土屋 |
『27時間テレビ』の
「かま騒ぎ」を見ていると、
さんまさんは、常に
「現役感」をかもしだすじゃないですか。
SMAPの中居くんなんかは、
もちろん当たり前ですけど、
ちょっと休んでいたわけですよね。
ネプチューンも、芸人だけど
結果としては休んでいたわけです。
だけど、さんまさんって、
絶対に休まないですよね。
いちばん前に出てきて、最初にコケて、
それでみんなをある意味で指導して……
すごいエネルギーだと思うんです。 |
糸井 |
「人に求められてるという喜び」を
感じるんでしょうね。
たぶん、
土屋さんにしても、三宅さんにしても、
瞬間的にそういうふうになるときって
ないですか?
人が自分を求めているときに、
過剰に動くという……。 |
三宅 |
すごいあります。 |
糸井 |
それはきっと
「オレに任せておけよ」
というときなんですよね。
矢沢エーちゃんなんかにも、
近い感覚だと思います。
ライブの直前までは、
ドキドキするって言うんです。
だけど、
「エーちゃん! エーちゃん!」
と、五万人の人からの声援を受けると、
「求められてる……」
とシャキーンとするそうなんです。 |
三宅 |
絶対に、そういうのは、ありますよね。 |
糸井 |
だから、さんまという人は、
自ら作っているというよりは
「さんまさんを求めてる人が
作ってるさんまさん」なんですよね。 |
三宅 |
それで、
本人もそれを演じきっていますよね。
それで、だんだん演じている
明石家さんまに一致していかないと、
生活ができなくなったんでしょうね、おそらく。 |
糸井 |
最近、さんまさん、
またテクニックを増していると思うんです。
オンマイクじゃないしゃべりが、
ものすごいじょうずだし……。
大竹しのぶさんのマネの
「ねぇ、いまるちゃん?
ねぇ、そうでしょう?」
っていう、あれはものすごい好きだなぁ。 |
三宅 |
(笑)あれも、最近、推してますから。 |
糸井 |
あれとかも、
きっと思いついたときに、
してやったりと思ってるんですよね。 |
三宅 |
あれはきっと、
そういう状況があって、
抵抗してるんですよね(笑)。 |
糸井 |
そういうところを見ても、
メモ帳のある人の芸だろうとは
思っていたんですけど、やっぱり、
メモの存在は、あるんですね……。
ぼくも、メモを取ろうかなぁ。 |
土屋 |
さんまさんは、
明らかに異常体質だけど、
ただ、笑いに厳しいっていうのは、
確かにあるんですよね? |
三宅 |
自分が先輩から教えを受けてきたから、
たとえば
吉本の後輩に厳しいっていうのは、
わかりますね。
そうやって自分もやってきたっていう……。 |
土屋 |
また27時間テレビの話に
なってしまいますけれども、
ナイナイが、さんまさんは
自分たちにものすごい厳しかった、
みたいな話をしていましたよね。 |
糸井 |
あれも、おもしろかったなぁ。
あれが笑いになるってことが、
「天才ってすごい」と思うんです。 |
三宅 |
「自分たちは、
テレビ出るということについて、
ほんとにいろんなこと考えてやってるのに、
おまえらはチンタラポンタラ生きてる」
っておっしゃるんですよね(笑)。
なにも考えていないのが、
許せないんですよね。
そんなふうに、
常に何かを考えている状態で、
腕を磨いて人気が続くわけだから、
舞台は戦場だとさんまさんは
おっしゃりますけど、まさに戦場ですよね。
そういうところは、
ちゃんと守っているかたですよね。 |
糸井 |
いまでも、
一緒に出ている誰よりも
自分がウケようという気持ちの大きさ……。
そこは譲らないというのは、
一種の「手塚治虫」ですよね。
手塚治虫って、新人が出るたんびに、
その人のマンガを熟読して、
おんなじ路線のマンガを描いて
勝っていったんですけど……
なんか、「悪い人」の系譜があるんです。 |
土屋 |
(笑) |
糸井 |
宮崎駿さんだって、
一本映画ができるごとに、
いちばん優秀な現場のスタッフが
辞めるらしいですから……。
つまり、つぶしちゃうんですよね。
それには、
いろいろな理由があるんでしょうけど、
ふつうの会社だったら、
宮崎駿さんが「悪」ですよ。
だけど、そこは宮崎さんだから、
誰も文句を言わないわけで。
さんまさんがやっていることも、
きっと、おんなじですよね? |
三宅 |
そうですね。
だから、
「そこで勝負しにこい!」
と言いながら、自分がもらったり……。
ぐっさんのネタとか、いろいろ
自分のものにしちゃいますからね。
「相手を立てているかに見せながら、
この人は……きたない!」
ということはあります(笑)。 |
糸井 |
「それ、もらっていい?」
ってセリフ、よくおっしゃってますもんね。 |
土屋 |
逆に言うと、
さんまさんに近づき過ぎたら、だめですよね。 |
三宅 |
だめです! |
土屋 |
絶対にだめですよね。
ジミーちゃんにしたって、
近づき過ぎた人間は、やっぱり、
辞めていかざるを得ないような気がする……。
ほんとに、芸人にしてみれば、
近づきすぎたらだめな人なんでしょうね。 |
糸井 |
タモリさんとさんまさんの掛け合いって、
『いいとも!』で一時あったじゃないですか。
あれって、復活できないですか? |
三宅 |
そうは思ってるんですけどね……。 |
糸井 |
とんでもなく、
おもしろかったですよねぇ。 |
三宅 |
そういう空気感が、もう
『いいとも!』にはなくなりましたよね。 |
糸井 |
完全に、
違う場所にしちゃっていましたよね。 |
三宅 |
そうです、そうです。 |
糸井 |
だからこそ、
あのときのタモリさんの腕を、
改めて感心しながら見ちゃうんです。
さんまさんと、
あんなにタイでできるんだから。 |
三宅 |
タモリさんは、
さんまさんを、泳がしますね。
ああいうことから、
いろんな番組が生まれるんですよね。
生放送の『いいとも!』に
有吉佐和子さんが出て、
ものすごく長引いたんですね。
それで、さんまさんが
「オレらのコーナー、つぶされるんやないか?」
と言いながらの一時間になったんですよ。
あれは、おばさんパワーが
すごいんだということで、その後に、
おばさんを集めようということになって
『いただきます』が、はじまったんです。
生放送のいちばんの利点って、
ああいうことだと思ったんですね。
予想のつかないことが起きる。
それに対応したさんまさんがいる……という。
だから、そこから生まれた番組は、
ナマで起きてしまったことを、
どうおかしく展開していくか、
という作りかたになりまして。
さんまさんと作るコントも、いつも
「スタートだけには一緒にしておくんですが、
それがどちらに行ってしまうかはわからない」
というものなんです。
百メートル走になるか、
マラソンになるかはわからないけど、
トラック競技であるということだけは決めて、
スタートラインにはつく。
トラックを走ることだけは守ってくれよ、
という作りかたなのですが、
そうすると、なにかが生まれてくるんですよね。 |
糸井 |
さんまさんは、大物になると陥りがちな
「もう、欲しいものは、
ぜんぶ手に入っちゃった」
というワナに、ぜんぜん、
ひっかかっていないような気がするんです。
人によろこんでもらえれば
うれしい、と言うか……。
雑に言うと、それはよっぽど、
さんまさんって
育ちが不幸だったんじゃないかと思うんです。
やっぱり、生きてるだけでまるもうけ、
という名前を、
子どもにつけるような人ですもの。
だけど、ほんとはみんな、
そうあるべきだと思うんです。
目の前の人によろこばれれば、
それでおもしろいんだから。 |
|
(次回に、つづきます) |