三重県の県立美術館で、 大橋歩さんの展覧会が開催されています。  この展覧会を準備中の、10月のある日、 大橋さんが「ほぼ日」にいらっしゃいました。 12月で終了する雑誌『アルネ』の取材で、 糸井重里にインタビューをするために。  インタビュー終了後は、穏やかな雰囲気はそのままに、 糸井とのおしゃべりの時間になりました。 おしゃべりのなかに展覧会の話題が混ざっていたので、 それをそのまま、ここに掲載いたします。 「大橋歩展」、どうやら必見のようです。
  • 大橋歩さんのプロフィール。
  • 「大橋歩展」はこんな展覧会です。
  • ちょっとくわしい美術館へのアクセス。
  • 別冊アルネ『三重県へ』も一緒に!
  • 展覧会のカタログ、おすすめです。
その4 400点の大橋さんを。
糸井
展示は、具体的にはどんなふうに?
大橋
学校のゼミで先生から点数をつけられて、
「75点」とか「足が太いです」とか
いろいろ赤字で書かれているような、
もう、そういうのから展示してもらうんです。


学生時代の作品(1962〜63年頃)
糸井
最初の最初から。
大橋
はい。
それで、『メンズクラブ』が出て。
糸井
ああ、『メンズクラブ』。


『メンズクラブ』
(ヴァンヂャケット・石津祥介氏の頁)1963年

大橋
それから『平凡パンチ』の部屋を
別に作ってくださって、
そこではパンチの表紙を
見ていただくようになっています。
で、さらに──
昔の仕事を並べるしかないんですけど、
それでも、すごくあるんですよ。
45年お仕事をいただいてると、
もう、すごいものですね。
糸井
そうでしょう。
ぜんぶ大橋さんの手元にあったんですか。
大橋
さすがにぜんぶはないですけど、
すごい持ってるほうだと言われました。
『平凡パンチ』の場合は、
3分の2弱は戻ってきてるんです。
それだけあるのはすごいそうです。
糸井
いや、すごいと思いますよ。
今それだけの原画をみられるのは。
大橋
展示するものを決めるときは
最初にカタログを作ったんです。
お仕事の絵は、ほとんどとってあるので。
まずぜんぶの写真を撮っていただいて、
私が『アルネ』を作るみたいに選びました。
「これとこれとこれ」と言って、
「これくらいの大きさ」と、
うちの方でレイアウトをしまして、
三重県の印刷屋さんで作ったんです。
そうやって、カタログに選んだのを数えたら
400点くらいあったんですって。
お仕事の中の、ごく一部なのに。


糸井
400で、ごく一部。
大橋
それで今度は、
カタログに載せたんだから
その400は一応展示しなくちゃいけない、
ということになったんです。
糸井
それはそうでしょう(笑)、
図録なわけですから。
大橋
学芸員の人たちが一生懸命にあたりをつけて、
この部屋にはこの作品をなんてやったら、
「すみません、もうこれ以上入りません」
と言われました。
糸井
スペースが。
大橋
はい。
糸井
最初は広すぎると思ってたのに。
大橋
足らなくなっちゃったんです。
糸井
だって400ってすごいですよ(笑)。
大橋
いや、そんなでもないんです。
糸井
そうですかね。
400って‥‥400枚ですからね。
大橋
まあ、そうなんですけど(笑)。
糸井
その400には
大橋さんが描いた時間も
ぜんぶ込められてますから。


大橋
うーん‥‥それは、
やっぱりお仕事だったから
描いてこれたんだと思います。
糸井
でも、お仕事じゃない作品も
展示されますよね。
大橋
はい、そういうのも。
自分が描きたい絵と、いただいて描くお仕事は、
またちょっと違うんですね。
もちろんお仕事の絵は、
その時代ごとにたのしめたんですけども、
だけど、どこかでやっぱり……。
たぶん、アーティストをやってる夫を
うらやましいなっていうのが、
きっとあったと思うんですよ。
私もアートしてみたいとずっと思ってて、
ときどき描いたりしてたんです。
それを学芸員の方がみて、
「いいじゃないですか、これも展示しましょうよ」
と言ってくださったんです。
「それもあなたの仕事のひとつですよ」と。
そんなことを言ってもらえたら
ありがたいと思って、
大きな部屋でそれを展示することにしました。
なんか支離滅裂みたいな、
まとまりがないような(笑)。
みていただくとわかると思いますが。


糸井
でも、「それが私です」ですからね。
大橋
そういうことですよね(笑)。


第2回東京イラストレーターズ・
ソサエティ展出品作品(1999年)

糸井
ご主人の展示もあるんですよね、たしか。
大橋
そうなんです。
津の美術館の方がとても心が広いというか、
夫が彫刻をやってることをご存知で、
「せっかくなので一緒の時期にいかかでしょう」
と声をかけてくださったんです。
糸井
そうでしたか。
大橋
そのお申し出をいただいたのは、
息子とふたりで津に行った時だったんですね。
で、その彫刻のスペースは
わりとこじんまりとしてるので、
「どうしよう、お父ちゃん怒るかな」って。
糸井
(笑)
大橋
彫刻館は別棟で、
私の展示スペースよりちいさいから、
「お父ちゃん、どう言うだろう」
「きっといやだって言うかもしれないね」
って言いながら帰ったら、
「いや、やりたい」って。
糸井
ああ(笑)、
スペースは関係ないですよね。
いや、すてきじゃないですか。


大橋
それで、同時にやれることになったんですよ。
そのあと夫とふたりで美術館に行ったら、
「ここにどうですか」って、レンガ彫刻を。
夫が美術館の人に言うんですよ。
そしたら、
「あ、いいですよ」って言っていただいて、
玄関の奥のところに
ボンと置くことになったんです、レンガ彫刻を。
糸井
おもしろいですね(笑)。
大橋
あの人はなかなか生命力というか、
なんとも言えない、おもしろい人で。
糸井
それはもう、
ご主人の作品もたのしみですね。
大橋
みていただけるとうれしいです。
糸井
なんか、
故郷で披露宴をやってるみたいじゃないですか。
大橋
いや、そんな(笑)。
(つづきます)
2009-11-16-MON