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おもしろ魂。
三宅恵介さん土屋敏男さんと、テレビを語る。

11. 近づきすぎたらダメな人。


「さんまさんが、
 あそこまで怪獣化したのは、
 いつも周囲の人と
 化学変化を起こしているから」

「さんまさんを求めてる人の多さが
 さんまさんの巨大さを作っている」
 
このような角度から見たさんまさんを、
今日は、手塚治虫や、宮崎駿といった、
他の分化の怪物と、比較することになります。

テレビ制作者の語るテレビ論、
今日も、おたのしみくださいませ。

三宅恵介さんプロフィール
土屋敏男さんプロフィール

土屋 『27時間テレビ』の
「かま騒ぎ」を見ていると、
さんまさんは、常に
「現役感」をかもしだすじゃないですか。

SMAPの中居くんなんかは、
もちろん当たり前ですけど、
ちょっと休んでいたわけですよね。

ネプチューンも、芸人だけど
結果としては休んでいたわけです。

だけど、さんまさんって、
絶対に休まないですよね。

いちばん前に出てきて、最初にコケて、
それでみんなをある意味で指導して……
すごいエネルギーだと思うんです。
糸井 「人に求められてるという喜び」を
感じるんでしょうね。

たぶん、
土屋さんにしても、三宅さんにしても、
瞬間的にそういうふうになるときって
ないですか?

人が自分を求めているときに、
過剰に動くという……。
三宅 すごいあります。
糸井 それはきっと
「オレに任せておけよ」
というときなんですよね。

矢沢エーちゃんなんかにも、
近い感覚だと思います。

ライブの直前までは、
ドキドキするって言うんです。

だけど、
「エーちゃん! エーちゃん!」
と、五万人の人からの声援を受けると、
「求められてる……」
とシャキーンとするそうなんです。
三宅 絶対に、そういうのは、ありますよね。
糸井 だから、さんまという人は、
自ら作っているというよりは
「さんまさんを求めてる人が
 作ってるさんまさん」なんですよね。
三宅 それで、
本人もそれを演じきっていますよね。

それで、だんだん演じている
明石家さんまに一致していかないと、
生活ができなくなったんでしょうね、おそらく。
糸井 最近、さんまさん、
またテクニックを増していると思うんです。

オンマイクじゃないしゃべりが、
ものすごいじょうずだし……。

大竹しのぶさんのマネの
「ねぇ、いまるちゃん? 
 ねぇ、そうでしょう?」
っていう、あれはものすごい好きだなぁ。
三宅 (笑)あれも、最近、推してますから。
糸井 あれとかも、
きっと思いついたときに、
してやったりと思ってるんですよね。
三宅 あれはきっと、
そういう状況があって、
抵抗してるんですよね(笑)。
糸井 そういうところを見ても、
メモ帳のある人の芸だろうとは
思っていたんですけど、やっぱり、
メモの存在は、あるんですね……。

ぼくも、メモを取ろうかなぁ。
土屋 さんまさんは、
明らかに異常体質だけど、
ただ、笑いに厳しいっていうのは、
確かにあるんですよね?
三宅 自分が先輩から教えを受けてきたから、
たとえば
吉本の後輩に厳しいっていうのは、
わかりますね。

そうやって自分もやってきたっていう……。
土屋 また27時間テレビの話に
なってしまいますけれども、
ナイナイが、さんまさんは
自分たちにものすごい厳しかった、
みたいな話をしていましたよね。
糸井 あれも、おもしろかったなぁ。

あれが笑いになるってことが、
「天才ってすごい」と思うんです。
三宅 「自分たちは、
 テレビ出るということについて、
 ほんとにいろんなこと考えてやってるのに、
 おまえらはチンタラポンタラ生きてる」
っておっしゃるんですよね(笑)。

なにも考えていないのが、
許せないんですよね。

そんなふうに、
常に何かを考えている状態で、
腕を磨いて人気が続くわけだから、
舞台は戦場だとさんまさんは
おっしゃりますけど、まさに戦場ですよね。


そういうところは、
ちゃんと守っているかたですよね。
糸井 いまでも、
一緒に出ている誰よりも
自分がウケようという気持ちの大きさ……。

そこは譲らないというのは、
一種の「手塚治虫」ですよね。

手塚治虫って、新人が出るたんびに、
その人のマンガを熟読して、
おんなじ路線のマンガを描いて
勝っていったんですけど……
なんか、「悪い人」の系譜があるんです。
土屋 (笑)
糸井 宮崎駿さんだって、
一本映画ができるごとに、
いちばん優秀な現場のスタッフが
辞めるらしいですから……。

つまり、つぶしちゃうんですよね。

それには、
いろいろな理由があるんでしょうけど、
ふつうの会社だったら、
宮崎駿さんが「悪」ですよ。

だけど、そこは宮崎さんだから、
誰も文句を言わないわけで。

さんまさんがやっていることも、
きっと、おんなじですよね?
三宅 そうですね。

だから、
「そこで勝負しにこい!」
と言いながら、自分がもらったり……。

ぐっさんのネタとか、いろいろ
自分のものにしちゃいますからね。

「相手を立てているかに見せながら、
 この人は……きたない!」
ということはあります(笑)。
糸井 「それ、もらっていい?」
ってセリフ、よくおっしゃってますもんね。
土屋 逆に言うと、
さんまさんに近づき過ぎたら、だめですよね。
三宅 だめです!
土屋 絶対にだめですよね。

ジミーちゃんにしたって、
近づき過ぎた人間は、やっぱり、
辞めていかざるを得ないような気がする……。

ほんとに、芸人にしてみれば、
近づきすぎたらだめな人なんでしょうね。
糸井 タモリさんとさんまさんの掛け合いって、
『いいとも!』で一時あったじゃないですか。
あれって、復活できないですか?
三宅 そうは思ってるんですけどね……。
糸井 とんでもなく、
おもしろかったですよねぇ。
三宅 そういう空気感が、もう
『いいとも!』にはなくなりましたよね。
糸井 完全に、
違う場所にしちゃっていましたよね。
三宅 そうです、そうです。
糸井 だからこそ、
あのときのタモリさんの腕を、
改めて感心しながら見ちゃうんです。

さんまさんと、
あんなにタイでできるんだから。
三宅 タモリさんは、
さんまさんを、泳がしますね。

ああいうことから、
いろんな番組が生まれるんですよね。

生放送の『いいとも!』に
有吉佐和子さんが出て、
ものすごく長引いたんですね。

それで、さんまさんが
「オレらのコーナー、つぶされるんやないか?」
と言いながらの一時間になったんですよ。

あれは、おばさんパワーが
すごいんだということで、その後に、
おばさんを集めようということになって
『いただきます』が、はじまったんです。

生放送のいちばんの利点って、
ああいうことだと思ったんですね。

予想のつかないことが起きる。
それに対応したさんまさんがいる……という。
だから、そこから生まれた番組は、
ナマで起きてしまったことを、
どうおかしく展開していくか、
という作りかたになりまして。

さんまさんと作るコントも、いつも
「スタートだけには一緒にしておくんですが、
 それがどちらに行ってしまうかはわからない」
というものなんです。

百メートル走になるか、
マラソンになるかはわからないけど、
トラック競技であるということだけは決めて、
スタートラインにはつく。

トラックを走ることだけは守ってくれよ、
という作りかたなのですが、
そうすると、なにかが生まれてくるんですよね。
糸井 さんまさんは、大物になると陥りがちな
「もう、欲しいものは、
 ぜんぶ手に入っちゃった」
というワナに、ぜんぜん、
ひっかかっていないような気がするんです。

人によろこんでもらえれば
うれしい、と言うか……。

雑に言うと、それはよっぽど、
さんまさんって
育ちが不幸だったんじゃないかと思うんです。

やっぱり、生きてるだけでまるもうけ、
という名前を、
子どもにつけるような人ですもの。

だけど、ほんとはみんな、
そうあるべきだと思うんです。
目の前の人によろこばれれば、
それでおもしろいんだから。
  (次回に、つづきます)


今日のひとこと:

「さんまさんは、
 大物になると陥りがちな
 もう、欲しいものは、
 ぜんぶ手に入っちゃった、
 というワナに、ぜんぜん、
 ひっかかっていないような気がするんです。
 人によろこんでもらえれば
 うれしい、と言うか……。
 雑に言うと、それはよっぽど、
 さんまさんって
 育ちが不幸だったんじゃないかと思うんです。
 やっぱり、生きてるだけでまるもうけ、
 という名前を、
 子どもにつけるような人ですもの」
               (糸井重里)

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 お送りくださると、さいわいです。
 どのメールも、すべてじっくり拝読しますし、
 つい、おおぜいと分けあいたくなるような
 メールの感想などは、「おもしろ魂」連載中に
 ここで、ご紹介させていただくかもしれません。


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2004-09-15-WED

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