第11回
糸井さんからそのメールが届いたのは、
「ほぼ日」で「80代〜」の連載が終了した
1月の初めでした。
「とうとう今年になりました。
長い間お待たせいたしました。
とうとう、無事、終わりました。
いや、無事じゃない終わり方ってあるんだろうか?
ま、何はともあれ、終わりました。
ぼくのほうでは、いま特別に考えはありません。
まずはマルイさんからの投球にバットを出すのみです。
よろしくお願いしますね。」
えーと、なになに?
私の投球にバットを出すのみ?
・・・えらいことになったもんです。
つまりそれって、私の投げる球種次第で
ボテボテのピッチャーゴロにも
目の覚めるようなホームランにもなりまっせ、
ということでしょうか?
これが本当の野球の試合なら
「空振り三振」に仕留めるのが一番の結末なのでしょうが、
“編集”というユニホームを着てマウンドに立つからには、
糸井さんに打ってもらいたいのは唯ひとつ
「ホームラン」以外にないわけです。
さて、気持ちよくホームランを打ってもらうためには、
一体どんな球を投げればいいのでしょうか?
一発勝負の大事な場面に失投は許されません。
マウンド上で悩む私を見て、
あわててベンチのミヤケ課長から
2つのサインが出ました。
ひとつは「終わった連載を振り返った今、何を思うか」
という視点に立って構成することで、
現在進行形で進められた連載とは異なる魅力を引き出す、
というもの。
「自分探しの旅」は、一体どこに辿り着いたのでしょう?
そしてもうひとつは、半年余りの連載期間を利用して、
季節の移り変わりをうまく取り入れることで、
読み物としてのメリハリをつける、というもの。
確かに、連載時と同じように現在進行形で本にまとめても、
単なる「ほぼ日」からの再録で終わってしまいます。
せっかく本という形でまとめるからには、
連載時以上の面白さが打ち出せなければ意味がありません。
とにかく、すでに「ほぼ日」で一通り連載を読んだ人にも、
本で初めて読む人にも、
どちらにも興味を持ってもらえるような本にしよう、
という方向に決めて、
私はベンチのサインに深くうなずきました。
で、結局
1.50年目の春の思いつき
2.夏のパソコン十字軍な人たち
3.母Aの日記にもの思う秋
4.自分探しもできるインターネットの冬
という大見出しを立てて、
連載原稿をそれぞれ必要に応じて抜き出したものと、
母A(=ミーちゃん)の日記の一部を中心に、
糸井さんの書き下ろしを加えるという前提で
構成してみることにしました。
「初回の打ち合わせで糸井さんから貰ったキーワードも
バッチリ入っているし、
これはナカナカいい流れができたぞ!
これで一発ホームラン、打ってくれるといいなあ・・・」
なんて思いながら、
早速糸井さんとの2回目の打ち合わせに臨んだ私でしたが、
その投球がボークに終わろう(?)とは、
その時はまだ知る由もなかったのでした。
『豆炭とパソコン』
糸井重里著
1400円
世界文化社
ISBN: 4-418-00520-X
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