3.音楽になりやすいのは、猫。
- 槇原
- いっしょに暮らしていて、
うれしい瞬間というのがあって、
はっと気がつくと、ドラミが
床でバターンって仰向けで寝ているんです。
おなかがすごく毛深くて、
モッサァとしてて、
うわーっ、かわいいなあと。
- タナカ
- 安心しきっているんですね。
- 槇原
- そうなんです。
ただ、ドラミも、のびのびしているように見えて、
順番をすごく気にすることがあるんです。
年功序列があるのか、犬たちがいるときは、
ドラミは遠くにいて、
こっちをじーっと見ていて近寄って来ない。
犬たちがおでかけしているときは、
ずっとベッタリ。
- ふじた
- ああ、たまらないですねえ。
- 槇原
- たまらないですねえ。
何をやっていても来ます。
それこそパソコンをやっていても来るし。
- タナカ
- 犬がいるときは遠慮してるんでしょうね。
- 槇原
- そうですね。
そういう姿を見ると健気だなと思います。
- ふじた
- パソコンで作業されているとき、
キーボードの上に
乗ってきたりしませんか?
- 槇原
- はい、変な字がばーーっと打たれます(笑)。
最近まで、アルバムを作るために
歌詞を書いていたんですけど、
もうしょっちゅう邪魔されて。
- ふじた
- あ、2月に出る新アルバムのことですか?
(※このインタビューは1月に行っています)
- 槇原
- そうそう、2月に出るやつです。
犬たちが見えるような
リビングテーブルでずっと書いているんですけど、
そうすると、ドラミがぴょんって登ってきて、
「はい、押さないで」みたいな(笑)。
- ふじた
- 歌詞の中にドラミちゃんの足跡が
ちょっと入ってたりしても
おもしろそう‥‥。
- タナカ
- いや、歌えないから、そこ(笑)。
- 槇原
- タラララララ‥‥♪ って。
でも、それすごいおもしろいなと思います。
- ふじた
- 歌詞といえば、槇原さんの歌詞の中で、
猫が出てくるのは、
アルバム『SELF PORTRAIT』に収録されている
「猫がふんじゃった」という曲がありますね。
- 槇原
- はいはいはい。
ありますね。
- ふじた
- 猫と一緒に暮らされたことがないと
おっしゃっていましたけど、
猫がいる暮らしを
すごくリアルに表現されてますよね。
- 槇原
- あ、よかった。うれしいです。
これは当時、
猫を飼っている人の話をよく聞いていて、
ぼくがもともと猫が欲しかったのもあって、
いいなあ‥‥と思いながら書いた曲ですね。
- ふじた
- 猫がいたらこうだろうな‥‥って。
- 槇原
- そうそう。
で、「猫がふんじゃった」は、
ちょっとジャズっぽい曲なんですよね。
鍵盤の上を走る指が
猫が歩いているみたいだな、
とずっと思ってて。
犬が鍵盤を歩くとダーッてなっちゃうけど。
- ふじた
- ピアノの音がすごくきれいですよね。
猫が歩いている、という表現を今聞いて、
ぴったりだなと思いました。
- 槇原
- ありがとうございます。
あの曲、ニューヨークでレコーディングしたんです。
ギル・ゴールドスタインという有名なかたが
ピアノを弾いてくれることになって。
そのときに、どんな曲かわからないと演奏しにくいから、
英題を一応つけたんですね。
それがまさに
「キャットステップ」というんです。
それでギルさんが、
猫がこう鍵盤を歩くみたいな
フレーズを弾いてくれて‥‥。
うん、ああいうの、すごくたのしいですね。
- ふじた
- キャットステップ!
いいですね。
あと「三人」という曲の歌詞の中にも
猫が出てきますよね。
上京したばかりの「ぼく」が友人カップルと
三人で暮らしていて、
「ぼく」が引っ越していったあと、
新しい人が来たと言われて、
寂しい気持ちになったら、
それは猫だった‥‥という内容の。
あれも本当の話なんでしょうか。
- 槇原
- 本当の話です。
もうね、「ええっ」と思いましたよ。
「そうなんだ、ぼくが出て行った後、
もう誰かが来たんだ‥‥」
と言ったら、
「猫だよ!」と言われて(笑)。
23、24のころだけど、
すごく覚えていますね。
「こういう猫でさ、耳が大きいんだよ」
みたいに一生懸命説明してくれて、
ぼくも「猫ならいい」なんて言って(笑)。
- ふじた
- 本当の話だったんですね。
すてきな歌詞だなとずっと思ってました。
- 槇原
- すごくうれしいです。
やっぱり、音楽になりやすいのは、猫。
今回の新しいアルバムでも、
やっぱり猫が出てくるんですよ。
- ふじた
- なんと。
- 槇原
- 東京に雪が降ってきた日のことを書いた歌が、
「In The Snowy Site」という曲なんです。
窓辺で猫が不思議そうになにかを見てるのって、
かわいいじゃないですか。
それを書いた歌詞なんです。
- ふじた
- うわー、たのしみです。
- タナカ
- たのしみですね。
- 槇原
- いやー、ぜひ、ぜひ聴いてください。
ぼくもすごくお気に入りの曲なんです。
- ふじた
- これはやっぱりドラミちゃんが来たから
書けた曲なんですか?
- 槇原
- あ、それはもちろんそうです。
これからも絶対、
歌詞に猫は出てくると思います。
(つづきます)
2019-02-24-SUN