新・ナポレオンズ小石の無菌室日記8
2020-06-07
『 STAY HOSPITAL 』
病院の朝は早い。
採血のある日は、6時過ぎに看護師さんが
注射器とともにやってくる。
おいらはまだ夢の中だったりするが、
「小石さ〜ん、採血しますよ〜」
そりゃもう情け容赦なし。
始めは腕から注射器で採血、
チクリと痛くてイヤだった。
しばらくすると、
首の部分にカテーテルなるものを挿入され、
採血もまったく痛みなしになった。
早朝の採血も、半分眠ったままだったりして。
8時くらいに朝食が届く。
今日は食パン、コンソメスープ、卵焼き、
もやしサラダ、小さい牛乳、フルーツ缶のぶどう。
フルーツ缶のぶどう、懐かしい味。
子供の頃は、よく食べたもんだ。
ぶどうの実の酸味とシロップの甘さ。
退院したら、ひと缶まるごと食べてみたい。
9時からリハビリのためのトレーニング。
専門の先生がおいらに合ったメニューを
考えてくれて、スクワット、腹筋、太もも上げなど。
10時くらいから、点滴治療。
多い時は3、4本、カテーテルに繋がれる。
ふと、入院に付き添ってくれた
Sさんのことを思う。
あの日、空気が抜けて弾まなくなった
ゴムボールのようだったおいらの命。
そいつをひょいと拾い上げ、
病院まで運び入れてくれたSさん。
ありがとう、今はそれしか言えないよ。
つい先日、神様が床屋さんを派遣してくれたようで、
髪の毛が大量に抜けるようになった。
枕に付いた毛を、コロコロで取る。
それでも翌朝、大量に髪の毛が付いている。
それで、コロコロを頭で転がすことにした。
これはいい。
頭皮のマッサージのように気持ち良い。
結局、ツルツルの坊主頭になった。
掃除のおばちゃんがやってきて、
「あらぁ、床屋さん行ってきたの?」
「ううん、ハゲちゃっただけ」
おいらの返事に、おばちゃんは急いで
部屋を出て行った。
ー明るく軽く親切なのに。
ほんの少し悲しみの味がするのだ。
マジックというのが、もともとそういう
素性のものなのだろうか。ー
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