自分たちにできる、
いちばんたのしいこと。
表現の幅が広がっていく年。
自分たちにできるたのしいことを考えながら
あたらしいことにも挑戦し、
今もなお愛されるデザインが生まれた
年でもありました。
姉妹が小学生のころに
夢中になった雑誌の話になったことがありました。
手芸のレシピが載っている雑誌と、
おかしや料理のレシピが載っている雑誌を
姉妹で夢中になって購読していた、と。
そうしたものを作れたらうれしいという話から
できあがったのが『スール』です。
「つくる」がテーマの本だったので、
三國さんデザインのチョッキの編み図や
しほさんのおかしのレシピなど
実用的な記事がたっぷり掲載されています。
三國さんのご実家におじゃましたとき、
リビングの一番いいところに
三國さんとなかしまさんが出版してきた本や
新聞に掲載された記事、賞状、たてが
ぎゅっと飾ってある棚がありました。
しほさんがはじめておかしを焼いた
オーブンまで飾られていて、
胸があつくなりました。
『スール』はいまだにおすすめしたい一冊です。
冒頭の、姉妹の故郷に訪れたときの、
長野陽一さんの写真と
ふたりの生い立ちについて語った文章がすばらしい。
三國さんが「編みもの」以外のことに
新たに取り組み始めたのもこの本ですよね。
『うれしいセーター』や『スール』で
書いてくださったエッセイがすばらしくて、
永田さんが三國さんに「文章を書き続けてはどうか」
というような話をしたことを覚えています。
この本がなければ三國さんのエッセイ、
「編めば編むほどわたしはわたしになっていった」
もなかったかもしれないという話を後日しました。
過去最多、たくさんのアイテムを発表した年でした。
キットのラインナップ数の多さもさることながら、
黒猫のメジャー、ニードルキャップ、マーカーなど
周辺グッズがたくさんデビューし、
Miknitsの「黒猫」というキャラクターが
すっかり定番化しました。
個人的には「lake」が多色で
キットにするのが大変だったのですが、
パッケージをかっこよく作れたこと、
さらに、実用的に作れたことに満足しています。
わたしは三國さんのデザインも好きですが、
三國さんの持つ審美眼に信頼を置いているので、
どんなものを買いつけされるのか
とても楽しみでした。
なかでもスコットランドのエジンバラにある
チャリティショップ「トレジャートローブ」の
手編みの編みぐるみは大人気でした。
この年は新作が豊富で、しかもどれもかわいいので、
みなさん編むものに迷ったのではないかと思います。
はじめて開催した編み会には
予想以上にたくさんの方が来てくださいました。
なかしましほさんのおやつを出したり、
しょうがシロップのお湯割りを飲めたり、
編みものを中心にみんなでたのしく過ごす時間が持てて
スタッフ側もしあわせな気持ちになりました。
2017年、2018年とつづき、
新作のキットをたくさん発表しました。
キットが並ぶ光景は圧巻で
編み手としてはわくわくしたけれど、
読者の方々を迷わせてしまったかもしれず、
思ったよりも届いていない状況に
苦しく思うこともありました。
新たなコンテンツを立ち上げて魅力を伝えたり、
編み会をしたりと試行錯誤したことで、
「たのしい編みものの場にする」という
当初の気持ちを思い出しました。
三國さんのエッセイ連載「編んで、着て、ときどきうろちょろするわたし。」が2018年11月にスタート。たくさんの方に読んでいただきました。
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