夏の菓子を物色してたら、秋になってました。
秋、というか、もう晩秋にさしかかりそうな。
根がものぐさなので、あれこれバタバタやってると
日々どころか、季節が飛んでいくように
過ぎ去っていく気が。
すみません、完全に言い訳です。
しかし、今年もあと2ヶ月‥‥なんて、
全くどうなってるんでしょうね。
で、気づけばハロウィーンなんですね。
何年も前に、
新橋の小川軒の秋限定モンブランを書いた記憶があります。
新栗ってやつですね。
今年ももれなく、おいしく出揃ってます。
いや、モンブランの話をしたいわけじゃないのですが、
やっぱりおいしいのですよねぇ。
栗のふわっとした甘みと、ほろっとした食感と、
クリーム状になって引き立った香りが
ひとつのケーキの中に、
ぎゅっと詰まってる感じが抜群です。
あらためて、秋っていいですよねぇ。
栗も、芋も、かぼちゃも、木の実も、
全部、おいしく熟れてくるこの季節。
栗は秋を知ってて、芋も秋に気づいて、
かぼちゃも秋を感じてて。
当然のことなんだけれど、
同時にすごいことのような感覚が
年ごとに深まってきます。
実りの秋って、よく言ったものだなぁと、
小さな感動を抱きつつ、
栗、芋、かぼちゃに感謝して
(栗、芋、かぼちゃだけじゃないですけど、
代表ってことで)
寒さや暑さを乗り越えてきた時間の厚みと恵みを
おいしくいただく至福の秋です。
で、ハロウィーンでしたね。
モンブランの隣りに、
シンプルな可愛いかぼちゃのクッキーを
見つけたのです。
ハロウィーンのパンプキンにしては、
ちょっとのほほんとした表情が可愛いのです。
でも確か、あのパンプキン、
ジャック・オー・ランタンっていう
魔除けみたいなキャンドルでしたよね?
子どもの頃に絵本で読んで記憶だけだったので、
もう一度調べてみたところ、
Jack-o'-lantern(o'は、ofの簡略形)
ジャックオランタンともジャコランタンとも。
つまり、ランタンを持ったジャック、
日本式に提灯ジャックと訳されたこともあったみたいです。
‥‥っていうか、ジャックって誰?
ってなるわけですけど、
ハロウィーンはアイルランドやスコットランドが本場の
古代ケルト人の祭り、
そこにこのジャックの言い伝えも加わったとか。
昔、ジャックというずる賢くて、乱暴で、ケチで、
人を騙してばかりの、要は悪い人がいました。
(別の伝説も交ざり、鍛冶屋という説も)
酒好きのジャックは、酒場でベロンベロンに酔っ払った
ハロウィーンの夜、悪魔と出会います。
ハロウィーンはこの世とあの世の境がなくなる日。
魂を取りにきた悪魔に、
酒代も払えないほど飲んだくれたジャックは
「最後に1杯だけ酒が飲みたい」と懇願します。
「最後の1杯だけならいいか」と思ったのかどうか、
願いを聞き入れてコインに化けた悪魔を
ジャックはすかさず財布に閉じ込めてしまいます。
困った悪魔はジャックと取引きして、
10年間は魂を取りに来ない約束をします。
10年後ーー約束の期限が切れたハロウィーンの日、
再び悪魔がジャックを訪れます。
ジャックはまた懇願します。
「魂をあげるから、最後にあの木に実ってるリンゴを
1つだけ食べさせてくれ」
「最後にリンゴ1個ならいいか」と思ったのかどうか、
願いを聞き入れてリンゴの木に悪魔が登った途端、
ジャックは幹にナイフで十字架を刻んでしまい、
下りられなくなった悪魔はジャックに
二度と魂を取りに来ないと約束します。
時が経ち、ジャックの寿命も尽きる時がきました。
行いのよくない彼はもちろん天国に行けないので、
仕方なく地獄に向かうと、再びあの悪魔が現れて、
「魂を取らない約束をしたから、
地獄に入れることはできない」と。
困り果てたジャックが
「どこへ行けばいいんだ‥‥?」と聞くと
「元いた場所に帰るんだね」と、悪魔は告げます。
とはいえ、生き返ることもできず、
現世にも天国にも地獄にも行けないジャックの前には、
今きた暗く寒い道と闇が広がるばかり。
「灯りをくれないか」という
ジャックの最後の願いを聞き入れて、
悪魔は地獄の炎の小さな塊を分けてやります。
吹きすさぶ風に消されないよう、
道端のカブをくり抜いてランタンを作り、
その中に炎を入れて、とぼとぼと歩き始めるジャック。
行くあてもない彼は、今もランタンを片手に
あの世とこの世の境を彷徨い続けているといいますーーー。
というか、悪魔、優しい。
3度も願いを聞き入れてくれて。
しかも、かぼちゃじゃなくてカブだったんですね、最初は。
後に伝わったアメリカでは、かぼちゃの方が豊作だったので
パンプキンのランタンになったとか。
確かにカブよりはくり抜きやすいかな?いや、微妙かな。
やっぱり、茄子やきゅうりに割り箸で足を生やす
お盆の方がやりやすい感じがしますよね。
そんなことはともかく、ジャックオランタンは
日本で言うところの鬼火のような存在と
解釈されてるみたいです。
この逸話、最後の「今も彷徨っている‥‥」というところが
最も怖いのでしょうね、西洋の人にとって。
いや、すべての人にとって、かな。
これも子どもの頃に読んだ「さまよえるオランダ人」という
幽霊船の話も、ぞっとするほど怖かった記憶が。
イギリスの伝承で、ワーグナーがオペラに仕立てたことは
大人になってから知ったのですが、「彷徨う」っていうのが
人間にとって怖さ全開のキーワードなんですね、きっと。
あてどもなく、彷徨い続けなければならない宿命ーーーー
無理です。
ただですね、
寄る辺なく、終わりも見えないって
途方もなく辛そうだけど、
その割に安定すると逃げ出したくなったり、
居心地いいと飽きて、刺激がほしいとか言ってみたり、
何かの終わりが近づくと、永遠なものはないのか‥‥?
なんて求めてみたり。
つくづく、人って面倒な構造ですよね。自省もこめて。
ジャックオランタンのパンプキンも、
そんな面倒くさい人間たちを
笑っているようにも見えてきたり。
話を戻して、クッキーの味なのですが、
「ハロウィンキャラメル」と書いてあって、
薄いクッキー2枚の間に
キャラメル味のクリームがはさんであります。
ふわっとバターの香る優しくてシンプルなクッキーです。
あと、ふくろうタイプもあるんですよね。
こちらも、気取ってなくて、
可愛さを狙いすぎていない佇まいが素敵です。
「ふくろうキャラメル」と書いてあるので、姉妹クッキーですね。
ふくろうクッキーは季節限定じゃなくて、年中無休です。
贈り物の箱を開けた時、このふくろうがいっぱい並んでたら、
嬉しいし、和むんじゃないかな、と。
「あ、こんにちは。お元気ですか?」みたいな表情です。
無駄に長く書いてしまいましたが、
ハロウィーンも起源は収穫祭ですから、
地球上のどこも
今は秋の恵みに感謝して、豊かさを祝いたい思いは、
きっと、おんなじなのですね。
ハロウィーンっぽい催しは全くしない我が家ですが、
かぼちゃの煮つけかお味噌汁でも作って、
ささやかに祝おうかなと思う神無月の晦日です。
素敵なハロウィーンを。
わたなべ まり |