第26回
糸井さん書き下ろしの準備が整う一方、
それ以外の部分の編集を進めるのは私の役目。
先ずは6月初旬から徐々に始めていた
連載原稿のダイジェスト作りに本格的に取りかかりました。
連載原稿をそのまま本のページ数に換算すると、
500ページは軽く超えてしまう膨大な量です。
連載時の南波先生レポートの楽しさ、面白さを
十分に残しながらも、ぎゅぎゅっと凝縮させて
100ページ程度に収めなければなりません。
さあ、どうしましょう!
連載原稿の全ての要素を残そうとして、
上っ面を集めてつぎはぎをするよりも、
残すエピソード、割愛するエピソードを
思い切って分けてしまう方が、きっと面白いはず。
それにオリジナルを5分の1までダイエットさせる以上、
余分な脂肪はガンガン燃焼させて、
魅力的なプロポーションを作らなければ!
プロポーションはともかく、ダイエットなら、
1週間で3.5キロ痩せたこともある
私にまかせなさい。ふっふっふ。
そう思いながら張り切って取りかかった
原稿のダイエットですが、
体重を減らすよりもはるかに至難の業であることは
すぐにわかりました。
出力した原稿の分厚い束をめくり、
何度も何度も読みながら編集していくわけですが、
何しろ読み返す度に
「ここは残したい」と思うエピソードばかりで、
取捨選択に迫られてしまい、
あれこれ悩んだ挙げ句、自分の体重が減る始末。
減らしたいのは原稿量だよ、なんて嘆きつつ、
思い悩んだ分だけ赤ペン青ペンの書き込みは増えていき、
もつれた導線を拡げたように色に染まった原稿の束は、
何度もバージョンアップを繰り返しました。
そうこうするうちに、
150ページ分程度まで減らすのには、
それほど時間はかかりませんでした。
ところが、そこから50ページ分がなかなか減りません。
終いには、どんなに頑張っても100ページに
まとまらない夢や、糸井さんに怒られている夢に
うなされるようになってしまいました。
「こりゃあいかん」と思った私は、
困ったときのミヤケ課長に相談してみることにしました。
「原稿量が思ったように減らないうちに、
何度も読み過ぎて、感覚が麻痺しそうです。
この150ページまで減らした原稿も、
ダイジェストとして本当に面白くなっているかどうか、
自信がなくなってきました・・・」
実はこのとき、私はミヤケ課長が
「よし、それなら150ページまでまとめた原稿を
見せてみなさい」
と言ってくれることを心密かに期待していました。
ここまでの成果を読んでもらい、
「うん、面白いから大丈夫、この調子で行こう」
なんて言ってもらえれば、随分と安心して作業が
進められると思ったからです。
ところが、頼みの綱のミヤケ課長は、
私の甘い期待とは裏腹に、
微笑みながら励ましの言葉を返すのみでした。
仕方なく
「ここまでまとめたダイジェストを
読んでみていただけませんか?」
と、具体的なお願いをしてみたのですが、
「いやいや、僕はもっとまとまってから読むよ」
と、つれないお答え・・・。
ミヤケ課長が読もうとしない理由は簡単でした。
「この時点からマルイさんと一緒になって
この本に入り込んでしまうと、
最終的な校正の段になって、
読者目線で冷静に判断できる人が
いなくなってしまうから」
お説、ごもっともでした。
「連載原稿は、もっと減らすつもりなんでしょう?
じゃあ、減らしてから読ませてよ。じゃ頑張って!」
かくして目論見破れた私は、
とにかく七転八倒しながらも
ダイジェストの編集作業を進め、
ようやく納得できるレベルの100ページにまとめて、
糸井さんに確認をお願いすることができたのは、
7月も半ば過ぎのことでした。
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