吉本 |
イチローがお父さんと
毎日やる練習を、
もしも10年やったとしたら、
もうほとんど世界的な打者だっていうか。
つまりベーブ・ルースとおんなじくらいの
打者になるぞ、と思いますけれども、
それでも、4年間やれば、
もうそれもたくさんで・・・。
わかるような気がしますね。
10年やったら、文句がねえよと思います。
そんな風に10年間やったら、
文句もないし例外もなしに、
きちんとやっていけると・・・。 |
糸井 |
「文句もないし例外もなしに」かあ(笑)。
それ、いいな! |
吉本 |
ぼくは、そう思って
いいんじゃないか、と考えています。
それ以上のことは言いようがないし、
それ以上の領域に関しては、
人に対して言葉では言えない工夫をしたよ、
というようなことになるのかもしれません。 |
糸井 |
「運」とかもありますからねえ。 |
吉本 |
ああそうですね。
運は、あるでしょうね。
それは、ぼくが理解できないところですね。
・・・いま「理解ができない」と言ったのは、
「こうすれば運がよくなるとか、
そういう方法は、ない」という意味で、です。 |
糸井 |
みんな、
「これをやれば、運がよくなるかもしれない」
と思って、方法を探そうとしていますよね。 |
吉本 |
それは違いますよね。
方法を探せるかどうかこそ、運ですから。 |
糸井 |
(笑)そうそう。 |
吉本 |
運って、ありますよねえ・・・。
「見るからに不幸そうな店」だとか。
ぼくがお使いに行く時に、
ひいきにして買いに行く所があって、
そのお店は、不幸そうなんですよ・・・。 |
糸井 |
(笑)なんですか、それ。 |
吉本 |
みんな、うちのやつも、近所の人もそうだけど、
何となくそのお店を敬遠していて・・・。 |
糸井 |
へぇ。 |
吉本 |
丁寧に食べものを作っているんですけどね。 |
糸井 |
それ、つらいなあ。 |
吉本 |
おいしいんだけれども。
ぼくなんかは、
「かえって不幸そうだから、ここは良いや」
っていう風に、ひいきをしていましたが。 |
糸井 |
(笑)あははは。 |
吉本 |
みるからに不幸って言うか・・・。 |
糸井 |
それこそ、理由を言いようがないですね。 |
吉本 |
言いようのないことは、
あるんだなあって思います。
ご主人はいい人だし、作るものはうまいのに、
なんだか雰囲気が不幸そうだという・・・。
実際そうだということも、聞きました。 |
糸井 |
この間、祭についての
座談会をやった時に知ったのですが、
ある地方に、ひとり相撲という
祭事があるそうです。
神さまに対して
ひとりで相撲を取るものですが、
必ず「神さまの2勝1敗」になるように
とりおこなうらしいんですよ。 |
吉本 |
ほぉ。 |
糸井 |
やっぱり昔から、
人間は、そういう感じを、
つかんでいるんだなぁ・・・と思いました。
どうしても、
神さまは2勝してしまうというその加減。
それを聞いてから、もう、
神とか運とか、そこには、
触ってはいけないものだなぁ、と感じました。
触ろうとしてあがいても、何だか、
短い人生がムダになるというような・・・。
そういう、神さまに勝とうとするようなことは、
できないんだよ、と考えれば、
逆に、ラクになりますもん。
そもそも、
人は、不老長寿では、ないですからね。
そういうところを、
もうちょっと、計算に入れておかないと、
ツラいばっかりで人生が終わっちゃいますよね。
よく、
「修行、修行で終わっていく」
ことって、あるじゃないですか。 |
吉本 |
(笑)そうですよ。
やはり不幸や幸福というものは
「どこかにある」のでしょうけれども、
どうやれば幸福になれるのかは、
わからないなあ、というものでしょうね。 |
糸井 |
そういうことでは、もう
さんざんツラい目にあったから、
人は「神さま」を発明したんでしょうね。 |
吉本 |
そうなんでしょうね。
ぼくも糸井さんに似たような考えです。
女の子に関しても、
なぜ俺はモテないのかというのは、
ずいぶん自分でもいろいろ考えたりしたけど、
どうも、あんまり理由が見つからない。 |
糸井 |
(笑)うん。 |
吉本 |
自分では、あんまりみつからないと言うか。
・・・「要するに人相のせいかなあ」とか、
「何となく鬱陶しいからかな」っていう、
そういうことを思ったことがありますが、
ぜんぶ該当する人でも
女の人に人気があったりします。
そういうことでは、
ずいぶん考えましたけれども、
理由は依然としてわからない、つまり、
「モテねえなぁ」というのは、ありますね。 |
糸井 |
(笑)あははは。 |
吉本 |
その分野に関しては、
「気にしないでいいや」
みたいに思っているわけだから、
まあ別に、真剣に
こだわっているわけでもないけれども(笑)。
(つづく) |