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「噂では、道場での練習が
ずいぶん多くなったらしいですね」
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m |
「いやぁ、滑川のデビューとかあったんで、
教えられること教えとこうってのもあって。
練習台として手伝ってただけですよ(笑)」 |
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「リングス最終戦っていうことで、
センチメンタルな気分とかあるんですか?
思い起こせば・・・みたいな」
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m |
「それは、引退を決めた頃のほうが
ありましたよね。
ロシアの選手とかとやってるときでも、
コイツには世話になったなっていうか、
一人っきりで旗揚げしたときに、
参加してくれた選手たちに、
感謝するようなね・・・
いや、それが、リングの上で瞬間的に 感じるんやね。
いかんいかん、と思ったりしてて。
闘う動機が弱ってきてるなって。
いまは、そんな時期は過ぎましたから」 |
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i |
「どんな?」
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m |
「ランキングの返上もして、ただの一選手っていう状態で、
リングにあがるわけやし、守る姿勢よりも、
俺の考えているいい試合っていうのを、
山本(対戦相手の愛弟子)も俺に近いタイプやし、
やれたらいいですね」 |
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「前田のおそろしさを知れって?(笑)」
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m |
「そんなんも、ないことはないけど。
強いとか、勝つとかいうのは、
だれかの持ち物じゃないんで。
力と、時期と、思いみたいなもんと、
こう、全部トータルして上回ったほうが
奪い取るもんだと思うんで、自分は、
その〈時期〉の点で、ハンデがあるし。
山本にも、まだ自分より弱い部分がたくさんあると思うしね。
それが、ちゃんとかたちになってぶつかりあえば、
納得のいくラストマッチになると思うんで」 |
i |
「イベントっていうか、
セレモニーみたいなことは、考えてるの?」 |
m |
「いやぁ、それ、相談でもあるんですけど。
リングスのテーマと、
儀式とかお祭りみたいなことは、似あわへんと思っててね、
会社の人間とかは、前田さんの花道をとか言ってくれて、
それはありがたいんだけど」 |
i |
「花束贈呈とか、断髪式とか?(笑)」
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m |
「そうそう、そういうの。
たしかに、駆けつけてくれるお世話になった
人たちもいるわけやし、
礼儀としては、感謝の意味でにぎやかにするっていうのも
アリだとはわかるんだけど」 |
i |
「・・・最後の試合をほんとに
いい試合にするほうが大事な気はするわ」 |
m |
「そうですか。ファンとか、
周りのひとたちが、理解してくれるんやったら、
前田の選手として最後のわがままってことで、
イベントっぽい演出とかなしでね、
終わったほうが、自分らしいような。
気持ちと気持ちだけで、
つながったらエエやないかみたいなことにしたいんですよ」
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i |
「いろんな意味で、勇気のいることだけど、俺は大賛成。
それ、似合うの、前田しかいないような気がするもん。
例は悪いけどさ、葬式の案内状で、
『故人の生前の意志により、
香典献花等をご遠慮させていただきます』
ってあるじゃないですか。
あれって、結構、勇気のいることだと思うんだよね。
そうは言っても、とか親戚のおじさんが言い出したりして」 |
m |
「まぁ、自分のわがままっていうか、美意識っていうか、
周りをまきこむのも悪いかなとは考えたんやけど。
自分らしくないことしたら、
かえって裏切ることになるし。
水着のおねぇちゃんいっぱい集めたりしてなら、
考えんこともないけど(笑)」 |
i |
「巨乳の?・・・テーマがちゃうやろっ!」
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m |
「ほっんまに、なんにもないところから始めたし、
なんにも持たずに去っていくのが、ええかな、と」 |
i |
「俺は、理解した。アイ リカイド ユー。
いわゆるどれだけ有名人が集まったかなんてところで、
勝負してほしくないもんね。
いなかの選挙運動じゃないんだから」 |
m |
「そーっすかね。イトイさん的にはOKですか」
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i |
「リングの上にいる人が、いい試合をすることだけで、
ファンや支持者をつくってきたのがリングスでしょ。
最後の試合も、
ひとつのいい試合って考え方は、すっごく前田らしいし、
リングスらしいよ。それに(笑)この先、
田村だって、山本だって、
みんないつか引退試合するわけじゃない?
その最後の試合にいちいち
大イベントだショーアップだって考えたら、
アスリートの団体のイメージじゃなくなっちゃうよね」 |
m |
「サッカーのワールドカップ、見てました?」
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