれて、 ぼくと話をするという そういうことができるのかどうかということで。



[糸井]
それ、あったほうがいいですか?

[志の輔]
あったほうが、ぼくはよいと思います。 ふつうの東京で見る落語会と 何が違うかっていったら、 やっぱり糸井さんがいることかな、と。 それで、なにかひとつ陽気なお話ができれば みんなうれしいんじゃないかと。

[糸井]
わかりました。

[志の輔]
糸井さんリードの対談コーナーがあったら、 ぼくもお客さんも、それはもう、たのしい。

[糸井]
投げたボールを返されちゃった(笑)。 でも、はい、 その投げられた球はもちろん受け取ります。



[志の輔]
じゃあ、ぼくらの対談がある、と。 あとは、落語会のほうの中身は‥‥。

[ほぼ日]
ぜひ「目黒のさんま」をどこかのタイミングで。

[糸井]
「目黒のさんま」は 師匠がご自分でおやりになりますか? それともどなたかを‥‥?

[志の輔]
ああー、はいはいはいはい、 それもすてきですね。 「目黒のさんま」だけを一所懸命に やりに来てくれる人がいたら、すてきですね。 わかりました、わかりました。 じゃあ、それはちょっと考えます。

[糸井]
お若い方などで、お心当たりがいらっしゃれば。

[志の輔]
「目黒のさんま祭」のさんまは、 あれ、気仙沼のさんまなんですってね。

[糸井]
そう、そのさんまの費用は、 気仙沼市が払ってるんです。

[志の輔]
え‥‥。 あー、そうなんですか。



[糸井]
目黒区の方でも、人を出したり運営したりで とうぜん多くの費用がかかり、 ご苦労もあると思います。 ただ、さんまの費用に関しては、 気仙沼市が支払っているんだそうです。

[志の輔]
それは知らなかった。

[糸井]
震災があった去年に、 気仙沼がこれを持続させたのは ほんとうにえらいことだったんですよ。

[志の輔]
はあーー。



[糸井]
つまり今回は、 イベントの利益がどこにいくかっていうのは ものすごくわかりやすいんです。

[志の輔]
その、さんま代にいく。

[糸井]
そう。

[志の輔]
なるほど、なるほど。 それはもう、来る人たちは、 ほかの落語会とは気持ちが違ってきますね。

[糸井]
そうですね。 そして秋になれば、 「目黒のさんま祭」にも行ってみよう、と。 自分たちが参加したイベントで、 送られてきたさんまを食べよう、と。

[志の輔]
うん、いいですね。



[糸井]
枠組みはぼくらが準備していきますので、 あとは志の輔さんなりの 「なにをやってやろうかな」 みたいなところはもう、お任せでお願いします。

[志の輔]
わかりました。 ‥‥ただ、こういう会のとき、 想像するだに、いちばんしんどいのは‥‥。

[糸井]
なんでしょう?

[志の輔]
公演が終わりました。 じゃあお帰りください。 というときに‥‥ 別れがたいといいますか‥‥。

[糸井]
ああー。

[志の輔]
たとえば私たちの落語会なんかでは、 ロビーにほんのわずかの升酒があったりして、 クールダウンしながら 外まで出て行けるようにすることもあります。 そういうのが何かあればいいんですけど‥‥。 その‥‥何もなく‥‥ 気仙沼まで足を運んでいただいたお客様に、 そいじゃあ終わりましたからさようなら。 で、緞帳がおりるていうのが、どうにも‥‥。



[糸井]
それはぼくも、ちょっと思っていました。 さみしいですよね。 ですから、どういうかたちで どんな規模にするかは決まってないんですが、 打ち上げをやる会場を準備しようと。

[志の輔]
ああーーー! それいい、そりゃあいいですね。

[糸井]
志の輔さん、 そうとう疲れてるはずなんですけど、 その打ち上げ会場へ、いっしょに行きませんか。

[志の輔]
もちろんですよ。 そうしましょうか、じゃあ。

[糸井]
そうしましょう。 打ち上げがあるので、 行ける人は行ってくださいと言えれば、 ひとまず舞台からお別れしやすいですよね。

[志の輔]
そりゃあもう、そうです。 またあとで! と。 ‥‥でも1000人とかのお客様で、 みんなが打ち上げに参加したいってなったら どうするんですか?

[糸井]
なんとかなりますよ。 市民会館内に別のホールもあるし、 場所を何カ所かにわけてもいいし。 まあ、どうにかなるでしょう。 (ほぼ日乗組員に)ね?

[ほぼ日]
は、はい。 調整をがんばります。

[志の輔]
そうですか。 できそうですね、打ち上げ。

[糸井]
じゃあ志の輔さん、やりましょう。 骨折れますけど、いいですよね?

[志の輔]
そんなものはもう、 骨折りついでですから(笑)。



[糸井]
いっしょに倒れましょう、その日は(笑)。

[志の輔]
よろしくお願いいたします。

[糸井]
めいっぱいやりましょう。 どうぞよろしくお願いいたします。 ‥‥あ、いけない、こんな時間。 もうすぐ開場ですね。 引き上げましょう。 いや、ほんとうにありがとうございました。

[志の輔] ありがとうございました。


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