広い世界へ、冒険の旅に出る。
おさえられない好奇心をたずさえて、
冒険の旅に出た三國さんとMiknitsチーム。
買い付け、サマーニット、洋裁のワンピース、
機械編みのセーター、そして初の個展など
あたらしいことに次々とチャレンジして
出会いを広げた年でした。
Miknits2018も充実のラインナップでしたが、
新色の色が加わり、より彩り豊かになりました。
特にきれいな色の毛糸たちが
ずらーっと並んでいるところは圧巻でした。
同じデザインでも、色によってニットの印象が変わり、
編みたいもの、着たいものを選ぶたのしさを
私自身も実感しました。
そして、毛糸の新色発売にともない、
毛糸のラベルもリニューアルしました。
ラベルのデザインは鈴木哲生さんにお願いし、
Miknitsの新たな世界を広げてくださったと思います。
合わせて制作した編みものの周辺グッズで
さらにお店が賑やかになりました。
イギリス、フランス、スウェーデンへの
買い付けの旅に三國さんと
もりっこ、わたしで行きました。
展示で販売するという目的がありましたが、
「もっとMiknitsの世界が広がる冒険になったらいいな」
という気持ちで一緒に行った覚えがあります。
ほぼすべて1点ものなので、
集めてきた物たちの記録を残すために
全作品の図録をつくりました。
ずらっとならんだ魅力的なヴィンテージと
三國さんの解説は、今見ても圧巻です。
スウェーデンで出会ったボーヒュースニットから
Miknitsのアンゴラシリーズが生まれたのも
ひとつの転機だったなと思います。
ヨーロッパの買い付けの旅の風景は、
しばらく夢に見るほどでした。
それぞれが、それぞれに
「心からほしい」と思えるものを買いつけて、
大事なものとしてお店で紹介して、
譲ることができたのではないかと思います。
買い付けの道中に関しては「三國万里子と買いもの仲間の終わらないおしゃべり」でもたくさん語られています。
Miknitsのキットは、
いわばシングルカットなんです。
でもそこに収まらないちょっと変なものも
あっていいじゃないと思うし、作りたい。
なんというか、
アルバムを通して聴くときの「丸ごと感」を、
本というパッケージで久しぶりに伝えたい、
そういう時期に来ていたのだと思います。
グラビアのページ数を多めにして、
写真が見やすいように大きな判型にしたり、
たのしく読んでもらえるように
「まりこ」と「ハリネズミ夫人」が
編みかたの解説をしてくれたり、
仕掛けをたくさん入れました。
長野陽一さんのお写真と、
有山達也さんのデザインもきれいな一冊です。
三國さんのスタイリングも見どころです。
私服をたくさん送ってくださって、
何度も考え直されていました。
とても魅力的なスタイリングなので、
ぜひそこもたのしんで読んでいただきたいです。
サマーニットをはじめたことは、
わたしにとっても大きなできごとでした。
もともとのきっかけは「生活のたのしみ展」。
夏開催のイベントに三國さんと出店したいけれど、
冬物では時期的に合わなかったことと
三國さんが自分用に洋裁で服を作られていて、
それがどれも素敵だったので、
三國さんにワンピースのデザインと
それに合うサマーニットをお願いしました。
これまでもサマーニットについて
何度か議論がありましたが、
「夏はTシャツを着ればいいんじゃないか」と
三國さんはおっしゃっていたので、
いろんな条件が重なって
踏み込んでくださったんだと思います。
ちなみに担当であるわたしは大のサマーニット好きで、
ここに可能性をとても感じていました。
なので、デビューできてうれしかったです。
イラストレーターの山本祐布子さんによる
編み針モチーフも、
これまでのMiknitsにはないデザインで
とてもきれいでした。
ボックスや編み針ケースなど
グッズにも展開を広げました。
三國さんの「外のお客さんと出会いたい」という
言葉をきっかけに生まれたのが
ムック本『Miknits TO GO』でした。
はじめての全国の書店で購入できるキット。
どこでも、だれでも、
気軽に編みものをたのしんでほしい、
というコンセプトでアラン糸と編み図、編み針と、
編みはじめるのに必要なものが揃っていて、
はじめて編みものにチャレンジする方にも
よろこんでいただけました。
キットも、三國さんが広い世界へ旅に出たことによる
エッセンスが散りばめられていました。
スウェーデンで出会ったボーヒュースニットを
ヒントにデザインされたアンゴラ糸の「mizudori」は、
あまりのデザインの美しさに
みんなで惚れ惚れとした記憶があります。
多くの方に届いたこともうれしかったです。
編まない方々から、
「三國さんのニットが着たいから、
編まれた状態のものが欲しい」と
よく言われていました。
ファーストモデルは、
三國さんが日頃から愛用されている
ヴィンテージセーターをヒントに、
きれいな色のカシミヤセーターをつくりました。
また、シェットランド諸島にある
世界的なニットウェアファクトリーの
「ジェイミソンズ」とも
念願かなってご一緒できました。
わたしが手を動かさなくてもニットが出来上がるんだ、
ということに最初は素朴に驚きました。
役割分担としてはデザインを提案するのがわたしで、
実際に形にしてくださるのがニット会社の方たち。
自分が手を下さないというのは、楽なようでもあり、
同時に思うように伝わらない
もどかしさを感じることもある。
今ご一緒しているJamieson’sとオルガさんは
ニットの大ベテランなので、
わたしが少々ぼんやりしていても
十分ステキに仕上げてくださるんですよ。
でもそれに甘えていると、
あっという間にそのシーズンのものが完成して、
あれ、わたしちゃんと関われただろうか、
もっと自分で引き受けて粘るべき部分が
あったんじゃないかと反省することがある。
今は2024年の秋冬物が進行中で、
たのしみな気持ちがほとんどなんですが、
「ほとんどの部分を人にお願いできるからこそ、
さらっと流しちゃいかん」
と自分自身に言い聞かせています。
「編みものけものみち」は、
アルティアムの学芸員、山田晃子さんの熱い気持ちと
三國さんのこれまでの歩みが合体してできた
すばらしい展示でした。
三國さんのニットは出来上がった時点で
すでに「作品」ですが、
それをあらたに組み合わせて、形づくって
展示することで一つの世界観になる。
やっぱり三國さんはアーティストだと感じました。
あまりのすばらしさに
「ほぼ日曜日」にも巡回してもらいました。
アルティアムの山田さんが
「良い展示というのは鑑賞しおわったあとに
見た人が見る前とは別人になる展示なんだ」
とおっしゃっていて、
その言葉どおりの展示になっていたと思います。
見終わるとふつふつと自分の奥底にも
エネルギーが湧いてくるのを感じました。
三國さんとMiknitsチームが出会ったモノ、心揺れたものをお届けする「mizudori通信」。2020年10月連載スタート。
2024-03-31-SUN