ほぼ日 今日さんは、
漫画誌での連載がはじまったあとも、
ご自身のウェブサイトでずっと
「センネン画報」というマンガを
発表されていますよね。

今日 そうですね。

ほぼ日 インターネットでの発表を続けてらっしゃるのは、
なにか理由があるのかなと思うのですが。

今日 「センネン画報」の場合は、
基本1ページマンガなので、
インターネットで見せるのに
適してるということがあります。
あと、毎日気軽にアップできるのが、
日常に寄り添っている感じがしますし。
あと、これはもう、本人の努力しだいというか
運しだいのところもあるんですけど、
うまくいけば、漫画誌に載るよりも
たくさんの人に見ていただけたりする。
一か八かと言われればそうなんですけど、
とりあえず人に見てもらうっていう意味では、
ウェブへの掲載はすごくよかったと思います。


▲都内某所にある、今日さんのお仕事場。

ほぼ日 なるほど。
あと、ウェブ上での見え方と、漫画誌の見え方って、
いろんなことが違うと思うんですが、
ウェブに掲載するマンガを描くうえで、
何か気をつけてらっしゃることって、ありますか?

今日 そうですね、ウェブ上では、
いわゆる漫画誌の描き込み方だと重い印象を
与えてしまうな、と私は感じてます。
たぶん、ウェブだとパッパッと見れてしまうので、
目が留まる瞬間が少ないんじゃないかと。
なので、スカスカではないんですけど、
なるべく描き込みを押さえて、
ライトな感じに見えるように気をつけてます。
私のマンガは基本的に
単色でなく、カラーなので、
それだけでも情報量が増えますからね。


▲約140本はあるという、今日さん愛用のマーカー「コピック」。

ほぼ日 なるほど。

今日 あと、自分のこだわりとしては、
あまりツヤツヤとさせ過ぎないこと。
今はデジタルでマンガを描く人も多いので、
すごくたくさん色が入っていたりとか、
光り輝いている画風を多く目にするんですけど、
私自身の持ち味としては
そうじゃないほうがいいのかなぁと思ったり。

ほぼ日 たしかに、今日さんのマンガは
ツルツルしてないですよね。

今日 あたたかさとか、手作りの感じを残そうと、
いつも思っていますね。

ほぼ日 デジタルで制作することは
まったくないんですか?

今日 一時期やってみたんですけれど、
私には合わなくて‥‥。
なんか、体調が悪くなっちゃったんです(笑)。

ほぼ日 体調が悪くなる(笑)。
今は手で描いてスキャンしているんですか?

今日 そうです、手で描いてスキャンしてるだけ。
学生のときとかは主線だけ描いて、
PC上で色つけたりとかもやってたんですけど、
けっきょく、手で描いたほうが早いんで、
いつの間にかやめちゃいましたね。

ほぼ日 でも、たしかに今日さんのマンガは、
手描きならではのあたたかさ、
ざらつきみたいなものがあって、
そこか大きな魅力だと思います。

今日 ありがとうございます。


▲今日さんがマンガを描くときの作業スペース。

ほぼ日 あと、そういう手法と、
マンガのテーマがすごく合っているというか。
今日さんのマンガって、
日常の風景とか、心の繊細な動き、
みたいなものを切り取ったものが多くて、
それがあの絵で描かれるから、
読んでいて、すごくドキドキするんです。



今日 あー、ありがとうございます。

ほぼ日 恋愛ものから、シュールなものまで、
たくさんのテーマがマンガに登場しますが、
どういうときに、
描きたいことが現れてくるのでしょうか?

今日 いや、もう最近は締め切りに追われて
ひねり出すみたいな感じでやってますね(笑)。
とくにストックがあるわけではないんですけど、
緊張感は常にあるので、
もう何からでもマンガを発想できるように、
っていう気持ちはいつもあります。

ほぼ日 「なにからでもマンガを」!
たとえば、なにかを見ているうちに
イメージが湧いてくるような感じですか?

今日 うーん‥‥そうですね‥‥。
なにかを見て、手を動かしていると、
勝手に形になるというか。
そんなに考えをきっちり固めてから
描いてるわけではないので、
画面のバランスとか、素材、
なにを描きたいかで決まるというか。

ほぼ日 なるほどー。
たとえば、今日さんの作品のモチーフには、
女子高生とか、一番多感な時期のことが
多く登場すると思うんですけど、
それは、当時、今日さんが見たり
考えたり感じたりしていたことが
反映されているんでしょうか?


「みかこさん」(C)今日マチ子/講談社

今日 そういうわけではないですね。
たぶん、大人になってからもずっと続く
子どもっぽさみたいなものを、
高校生や女子高生の姿を借りて描いているんですね。
なので、高校生時代の思い出に照らして、
というのは、ほとんどないですね。

ほぼ日 へー、そうなんですね。
今日さんのマンガを読んで、
きっとこういうふうな恋愛を
経験されてきたのかな、というふうに
勝手に思ってました。

今日 あ、よく言われるんですけど、
女子校だったので、そもそもね、
男子とか話す機会もないんですね。

ほぼ日 えっ! そうなんですか!

今日 だから、ほとんど想像というか、
大人になって振り返る感じですよね。

ほぼ日 へえー、そうだったんですね。
いや本当に、恋愛の表現が素敵ですので。

今日 ありがとうございます(笑)。

(つづきます)
2012-03-29-THU

 
 

画像協力:『センネン画報』太田出版
     『みかこさん』講談社
     『炭酸水の底 ~今日マチ子作品集2007-2011』洋泉社
     『かことみらい』祥伝社フィールコミックス
     『cocoon』秋田書店
     『ぼくのおひめさまー人魚姫 灰かぶりー』パイ インターナショナル







『炭酸水の底 
  ~今日マチ子作品集2007-2011』
洋泉社 2415円

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