糸井 |
『アルネ』は次の号で。 |
大橋 |
そう、終了になります。 |
糸井 |
期間としてはそんなには長くないですよね? |
大橋 |
でも『アルネ』は7年なんです。 |
糸井 |
え? そうでしたか。 『平凡パンチ』よりは短いけど、 長いですね、やっぱり。 |
大橋 |
『平凡パンチ』は7年半です。 |
糸井 |
そうでしたっけ? もっとずっと長いと思ってた。 |
大橋 |
そうなんですよ。 |
糸井 |
ご自分でもそう思いますか。 |
大橋 |
パンチは週刊だから数も多いんですけど、 それにしても長く感じてます。 |
糸井 |
そうかあ、若い時は長く感じるのかもね。 |
大橋 |
ええ、そう思います。 |
糸井 |
『アルネ』は短く感じましたもん。 |
大橋 |
私にとってもいちばん短いです。 |
糸井 |
ですよね、きっと。 |
大橋 |
ピンクハウスはそこそこ長くて 10年なんですよ。 |
糸井 |
そうですか、そんなに。 |
大橋 |
でも、いちばん長く思ってるのは、 やっぱりパンチでしたね。 たった7年半だったんだなあと。 |
糸井 |
7年半。 |
大橋 |
いつも7年くらいでひとつの仕事に 飽きちゃうんですよ。 ピンクハウスも8年目の時に やめたいと言ったんです。 でも「あと少しやってください」と言われて 10年までやったんですが、 その2年っていうのが‥‥もう‥‥。 これは、いつものことなんですけど、 パンチのときもそうだったんです。 やめさせてくださいってお願いして、 「わかりましたけど 今年いっぱいやってください」ということになって‥‥ それからがよくないんです。 あとちょこっとだから頑張ろうと思うんです。 でも、たのしくできなくて。 |
糸井 |
ああ、それは気をつけないといけないですよね。 自分でもそれはありますよ。 |
大橋 |
本当に。 |
糸井 |
──もうすぐですよね、展覧会。 10月の24日から? (※この対談は10月上旬のことでした) |
大橋 |
はい。もう本当にすぐなんですけど、 実は、アートの部分で まだできていないのがあるんです。 あまりにも大きくて。 |
糸井 |
仕事が残ってるんですね。 |
大橋 |
そうです、残ってる。 変なものをくっつける仕事が。 |
糸井 |
変なもの。 |
大橋 |
何ていうんでしょう‥‥ ピンクのウネウネしたのがあって、 それがたくさん必要なので、 そこはボランティアの方に 手伝っていただいているんです。 |
糸井 |
ボランティアの方が。 |
大橋 |
ピンクの布を縫い合わせて、 中に綿を詰めてウネウネを作るんですけど、 場所に行ってみたら足りないんです。 「すみません、足りないんですけど」と言ったら、 みなさん見に来てくれていて、 「あ、これじゃ足りませんね、大丈夫です」って。 今も作り続けてくださってるんですよ。 |
糸井 |
まさしくそれに、 日比野克彦くんがやられちゃって、 すっかり夢中になってたんです。 ボランティアの人と一緒にっていう。 あれはもう、本当に、 うれしくておもしろいらしいですね。 奈良美智さんもそうですよ。 展覧会にはたいていボランティアさんと 一緒にやるものがありますでしょ。 |
大橋 |
あ、そうなんですか。 |
糸井 |
しびれるくらい、おもしろいらしいです。 |
大橋 |
私は初めてですから、もう恐縮して。 みなさんものすごく たのしそうにやってくださってて、 ありがたいなあと思ったんです。 |
糸井 |
その醍醐味はなかなか味わえないですよ。 |
大橋 |
ピンクのウネウネを作っていて、 誰も「これ何?」って おっしゃらないのがすごいです(笑)。 |
糸井 |
信頼関係ですよね。 |
大橋 |
こういう布のチューブに 延々と綿を詰めていくだけの仕事なんですけど、 みなさんがぜんぜん変なものと思わないで やってくださって。 ほんとに、ありがたい。 |
糸井 |
いいですよね。 日比野くんの話とか聞いててやっぱり、 何ていうんだろう‥‥ 他人の体と自分の思いが一緒になって 作品になるわけじゃないですか。 |
大橋 |
はい、はい。 |
糸井 |
その大きさの自分になっちゃうわけですよね。 |
大橋 |
ああ‥‥。 |
糸井 |
ご主人と引っ越す話もそうだけど、 「セットですね」っていうのと同じように、 「集団でセットですね」ってなった時に、 生き物としてのよろこびが うまれてくるんじゃないかと思うんですよ。 |
大橋 |
そうかもしれないです。 なにしろ初めての経験なので。 |
糸井 |
個人の仕事ばっかりでしたもんね。 |
大橋 |
そうなんです。 ひとりで撮りに行って、ひとりで机の上で、 みたいなことばっかりだったので。 |
糸井 |
だからきっと、 すごく初々しい経験になったんじゃないですか。 |
大橋 |
ええ、すごいですね。 |
糸井 |
ぼくが今、 会社をやってることもやっぱりそうですよ。 それまではひとりだったから。 |
大橋 |
ああー、なるほど。 |
糸井 |
その、ピンクのウネウネも たのしみになりました。 |
大橋 |
ああ、どうしよう‥‥ 「なんですかこれ?」って、 笑われるかもしれない。 |
糸井 |
いやいや(笑)。 |
大橋 |
こういう展示みたいなときって‥‥ ちょっと恥ずかしい感じがあるんです。 もちろんそればっかりじゃなくて、 「いいの、気にしなくて」 っていう気持ちもあるんですよ。 でも観に来てくださった人には、 「あ、ちょっとこんなもので」 みたいなことをすぐ言っちゃったりするんです。 |
糸井 |
恥ずかしがり屋さんだから(笑)。 |
大橋 |
でも、恥ずかしいんですけど、 こういう展覧会が実現していくことは、 すごくうれしいです。 幸せだなあと。 |
糸井 |
やっぱり、時ってあるんですね。 |
大橋 |
あるんですね。 |
糸井 |
あるんですよ。 |
大橋 |
よかったです、年をとって。 |
糸井 |
うん。 それは本当、思いますね。 |
大橋 |
本当に。 |
糸井 |
‥‥しみじみしたりして(笑)。 |
大橋 |
すみません(笑)、 ついおしゃべりが長くなっちゃって。 |
糸井 |
こちらこそ。 展覧会前のたいへんな時期に。 ──あれですね、 たとえば関東からだと 三重に行ったことがない人も多いでしょうから、 アクセス、みたいなことも ちょっと詳しくご案内しながら、 「三重県へ行きましょう」 ということをやらせていただくと思います。 |
大橋 |
ありがとうございます。 ちなみにこの前、 夫がひとりできたんです、ひとりで。 |
糸井 |
ひとりで、三重の美術館まで。 |
大橋 |
はい。 名古屋で近鉄に乗り換えるんですね。 JRでもいいんですけど本数が少ないので、 「近鉄の特急に乗って、 それでいくつか止まるから津で下りてね」 ってちゃんと話をしてたんですよ。 してたのに、当日‥‥ 美術館の方が「大変です!」って。 |
糸井 |
あー(笑)。 |
大橋 |
「石井先生が名古屋から大阪まで、 ノンストップの電車に乗られました!」って。 |
糸井 |
やっぱり(笑)。 |
大橋 |
日頃からそういうところがすごくあるので、 「ああ、やったね、しょうがないよね」と。 |
糸井 |
じゃあ、 「乗り換えに注意!」というご案内もして、 「津駅にとまる電車に乗ってください」と。 |
大橋 |
はい、よろしくお願いします。 |
糸井 |
きょうは長い時間、 ほんとにたのしいおしゃべりを ありがとうございました。 |
大橋 |
ありがとうございました。 |
(糸井とのおしゃべりは終了です。 11/28は、三重県立美術館から 展示のようすなどをテキスト中継する予定です。 どうぞおたのしみに!) |
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2009-11-17-TUE |