80's
『豆炭とパソコン』のひとり旅。

第19回

「さて、タイトルも見えたことだし、
いよいよ中身を具体的に進めてみよう!」
という段階になってきました。

まず、既に材料として手元にある
「80代〜」の連載原稿をどうしよう・・・。
そのまま本にしたら、
軽く500ページを超えそうな原稿の束を、
果たしてどんなふうに料理したら美味しく仕上がるのか?
早くも頭を抱える私を見ないフリの永田さん、
「あ、それはマルイさんに
 お任せしちゃっていいですよね?」

も、もちろんです! やりましょう! やりますとも!
もう、腕まくりに鉢巻きで、頑張っちゃいますぜ。
まあ、その方法は追々考えるとして・・・。
問題は書き下ろし部分です。

とにかく一番の懸案は、超多忙の糸井さんに、
この本のために気持ちよく効率よく
時間を割いてもらうために、
どうしたらいいのか、ということです。
で、永田さんと私は考えました。
その結果、とにかく糸井さんの空いている時間を
少しずつでもいいから分けてもらい、
永田さんを中心に私たち二人掛かりで
インタビュー取材を行って、
その中で糸井さんに書き下ろし部分のポイントを
つかんでもらおう、
という作戦で行ってみることになりました。
きっと、1〜2時間のインタビューを
3回か4回も敢行すれば、
糸井さんの心の底に眠っていた言葉を引き出せるはず!
それまでの糸井さんとの打ち合わせを反芻した私たちは
そう確信したのです。

早速、糸井さんに連絡を入れると、
「2週間先までスケジュールはいっぱい」とのこと。
結局、ゴールデンウィークも間近に迫った火曜日の午後、
鼠穴にて第1回目のインタビューが
行われることになりました。

さて、第1回目のインタビューの直前、
私は永田さんに事前打合わせをお願いしました。
効率よく話が進むように、
全体のおおまかな構成も頭に置きながら、
インタビューで投げかける質問を
あらかじめあれこれ考えておこう、と考えたからです。

連載を思い出してもらいつつ話を引き出すために、
ミーちゃんの日記を除いた連載原稿の束を用意して、
とりあえずはこれに沿ってインタビューを進めながら、
要所要所で、裏話やそのときの気持ちについて、
質問してみてはどうかと思うんですよ、と私。
すると、
「はあ、はあ、なるほど」
と聞いていた永田さん。
「あのぉ、多分イトイさんは、僕たちの予想とは
 違うことを話してくれると思うんですよね」
というと?
「つまり、僕らがこうやって構成を踏まえて
 質問を投げかけるってことは、
 その質問に対してこういうふうに
 答えてもらえたらいいなっていう希望が
 前提になりますよね。
 でも僕の今までの経験から言っても、
 イトイさんは僕らが予定するようにしゃべるとは
 限らないし、むしろ予想もしないことを
 話し出す可能性が 高いと思うんですよ」
そういう意味では、
確かに私も何度か裏切られて(?)いるんだっけ。
「だから多分、構成を意識して質問を用意して行っても
 あんまり意味がないような気がするんですよ。
 ま、ヘンな言い方ですが、
 1回目は『出たとこ勝負』と
 考えて行ったほうがいいですよ」

ええ? そうかなあ・・・。
貴重な時間を分けてもらうんだから、
そんな、深夜の通販番組みたいな気分で行ったら、
申し訳ないんじゃないだろうか?
第一、構成も何も考えずにランダムに質問していたら、
いざ本にまとめようというときに、
収拾がつかなくて困るじゃないの?
永田さんの説に半分頷きながらも納得しきれない私は、
結局、当初の予定通り連載原稿の束を携えて
1回目のインタビューに向かったのでした。

2000-12-14-THU

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