吉本隆明・まかないめし 番外。 老いのこととか、人類の言語の獲得とか。 |
第2回 転べば、とまる。
「イトイさん、どうも」 「カラダの方は、どうですか?」 吉本さんと糸井重里(darling)の会話は、 たいていが、身体の話から、はじまるんです。 通常、対談でカットされるであろうその部分を、 今日は、みじかめに、紹介したいと思います。 「前に比べたら、 食べなくなりましたねぇ。 割合に、出なくなりましたから、外に。 多少は、出るように努めていますけど。 外に出よう、という意味あいでは、 積極的なつもりなんですけどね。 今は、自転車はやめてます。 自転車を起こせなくなりましたからね。 転ぶのは平気でしたけど、起こせないのはよくない。 転んだままにしていると、 みんなが寄ってきて、起こしてくれるの。 それを、当てにしたくない。 中学生とか女子高生とか、 下校時みたいなのにぶちあたると、 『どうしたの?』と言って寄ってきてくれる。 歩くほうは、どんどんよくなってきたんだけど、 こないだ、転んで。 医者からは、 『背骨のこないだ悪かった上のほうが、 また、悪化してますよ』って言われて・・・。 このごろ、時々、外に出ていってます。 だけど、前よりも、 もうすこし前の状態からやるから、 歩くの、きつくなって、 歩く時間が短くなったんですけど。 前は500メートルぐらいは ラクに歩けていたんだけど、 今は、50メートルぐらいかなぁ? 艱難辛苦じゃないけど、 また、ふりだしか、っていうのがあって、 やっぱり……そうですねえ。 転ぶのがいちばんあぶないと思って、 割合に用心していたのに転んじゃって。 おしりからドスンと落っこっちゃった。 おしりそのものは、 膏薬か何かをつけてたら 1週間ぐらいで治ったんだけど、 『おかしいな?』という感覚が 残っちゃったんですね。 医者に行って、レントゲンをとってもらったら、 背骨の上のところが ダメになってるよ、とか言われて。 ダメになってるとわかったところで 何してくれるかというと、 何もしてもらえないんですね。 やっぱり、膏薬みたいなのを貼るだけで。 歩かないとダメだし、歩くのはきついし……。 やっぱり、転んだとか痛くしたとかいっても、 自分で積極的にやる気があるのなら、 まだ、いいんでしょうね。 前に、歩くことを『やりたくない』と、 一度、そうなりましたけど、 その時の問題は、体力でした。 ようするに、今だったら、 そう、おっくうがらずにできますが、 起きたとたんに運動して、その上で歩く、 っていうことが、どうしても億劫で。 体力も、あんまり効かないんです。 それだけど、 あったかくなったから、やるかってことで、 すこしずつやりはじめたんだけど、体力は、 前に比べたら、ガタ落ちに、落ちてますけどねぇ。 回復する時に、また転ぶかもしれないし、 よくできてやがるなぁって思うんですけど。 要するに、器用ではないんですね。 医者に行くたんびに、 『歩かなきゃ、ダメですよ』 というように、言われますけど」 前まで、吉本さんは、 「とまることが、うまくいかないけど、 転べばとまるんです。だから自転車に乗ってます」 という、こわいような、迫力のあるようなことを おっしゃっていたのですが、 今は、「自転車が起こしにくい」ということで、 その方針を、とりやめたそうです。 こういうカラダの調子の人が、この日、 お会いする時間前に、杖をついて外に出てきて、 迎えてくれたっていうのは、うれしかったなぁ。 吉本さんのこれからの話は、 こういうカラダの状態であるという前提で、 たのしんでみてくださいね。 明日から、ちょっと、本格的な会話を、紹介します。 |
2003-06-19-THU
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