糸井 | 皆川さん、きょうはありがとうございます。 前々から 「ミナ ペルホネンさんと組んでください」 ってご希望がずいぶんあったんですが、 実をいうと、僕は、皆川さんのことを 知らなかったんですよ。 「ミナ ペルホネン」っていう名前からして、 西洋のおばぁさんかなぁと思って(笑)。 |
皆川 | あはは。 |
糸井 | 打ち合わせがだんだん進行していくにつれて、 「(ミナ ペルホネンには)実は 皆川さんっていう方がいらっしゃるんだよ」 って聞いて。 「へぇーっ」って言ってたら、 「なんで知らないの?」って、奥さんだとか、 社員の女の子たちからずいぶん教えてもらいました。 皆川さんは、普段は、 あんまり(インタビューや、公の場に) 出られないようにしてたんですか? |
皆川 | あぁ、苦手は苦手ですけれども、 時々は出ておりました。 けれど、基本的には (作品が)女性のものが多いので、 やはり男性の方には あまり知っていただいてないですし、 「ミナ」という名前が 女性の名前のようですから、 女性のデザイナーと思われてる方が、 今もやっぱり多いと思っています。 |
糸井 | そうですか、ちょっと安心した(笑)。 ちょっと訊いてみようかな。 (会場にむかって) 皆川さんのことを、ミナっていう おばぁさんだと思ってた人? 恥を忍んで、僕の友達に なってもらえますか(笑)? いますかね? ‥‥いないか。 あぁ、よかった、 それはそれでよかったです。 去年僕らから「お願いします」って (手帳カバーの)お話をさせていただいて‥‥。 あの時はどんな気持ちだったんですか? |
2011年版のカバー、 「memories of rain(左)」と「sleeping rose(右)」。 |
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皆川 | その時は、僕は個人的に、 糸井さんとお会いしてみたいなっていう、 そういう興味がありました。 もちろんずっと前から存じ上げていましたが、 こういう機会にお会いして 話をさせていただけたら、 楽しいかなと思って。 結構そういう、ちょっと個人的な動機で。 |
糸井 | そうですか! すごくうれしいです。 会った回数そのものは そんなにたくさんはないんだけど、 一気にディープなところで つながった気がしますね。 |
皆川 | そうですね、 先日の二階堂和美さんのライブも、 僕らも二階堂さんとお付き合いがあったりと、 意外と共通点がありました。 |
糸井 | 皆川さんがおやりになってきたことっていうのを、 僕らも後追いで興味を持って。 さっき、「おばぁさんじゃないか」 って言ってたんですけど、 実はものすごく、いい体格してるんですよ。 |
皆川 | いえいえ(笑)。 |
糸井 | このデザインとあのいい体格の関係は どうなってるんだっていう。 で、実はですね、 魚河岸で働いていた時代が。 |
一同 | へぇー! |
糸井 | やっぱり驚かれますね(笑)。 ご自分で言ってもらいましょうか。 |
皆川 | ひとりでミナ ペルホネンを始めるにあたり、 掛け持ちというか、 朝からお昼までは 魚市場でマグロをさばいてまして、 午後からは1人でミシンで 洋服を縫っていました(笑)。 3年半くらいですかね、 ちょっと変わった、そんな時間がありました。 マグロですから、70、80キロはあるんですね、 それを毎日のように持って解体して、 最後はトラックで寿司屋さんに持ってって。 終わると、ゴム長靴とゴムのエプロンをほどいて、 お昼ご飯をとってから ミシンをかけ始めるという。 |
一同 | (ざわざわ) |
糸井 | すごいでしょう? すごいんですよ。 その頃の話を僕はもうちょっと聞いたんですけど、 ご自分で洋服を車に乗せて、 東北のほうにもいらっしゃってるんですよね。 |
皆川 | そうですね。日本全国、 ヨーロッパも回って。 |
糸井 | 行って見つけた所に飛び込むんですよね。 |
皆川 | そうですね。 |
糸井 | 売れないよ、そんなの(笑)。 |
皆川 | それは、間違い。 間違いでしたね。 |
一同 | (笑) |
糸井 | でまぁ、今になっても まだ筋肉は残ってるっていう、 そういうお話です。 |
皆川 | 毎年、まだ魚河岸で働けるかなっていうのは ちょっと思ったりもしますけれども(笑)。 |
糸井 | そこの状態を離れてから 何年ぐらい経つんですか? |
皆川 | まだ11年ぐらいです。 「ほぼ日」が始まった頃に、 僕も、魚河岸が終わり、 洋服を作るだけになった。 |
糸井 | ゼロから始める人と 僕はたくさん会っていきたいな、 って思ってるんですけど、 まさしく皆川さんのやり方っていうのは、 ゼロから、 まったく根拠のないところから(笑)始められて。 で、今はこんなふうに いろんな方とコラボレーションなさったり、 自分のお店やったりされてて。 無限に広がっていくうれしさを、 なんていうんだろうな、全能感というか、 皆川さんの世界が どんどん広がっていくのを感じるんです。 (つづきます) |