「ほぼ日」のビルから数歩、 そとに歩みだした吉本由美さんと諏訪雄一さん。 左右に続く骨董通りには、 とぎれることなく自動車が流れています。 見上げれば、うすく曇った冬の空。 歩道を行き交う人々は、一様に先を急ぐ足取りです。 そんな中で、視線をついと下へ向ければ‥‥。 冬の都会での「みちくさ」がはじまりました。
以前、中国へ行ったときのこと。 旅の疲れと大陸の乾いた空気に体が悲鳴をあげ始めた夜、 訪問先で菊茶をいただいた。 蓋つき茶碗の蓋を取ると、ぷう〜んと野原の匂いがした。 ひと口啜ると、 烏龍茶のまろやかな味に菊の苦みが交わって、 まさに野原の真っ直中で寝転んでいる気分になった。 まろやかで苦々の不思議な味が心身をほぐしていく。 聞けば菊茶には疲労回復と鎮静効果があるという。 でれでれとなって、「ほ〜っ」と幾度も息をついて、 おかわりもいただき、急須の中を見せてもらった。 茶殻とともに小さな白い菊の花がぎっしり入っていた。 帰国の日、市場に行って削り節みたいにして売っている 干した白菊花の大袋を2つ買ったのは言うまでもない。 それは半年で飲み干した。
東京の中国茶の店に探しに行くと、 高級品しか置いてなかった。 小さな袋にほんのわずかでお高いのである。 これじゃ4、5回淹れたら終わり。あきらめる。 同じフロアにハーブ屋さんがあるので念のため覗いたら、 カモミールが袋詰めにされて籠に入っていた。 決してお安くはないにしても 高級白菊花の何倍もの量である。 同じ菊科で、鎮静効果の薬効も似ていると聞く。 試しに1袋買って、烏龍茶とともに淹れてみた。 カモミールをお茶にして飲んだのは初めてだったが、 いや、まずいのなんの、みごと失敗。 烏龍茶は白菊花のような苦いヤツとはうまくやれるが、 カモミ−ルのような甘酸っぱいのとは合わないようだ。 甘いものは甘いもの同士ってことで、 友だちによると、カモミールにはハチミツらしい。 しかし私は残りのカモミールを足湯に使った。 これは良かった、深夜、足下から甘い香りが漂うのは。