80's
『豆炭とパソコン』のひとり旅。

第6回

糸井さんから「幸せな本にしたい」という
宿題をいただいた私は、
早速、本のコンセプト立案と販売計画の検討に入りました。

基本的には
「お年寄りに向けたパソコン入門の書」であるこの本を、
どういう体裁で見せたらよいかを考えたときに、
すぐに思い浮かんだのは、
1. ガチガチの実用書一本槍路線
2. 読み物としての体裁を採りつつ、
  実用書の要素も加味した欲張り路線
の2案でした。

第1案の実用書は、
お年寄りにもやさしくてわかりやすい
パソコン教本のようなイメージ。
ビジネスマン向けの専門書は、
すでにいくらでもありましたが、
高齢者向けのパソコン入門書は
当時まだ多くありませんでした。

第2案は、
80代である糸井さんの母A の
パソコン習得にまつわる奮闘ぶりを
ストーリーとして追いつつ、
イラストを使ったわかりやすい解説を入れることで、
実用書としての機能も備える、
というものです。

この時点での私の個人的なベクトルは断然
第2案に向かっていましたが、
ま、とりあえず、この2つの案をタタキとして、
「80代〜」のプリントアウトを目の前に積み上げて
検討してみることにしました。

ここからの検討に加わったのは、
私の上司であり、尊敬すべき先輩編集者でもある
CULTURE編集部のミヤケ課長。
そして、取り次ぎや書店という現場を通じて
市場の動向を知る窓口となってくれる販売部の面々。

まずは、販売的な見地からこの本の体裁を考えた場合は
どうかと、販売部に行って相談してみると、
「とにかく部数を出すことが先決。
部数を伸ばすことを考えたら、実用書にするべきだ」
という、いかにも販売的な意見が多数を占めました。
う〜ん・・・
やはり、実用書路線を行くべきなのでしょうか・・・。



『豆炭とパソコン』
糸井重里著
1400円
世界文化社
ISBN: 4-418-00520-X

2000-10-28-SAT

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