ゆったりと続いてきた八ヶ岳のみちくさも、
そろそろゴールがみえてきました。
雑木林を出た柳生さんと吉本さんは、
なだらかな坂道をのぼり
「八ヶ岳倶楽部」の入り口へと向かいます。 |
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吉本 |
そろそろ? ゴール? |
柳生 |
そうですね、そこが、ほら、
「八ヶ岳倶楽部」の入り口ですから。 |
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吉本 |
ほんとだ。
雑木林を抜けて、
このあたりをぐるっと歩いてきたんですね。 |
柳生 |
そう。
けっこう歩いたと思いますよ。 |
吉本 |
なんだか、ぜんぜん疲れてません(笑)。 |
柳生 |
ねえ、まだいけますよね(笑)。 |
吉本 |
きもちいいし、
いろんな植物があるし‥‥
あ、ほら、あそこにもあんなにいっぱい。 |
柳生 |
咲いてますね。 |
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吉本 |
あの花は‥‥
今回いちばん最初に教えていただいた
アジサイですか? |
柳生 |
よく似てますけど、
あれはノリウツギっていうんです。 |
吉本 |
ノリウツギ。 |
柳生 |
皮をとって揉むと、
和紙をつくるときの糊がとれるんです。 |
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吉本 |
糊。 |
柳生 |
ええ。それで、ノリウツギ。
「ウツギ」は漢字で書くと
空っぽの木、空の木。 |
吉本 |
あー、そうなんだぁ、
空(うつ)の木だから、ウツギ。 |
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柳生 |
そう、中が空洞になってるんです。 |
吉本 |
なるほどー。 |
柳生 |
で、これもやっぱり、
花びらに見えるのは
虫を呼ぶための飾りなんですよ。 |
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吉本 |
そこはまたアジサイといっしょ。 |
柳生 |
そういうことです。
このなかに、ほんとうの花が‥‥ |
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吉本 |
はい、はい。 |
柳生 |
まだつぼみですけど、
あるでしょう? |
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吉本 |
ある、あります。
このちいさいのが、花になるんですね。 |
柳生 |
はい。 |
吉本 |
‥‥うーん、
なんでこんな高い場所に
アジサイが咲いているのかと思ったら‥‥ |
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柳生 |
ノリウツギなんです。 |
吉本 |
そっかぁ‥‥おもしろいなあ、ほんとに。 |
柳生 |
というわけで、そろそろゴールかな。 |
吉本 |
そうですね。 |
柳生 |
‥‥あ、でもそうだ、
最後に約束していたあれをお見せしないと。 |
吉本 |
ん?
なんでしたっけ。 |
柳生 |
行きましょう、
たしか、あっちにあるんですよ。 |
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アジサイによく似たノリウツギ、覚えました?
漢字で書くと「糊空木」。
ゴールを目前に
柳生さんが思い出した約束とは、
いったいなんなのでしょう?
どうやら最後にもうひとつ、
みちくさのことを教えてもらえるようですね。
次回、木曜日の更新で「八ヶ岳倶楽部」編は最終回です。
(今回、吉本さんのエッセイはお休みです) |