CAKE

 
 
小さな雛祭り羊羹の入った
小さなあづま袋


三月三日が雛祭りというのは、
何だかとても似つかわしい気がします。

少しづつあたたかさを増す陽差しの中で、
桃の花やいろんな蕾がほころんできて、
小さな枝にメジロやシジュウカラが
つがいで遊びはじめたり。

早春とか春浅い頃という呼称も、
もうすぐ芽吹いて萌黄色が広がる前の
まだ寒さの解け切らない空気も、
薄紅色のほっぺや小さな可愛い手の女の子達が
すくすく育ちますように、幸せになりますように‥‥と
祈りをこめて祝う季節に最もふさわしく、
春を待つ想いもふくらみます。

もちろん、祝日や記念日がその日になってるのには
それぞれ依って立つところがあるのでしょうけれど、
建国祈念の日とか勤労感謝の日とかだと
季節の気配とはほとんどつながらない感じで、
休みだ~嬉しいナ~くらいの実感のみが強力で。

ただ、その割りに、というのか
雛菓子というのはそんなに広がらないものなのかなぁ‥‥
という感覚も捨てきれないこの時期なのです。
あられって、おいしいですか?
綺麗な色だなぁとか、丸くて可愛いなぁとか、
飾ってあると華やいだ気持ちになるのは
素敵なのですけれど、
小さい頃、雛人形の脇からこっそりくすねたのは
あられも菱餅もスルーして白酒でした。
菱餅に至っては、そのまま食べられないですし。

その家によっては、
さくら餅やうぐいす餅も出たりするのでしょうけれど、
うちは日保ちのする干菓子ばかりだったので、
菓子に関してはつまんないな~、っていうか、
菓子に重点を置いてもいい祭りなんじゃないか? と
何となく理不尽な思いを抱いたものでした。

とはいえ、幾つになっても
桃の節句にお祝いの菓子をいただくと
くすぐったいような嬉しいような、
温かい気持ちになります。
毎年、とらやの小さな羊羹をいただいたりしますが、
今年はこんな小さな
あづま袋に入ってるのを見つけました。
(雛祭り用というよりは、
 バレンタインからホワイトデーまで
 網羅する商品みたいですが)

小豆の粒が散っているのを
“夜の梅”と名づけたのは絶妙だなぁとか、
やっぱり“おもかげ”に勝る羊羹は無いなぁとか、
毎年、全く変わらないことを思いつつ、
大事にいただく桃月です。

良い春を。


わたなべ まり

 

2010-03-03-WED