こんな梅雨の最中には、
夏の予感というのか、かすかな期待なのか、
木や、空や、空気の湿り気に、
これからの季節の匂いを細やかに感じる気がします。
夏のお菓子も、
もうすぐ雨が上がって、高く青い空と入道雲が
のぞくことを約束してくれるようで、
もしかしたら、夏が始まってからよりも
涼やかに美味しく感じられる気もしてきます。
頂き物で、「老松」の夏柑糖が届きました。
夏みかんを丸ごとくり抜いて、
果汁そのままの寒天が流し込んである
ひんやりと甘酸っぱい、
喉ごしの滑らかな夏菓子です。
丁寧で綺麗な作りに、
値が張るのも頷かざるを得ない気も。
母方の祖母が健在で、
有難いことに百歳を越えるのですが、
七夕を少し過ぎた頃に、また誕生日を迎えます。
先日、夏柑糖を持って行ったらツルツルと
ほとんどひとつ食べてくれました。
なかなか食も進まなくなる季節、口元に運ぶスプーンから
ツルンとおいしそうに食べてくれるのが嬉しくて、
思わず夏柑糖に感謝しました。
もともと果物好きな祖母ですが、
多分ゼリーのプルンとした感じより、
寒天のツルンと滑らかな食感が格別、
喉に通りやすかったのかもしれません。
木々には恵みの雨が降り注ぐ時期ですが、
こんな湿り気も、これから訪れる日差しの強さも、
どうか祖母のような年代に優しく、
障りなく季節が過ぎていくことを祈りつつ。
良い初夏を。
わたなべ まり |