糸井 |
展示は、具体的にはどんなふうに? |
大橋 |
学校のゼミで先生から点数をつけられて、 「75点」とか「足が太いです」とか いろいろ赤字で書かれているような、 もう、そういうのから展示してもらうんです。 |
糸井 |
最初の最初から。 |
大橋 |
はい。 それで、『メンズクラブ』が出て。 |
糸井 |
ああ、『メンズクラブ』。 |
大橋 |
それから『平凡パンチ』の部屋を 別に作ってくださって、 そこではパンチの表紙を 見ていただくようになっています。 で、さらに── 昔の仕事を並べるしかないんですけど、 それでも、すごくあるんですよ。 45年お仕事をいただいてると、 もう、すごいものですね。 |
糸井 |
そうでしょう。 ぜんぶ大橋さんの手元にあったんですか。 |
大橋 |
さすがにぜんぶはないですけど、 すごい持ってるほうだと言われました。 『平凡パンチ』の場合は、 3分の2弱は戻ってきてるんです。 それだけあるのはすごいそうです。 |
糸井 |
いや、すごいと思いますよ。 今それだけの原画をみられるのは。 |
大橋 |
展示するものを決めるときは 最初にカタログを作ったんです。 お仕事の絵は、ほとんどとってあるので。 まずぜんぶの写真を撮っていただいて、 私が『アルネ』を作るみたいに選びました。 「これとこれとこれ」と言って、 「これくらいの大きさ」と、 うちの方でレイアウトをしまして、 三重県の印刷屋さんで作ったんです。 そうやって、カタログに選んだのを数えたら 400点くらいあったんですって。 お仕事の中の、ごく一部なのに。 |
糸井 |
400で、ごく一部。 |
大橋 |
それで今度は、 カタログに載せたんだから その400は一応展示しなくちゃいけない、 ということになったんです。 |
糸井 |
それはそうでしょう(笑)、 図録なわけですから。 |
大橋 |
学芸員の人たちが一生懸命にあたりをつけて、 この部屋にはこの作品をなんてやったら、 「すみません、もうこれ以上入りません」 と言われました。 |
糸井 |
スペースが。 |
大橋 |
はい。 |
糸井 |
最初は広すぎると思ってたのに。 |
大橋 |
足らなくなっちゃったんです。 |
糸井 |
だって400ってすごいですよ(笑)。 |
大橋 |
いや、そんなでもないんです。 |
糸井 |
そうですかね。 400って‥‥400枚ですからね。 |
大橋 |
まあ、そうなんですけど(笑)。 |
糸井 |
その400には 大橋さんが描いた時間も ぜんぶ込められてますから。 |
大橋 |
うーん‥‥それは、 やっぱりお仕事だったから 描いてこれたんだと思います。 |
糸井 |
でも、お仕事じゃない作品も 展示されますよね。 |
大橋 |
はい、そういうのも。 自分が描きたい絵と、いただいて描くお仕事は、 またちょっと違うんですね。 もちろんお仕事の絵は、 その時代ごとにたのしめたんですけども、 だけど、どこかでやっぱり……。 たぶん、アーティストをやってる夫を うらやましいなっていうのが、 きっとあったと思うんですよ。 私もアートしてみたいとずっと思ってて、 ときどき描いたりしてたんです。 それを学芸員の方がみて、 「いいじゃないですか、これも展示しましょうよ」 と言ってくださったんです。 「それもあなたの仕事のひとつですよ」と。 そんなことを言ってもらえたら ありがたいと思って、 大きな部屋でそれを展示することにしました。 なんか支離滅裂みたいな、 まとまりがないような(笑)。 みていただくとわかると思いますが。 |
糸井 |
でも、「それが私です」ですからね。 |
大橋 |
そういうことですよね(笑)。 |
糸井 |
ご主人の展示もあるんですよね、たしか。 |
大橋 |
そうなんです。 津の美術館の方がとても心が広いというか、 夫が彫刻をやってることをご存知で、 「せっかくなので一緒の時期にいかかでしょう」 と声をかけてくださったんです。 |
糸井 |
そうでしたか。 |
大橋 |
そのお申し出をいただいたのは、 息子とふたりで津に行った時だったんですね。 で、その彫刻のスペースは わりとこじんまりとしてるので、 「どうしよう、お父ちゃん怒るかな」って。 |
糸井 |
(笑) |
大橋 |
彫刻館は別棟で、 私の展示スペースよりちいさいから、 「お父ちゃん、どう言うだろう」 「きっといやだって言うかもしれないね」 って言いながら帰ったら、 「いや、やりたい」って。 |
糸井 |
ああ(笑)、 スペースは関係ないですよね。 いや、すてきじゃないですか。 |
大橋 |
それで、同時にやれることになったんですよ。 そのあと夫とふたりで美術館に行ったら、 「ここにどうですか」って、レンガ彫刻を。 夫が美術館の人に言うんですよ。 そしたら、 「あ、いいですよ」って言っていただいて、 玄関の奥のところに ボンと置くことになったんです、レンガ彫刻を。 |
糸井 |
おもしろいですね(笑)。 |
大橋 |
あの人はなかなか生命力というか、 なんとも言えない、おもしろい人で。 |
糸井 |
それはもう、 ご主人の作品もたのしみですね。 |
大橋 |
みていただけるとうれしいです。 |
糸井 |
なんか、 故郷で披露宴をやってるみたいじゃないですか。 |
大橋 |
いや、そんな(笑)。 |
(つづきます) |
|
2009-11-16-MON |