カリスマの名、
返します。

宮村浩気の「はじめの一歩」。
知ってる人には、ワーキャーヒューヒューな名前。
『ヘアーディメンション』の宮村さんと言えば、
いわゆるカリスマ美容師の、シンボルのような人だけど。
彼の根っこは意外と深い。
浮かれちゃいないが、語りたいところはしっかり語る!

いよいよ4月末の新しい店の準備ができてきて、
助走の加速度が増してきたある夜。
宮村浩気くんと鼠穴の二階で、ゆっくり話した。
読んでもらえばわかるけど、
ワーだのキャーだのいうようなおにいちゃんじゃないよ。

第1回 2回目のスタートライン

第2回 四谷のお店のときの話

第3回 商品としてのヒットヘアー

第4回 ライバルについて

第5回 「似合う」って、どういうこと?

第6回 どういう店をつくる?


糸井 今ここで宮村さんがしゃべっていることって、
あとで「ほぼ日」で紹介されますよね。
それプリントアウトしたら、
そのまま従業員教育になりますよね。
宮村 なりますね、はい。
糸井 だって、こんな考えのひとが全員の
美容室だったら、行ってみたいもん。
きっと、考えってばらばらなんですね。
技術は近づいても。
今の考え、ぼくは、商売違うけど、
なーるほど、と思うんです。
女の子にもわかるように喋るじゃないですか。

きっとこのへんのことについては
いくらでもきけると思うんですけど、
今から宮村さんがどういうイメージで
どんな展開をしていこうかというのが、
みんなの気になることだと思うんですよ。
ぼく、宮村さんと知りあったとき、
「カリスマって言っても、
 200万人が並ぶわけじゃないんだから、
 そんなの意味ないよ」
ってしゃべったことあって、
宮村さんもそれに賛成してましたよね。

その通りですよね。さっききいたら
200人って言ってたじゃないですか。
そういう考えを持っている宮村さんが、
ひとつの店舗をどうするかとか、
また次の店舗をつくっていくのかとか、
日本中がどういうふうになれば
うれしいのかをききたいんですよ。
宮村 ぼくはただ単純に、
女心をくすぐるような、
ちょっと粋な感じのスタイル提案とか
それをしていきたいと思うんです。
「あそこに行ったら人生観変わる」
「きれいになれる」
そういう店づくりをしていきたいんで、
店舗数が増えるかもしれないですけど、
女の子があこがれるような
気持ちにさせられるような美容室を
つくっていきたいですね。
糸井 そうすると、有名だから
宮村さんのところにっていうひとを、
あんまりあてにしていないんですね。
宮村 そうですね、
そういうひとは流れていくんで。どんどん。
糸井 それはもう、ビジネスの意味でも
有名だから来るというところだけで
商売を考えちゃうと、失格だね。たぶん。
そういうひとは流れていくんですか?
宮村 流れていくと思いますね。
糸井 美容師ブームは、
宮村さんのなかではいつ終わるんですか?
宮村 たぶん免許問題がなければ
もっといい方向にどんどん進むと思うんですけど、
今後の展開は見えないですね。でも、
こないだの美容師ブームくらいになることは
もしかしたらないかもしれないですね。

でも、ほんとは青山とか
原宿でやってる美容師さんとかは、
美容師の水準をどんどんあげたいという
気持ちがあると思うんです。
医者とか弁護士さんとかって、
何か地位が高い雰囲気じゃないですか。
美容師だって、昔から髪切屋とか
言われてしまうんですけど、
もうちょっと水準が
上にあがってもいいと思うんですよ。

髪を切ることによってそのひとの気持ちとか
人生まで変えるとは言わないですけど、
そのくらいの影響力のある仕事じゃないですか。
例えば今日髪を切ってデートに行きます、とか、
髪切ったあと彼氏にあって
「髪かわいいね」
とほめられたら、
そのひと、嬉しいじゃないですか。
糸井 ほかにも自信つくよね。
宮村 人生というか気分が変わるじゃないですか。
そうできる仕事ってすごいなあと思うんです。
糸井 どっちかと言うと、心に関わる商売ですよね。
宮村 そうですね。
糸井 そういう宮村さんがつくる
美容室の宣伝もしたいんですけど。
どういうふうなことはおなじにする、昔に戻す、
いろいろなことがあると思うんですけど、
今度宮村さんのやるお店の「アフロート」は、
キャッチーじゃなくていいのですが、
どんな店にしていくつもりですか?
宮村 昔からなきゃいけないものというのは、
技術だと思うんです。
その技術はあって当然の美容室であり、
それプラス、今度はちょっと粋な、
女の子をつくりあげられるような美容室。
行き過ぎず、手前で。
最大限にやりたいんだけど、
行き過ぎちゃうとだめ、だからその手前ぐらいの。
糸井 つまり、美容師がわがままで
「こうやるのがかっこいいんだぜ」
というのは嫌なんだよね。
宮村 そうですね。
糸井 技術とか女の子の「粋さ」を
お客さんとつくりあげるんだよね。
それって、最終的にはひとになりますよね。
そのひとっていうのを、
ぼくは宮村さんの今度のお店で雇う
美容師さんのの面接も手伝ったんだけど、
どういうふうに育てていくのかを
ぜひききたいと思うんだけど。
宮村 ひとりのひととのふれあいというか
会話になると思うので、最低限のマナー。
言葉のマナーであったり接客のマナーであったり。
あとは外からの関係ないひとが来るときにも
きちんと対応できるようなのと。
糸井 そのへん、知性みたいなのもあるよね?
宮村 そうです。ちょっとこのひと
違うんじゃないかなあと自分に思わせるような
それはどういう面で見えるかわからないですけど。

例えば、技術がおんなじの
ふたりの美容師がいたとします。
お客さんの心理として、
こっちのひとはキムタクみたいな
かっこよくて、センスがあるような服着て、
でも行き過ぎていない、
ぎらぎらしてないようなさわやかなひとと、
こっちには、みすぼらしいかっこうして
不潔そうなひとと、2タイプいて。

で、お客さんが来て、技術が一緒。
それでどっちを選ぶかというと、
やっぱりキムタク側ですよね。
そこで選ばれるような
美容師さんになってほしいなと。
糸井 それ、毎日言ってないと、なんないよね。
宮村 はい。とにかく、笑顔はさわやかで。
トイレ行ったときには必ず
ニカッて1回笑うことを習慣づけようかなと。
何事も習慣づけるというのと、
あとは女の子が今どういうことに
興味を持っているのかということですね。
「美容ばか」もいいんですけど、
来るのは普通の女の子が多いので、
その子たちが何を求めているのかというところで
雑誌を発売したらお客さんの来る前に
勉強させようかなあとか
そういうのは思っているんですけど。
糸井 技術は絶対なんだけど、
技術の外側にあるものもしっかりしてないと
「うちはよその店とは違う」
とは言えないわけだね。
ものすごくいそがしいね、
そうなるとひとりひとりがね。
うちもそうだけど、必死でいかないと
何かオリジナリティって出ないんだよね。
宮村 じゃないと、みんなとおなじ
美容師になっちゃうと思うんです。
「天気いいですねー、
 春だから髪軽くしますか?」
それで終わってしまえば何の意味もない。
もうちょっとつっこんだ、
そのひとをわかったうえでの
スタイル提案をできればいいと思います。
糸井 「実現するかわからないけど、
 週休二日にしなよ」
って前にぼく宮村さんに言ったけど、むつかしい?
宮村 お店が円滑にまわれば、
もちろんそうしたいとは思っています。
糸井 一日まるまる休みにするから
もう一日は前に進む日にするということで
お客さんを入れないようにすれば、
すごい信用は増しますよね。
必ずしも休む決まりにする必要ないけど、
「忙しいからどうしても構えないんですよ」
というのが、うちの課題でもあるんですけど、
好奇心のなくなっちゃったひとと接するのって、
すっごいさみしいじゃないですか。
だから、宮村さんから率先して
休んでるふりをしなきゃならない時期も、
来るんだろうなあー。
宮村 ひっぱっていくものとして、
「毎日あれだけやんなきゃいけないのかな
 それでほんとに楽しいのかな」
と思われるのは、嫌ですね。
糸井 そうだよねー。
宮村 だから年に1回2階は海外旅行とかに行って
気分をリフレッシュしてくるとか、
そういうようなものも取り入れられたらと思うし。
糸井 宮村さんにお会いして、
美容師というのをイメージとして、
あらためて考えるようになったんです。
映画や美術館に見に行く時間のある美容師と、
ぼくなら会ってみたいと思うよね。
今はまだ火の車で動いているような気がするの。

上手にプログラムをつくって
ローテーションをできるようになったら、
休むことも可能かもしれないんですね。
そのためには、ちゃんと
ビジネスとして成り立っていて。

やる気のあるひととお金が欲しいひとって
きっと俺は別だと思っているんですよ。
「若いうちはただでもいいんですよ」
ってひともほんとはいると思います。
そのひとたちが週に4日だけは一生懸命働いて、
でもあと3日は自分の勉強すれば?みたいにして
2軍にいるだとかいうイメージが・・・。
特にこれからは、
小さくて、大きいサイズにしちゃいけない
ぼくらのやっているような商売では、
そういうことができると思うんですよね。

宮村さん、今度のお店楽しみにしていますよ。
お話、とてもおもしろかったです。

(おわり。)

宮村浩気さんへの激励や感想などは、
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2000-04-10-MON

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