うねうねと、
自由に形を変えながら。
つちかってきたものを活かしながら、
冒険心も忘れずに。
自由に形を変えながら、
仲間たちで力を合わせて
たのしい編みものの場にしたい。
そんな思いで歩みを進めます。
コロナ禍ということもあり、
引きこもりがちな日々から
旅へ思いを馳せるようなラインナップでした。
色彩豊かで、気分が明るくなるアイテムが
多かった印象があります。
「mizudori」につづき、
アンゴラ糸でつくる「tsukinowa」。
三國さんがボーヒュースニットを
「夢の中にたたずむような感じ」と表現されていて、
まさにその言葉通りの作品だったと思います。
編みものが暮らしに欠かせない人が、
たくさん居るのではないか。
どんな風に編みものをたのしみ、
なぜ編みものに夢中になったのか。
個人的な編みもののお話を聞いてみたい
と思ったのが連載の始まりでした。
登場いただいた方々はどの方も想像以上に
「編みもの」という存在に没入されていて、
それぞれにとって“メディテーション”のような
心を安らげるアイテムだろうなと感じました。
また、Miknitsという存在がみなさんの人生の中で
どんな風に存在しているのか垣間見えて、
とくに10周年の特別編として
読者の方々にお話を聞いた際は胸がギュッとなり、
何度も泣きそうになりました。
ぜひ、読んでいただきたいです。
編んだニットへの思いごと撮る、
川村恵理さんの写真もすばらしいです。
編みもののおともに、三國さんとMiknitsチームでおしゃべりするラジオ番組「Miknitsラジオ」を2021年11月にスタート。
アールデコドレスやレース模様のサマーニットなど、ラインナップが広がった「Miknits Vintage Pattern Works」。 2021年2月販売。
カシミヤカーディガンがラインナップに加わり、カラーバリエーションも新しくなった「marikomikuni」。 2021年11月販売。
ほぼ日から出版するとMiknitsのイメージも強いので、
編み手の人が書いたちょっとしたエッセイ、
みたいな扱いになってしまっては
もったいないと思いました。
書きものとして独立させるために
大手から出すべきだと思い
新潮社さんにご相談しました。
この本が新潮社さんから出版されたことで、
三國さんの世界は大きく広がったと思います。
これまでほぼ日ではご縁がつくれなかったような
メディアにもたびたび登場されて、
著名な方が書評を書いてくださって、
三國さんは編みものの世界に
閉じこもっているタイプの人ではない、
とは思っていましたが、
まさにいま、表現を媒介するものが
編みものだけではなくなっていています。
エッセイ本をきっかけに書くお仕事も増え、
どんどん自由に羽ばたいていっている姿が
カッコいいし、素敵だと感じます。
この本はとてもおもしろいので
ぜひ読んでいただきたいです。
この年の「tokyo」という作品は
ほぼ日に向かうまでの道中にみた景色の色を
三國さんがかたちにしてくださいました。
三國さんの目を通すと当たり前の光景が
こんなにも美しく愛おしいものになるのだと、
とても印象に残っている作品です。
また、ボーヒュースニッティングの技法を踏襲しつつ、
刺繍を加えてアレンジするというのも
三國さんにしかできないデザインだと感じます。
他の作品もイメージの素が多岐にわたり、
あらためて三國さんの世界に
魅了されました。
「一枚でさっと着てキマる」と
三國さんも予告でお話されていましたが
気負いなく着られるニットだなと思います。
どれも、模様やかたちがチャーミングで、
気持ちが浮き立つような3種類です。
わたしはセーラー襟のlilyを買いましたが
合わせやすくて、
去年の春~秋はたくさん着ていました。
はじめにほぼ日手帳とおそろいの柄の手袋キットを
つくっていただいたときには、
想像もできなかったような広がりが
何度も、何度も、ありました。
三國さんのお名前を冠した「Miknits」という
ブランドをほぼ日で展開させていただくことに、
初年度はとても緊張していましたが、
着実に三國さんの活動のベースキャンプに
してくださっていることを感じられて、
毎年ときめきとワクワクをいただいています。
10年を振り返ってきましたが、
これからも目標に向かって
まっすぐ進んでいくというより、
うねうねと、自由に形を変えながら、
たのしいことをやっていくのが
わたしたちらしい進み方なのかなと思います。
Miknitsという場所があることに、
なんだかびっくりすることがあるんですよ。
まず孤独な「編む動物」だったわたしに、
今は仕事の仲間がいるということ。
その仲間たちと編みものを通じて表現して、
商売して、その商いの先にいらっしゃるお客さんと
いろんなやり方で交流ができる。
こんな仕事、こんな店、
世界中を探しても他にはないと思います。
この座談会で語ってきたように、10年かけて
「編みもの以外」の様々なこともできるようになり、
それはとてもありがたく、うれしいことです。
そうなんですけど‥‥わたしは今シンプルに、
ニットに集中したい、
立ち返りたい気持ちになっています。
「作品を作る」ということにおいては
たぶん永久にわたしは孤独な動物のままです。
一人で作品を作るのがベースだということは変わらない。
でもそれは仲間の考えを
シャットアウトするということではない。
自宅の仕事場で「世界への捧げ物」くらいの気持ちで
作品を作るんですが、深みにハマってしまって、
多くの人が欲しいものから
ズレてしまうことがあるんですよ。
そうなると誰にとってもうれしくないですからね。
そういう時に、相談できる仲間たちがいるというのは、
わたしにとっては本当に大事なことです。
10年というのは一つの達成のようでいて、
実はまだまだこれからなのかもしれません。
わたし自身、1年以上先の仕事は
考えないことにしているんですが、
今、目の前のこの1年を大事に耕しながら、
秋には仲間と一緒にいい実りを見たい。
そしてみなさんに渡したいと思っています。
2024-04-01-MON