CAKE

 
 
もう冬ですが、
ほんとにおいしい栗どら焼き。

 

冬の匂い──というより、
すでにクリスマスの空気を感じる頃ですが、
秋の菓子をひとつだけ。

着物の織りや柄が季節を少しだけ先んじないといけない
というのも頷けるほど、
過ぎた時というのは急に色あせたり、
間が抜けたように感じるものですねぇ。

この時期に栗の菓子って‥‥と自問しつつ、
来年の秋までとっておくのも、
もったいなくて無理そうなので、
短めにサラッと。

長野の小布施といえば栗が有名ですが、
いくつもおいしい菓子屋さんが軒を並べています。
中でも「竹風堂」という店の栗おこわは絶品です。

なんで断言してるかというと、
スキーが趣味で毎年、
合宿のように志賀高原通いを繰り返していた
両親に連れられて、有り得ないほどくっきり顔に
ゴーグル跡のスキー焼けをしてた子供時分の私にとって、
帰り道の唯一の楽しみというか
褒美というか安らぎだったのが、
街道添いの店で買ってもらうこの栗おこわだったので。
「何とか家庭内合宿を乗り切ったなぁ~」
と後部座席でくつろぐ帰り道、
あったかくてホクホクして噛みしめると
甘い栗おこわは、格別でした。

この頃も栗羊羹やお菓子はあったはずなのですが、
そんなに甘くない両親は“おこわのみ主義”を
ずっと貫いて
車内菓子まで買ってもらえたことは
確か、ありませんでした。

そんな愚痴は置いておいて、
とにかく「竹風堂」の栗おこわは美味しいと
細胞に刻みこまれているので、
たまたま行った夏の終わりの信州で見つけた
栗のどら焼きには目が釘付けになりました。
ひとつ買って車内で割って食べてみたら、
栗色(栗そのものの薄い黄色という意味)の
餡が詰まってて、そのまんま栗の風味でした。
栗のどら焼きというと、
餡の中に栗の粒が1個入ってるのが
ポピュラーかと思いますが、
栗に行き当たった時は嬉しいものの、
その前後は普通のどら焼きをほおばってる状態なので、
おにぎりの具以上に真ん中の栗ひと粒が
意味を持ってしまう現状は否めないと思うわけです。
その点、この“どら焼山”は、
どこから食べても栗で一杯なので
満たされ具合も高い気が致しました。

そういえば‥‥ずっと前に栗羊羹を書いた時にも、
羊羹の上に乗ってる栗の薄さ
(職人技かと感動するくらい
 薄く削いだ栗が敷いてある感じ)に
文句を書いた覚えが。
10年たっても成長がないものです‥‥。

長くなりました。
いろんな愚痴や振り返りは置いといて、
どら焼山は、栗の時期だけの商品ではなく、
年中扱っているということだったので、
来年の秋まで待たずに(待てずに)書いてしまいました。
もう冬ですが、逝く秋を惜しみつつ。

 

                   わたなべ まり

追伸:駆け込みで栗どらを──と思っていたら、
   都内でちっちゃいどら焼きもみつけました。
   500円玉くらいのサイズで、一つ100円でした。
   銀座清月堂の“もちどら”という
   商品だったと思います。
   あんまり可愛かったので、お知らせまで。

 

2009-11-26-THU