糸井 |
今ここで宮村さんがしゃべっていることって、
あとで「ほぼ日」で紹介されますよね。
それプリントアウトしたら、
そのまま従業員教育になりますよね。 |
宮村 |
なりますね、はい。 |
糸井 |
だって、こんな考えのひとが全員の
美容室だったら、行ってみたいもん。
きっと、考えってばらばらなんですね。
技術は近づいても。
今の考え、ぼくは、商売違うけど、
なーるほど、と思うんです。
女の子にもわかるように喋るじゃないですか。
きっとこのへんのことについては
いくらでもきけると思うんですけど、
今から宮村さんがどういうイメージで
どんな展開をしていこうかというのが、
みんなの気になることだと思うんですよ。
ぼく、宮村さんと知りあったとき、
「カリスマって言っても、
200万人が並ぶわけじゃないんだから、
そんなの意味ないよ」
ってしゃべったことあって、
宮村さんもそれに賛成してましたよね。
その通りですよね。さっききいたら
200人って言ってたじゃないですか。
そういう考えを持っている宮村さんが、
ひとつの店舗をどうするかとか、
また次の店舗をつくっていくのかとか、
日本中がどういうふうになれば
うれしいのかをききたいんですよ。 |
宮村 |
ぼくはただ単純に、
女心をくすぐるような、
ちょっと粋な感じのスタイル提案とか
それをしていきたいと思うんです。
「あそこに行ったら人生観変わる」
「きれいになれる」
そういう店づくりをしていきたいんで、
店舗数が増えるかもしれないですけど、
女の子があこがれるような
気持ちにさせられるような美容室を
つくっていきたいですね。 |
糸井 |
そうすると、有名だから
宮村さんのところにっていうひとを、
あんまりあてにしていないんですね。 |
宮村 |
そうですね、
そういうひとは流れていくんで。どんどん。 |
糸井 |
それはもう、ビジネスの意味でも
有名だから来るというところだけで
商売を考えちゃうと、失格だね。たぶん。
そういうひとは流れていくんですか? |
宮村 |
流れていくと思いますね。 |
糸井 |
美容師ブームは、
宮村さんのなかではいつ終わるんですか? |
宮村 |
たぶん免許問題がなければ
もっといい方向にどんどん進むと思うんですけど、
今後の展開は見えないですね。でも、
こないだの美容師ブームくらいになることは
もしかしたらないかもしれないですね。
でも、ほんとは青山とか
原宿でやってる美容師さんとかは、
美容師の水準をどんどんあげたいという
気持ちがあると思うんです。
医者とか弁護士さんとかって、
何か地位が高い雰囲気じゃないですか。
美容師だって、昔から髪切屋とか
言われてしまうんですけど、
もうちょっと水準が
上にあがってもいいと思うんですよ。
髪を切ることによってそのひとの気持ちとか
人生まで変えるとは言わないですけど、
そのくらいの影響力のある仕事じゃないですか。
例えば今日髪を切ってデートに行きます、とか、
髪切ったあと彼氏にあって
「髪かわいいね」
とほめられたら、
そのひと、嬉しいじゃないですか。 |
糸井 |
ほかにも自信つくよね。 |
宮村 |
人生というか気分が変わるじゃないですか。
そうできる仕事ってすごいなあと思うんです。 |
糸井 |
どっちかと言うと、心に関わる商売ですよね。 |
宮村 |
そうですね。 |
糸井 |
そういう宮村さんがつくる
美容室の宣伝もしたいんですけど。
どういうふうなことはおなじにする、昔に戻す、
いろいろなことがあると思うんですけど、
今度宮村さんのやるお店の「アフロート」は、
キャッチーじゃなくていいのですが、
どんな店にしていくつもりですか? |
宮村 |
昔からなきゃいけないものというのは、
技術だと思うんです。
その技術はあって当然の美容室であり、
それプラス、今度はちょっと粋な、
女の子をつくりあげられるような美容室。
行き過ぎず、手前で。
最大限にやりたいんだけど、
行き過ぎちゃうとだめ、だからその手前ぐらいの。 |
糸井 |
つまり、美容師がわがままで
「こうやるのがかっこいいんだぜ」
というのは嫌なんだよね。 |
宮村 |
そうですね。 |
糸井 |
技術とか女の子の「粋さ」を
お客さんとつくりあげるんだよね。
それって、最終的にはひとになりますよね。
そのひとっていうのを、
ぼくは宮村さんの今度のお店で雇う
美容師さんのの面接も手伝ったんだけど、
どういうふうに育てていくのかを
ぜひききたいと思うんだけど。 |
宮村 |
ひとりのひととのふれあいというか
会話になると思うので、最低限のマナー。
言葉のマナーであったり接客のマナーであったり。
あとは外からの関係ないひとが来るときにも
きちんと対応できるようなのと。 |
糸井 |
そのへん、知性みたいなのもあるよね? |
宮村 |
そうです。ちょっとこのひと
違うんじゃないかなあと自分に思わせるような
それはどういう面で見えるかわからないですけど。
例えば、技術がおんなじの
ふたりの美容師がいたとします。
お客さんの心理として、
こっちのひとはキムタクみたいな
かっこよくて、センスがあるような服着て、
でも行き過ぎていない、
ぎらぎらしてないようなさわやかなひとと、
こっちには、みすぼらしいかっこうして
不潔そうなひとと、2タイプいて。
で、お客さんが来て、技術が一緒。
それでどっちを選ぶかというと、
やっぱりキムタク側ですよね。
そこで選ばれるような
美容師さんになってほしいなと。 |
糸井 |
それ、毎日言ってないと、なんないよね。 |
宮村 |
はい。とにかく、笑顔はさわやかで。
トイレ行ったときには必ず
ニカッて1回笑うことを習慣づけようかなと。
何事も習慣づけるというのと、
あとは女の子が今どういうことに
興味を持っているのかということですね。
「美容ばか」もいいんですけど、
来るのは普通の女の子が多いので、
その子たちが何を求めているのかというところで
雑誌を発売したらお客さんの来る前に
勉強させようかなあとか
そういうのは思っているんですけど。 |
糸井 |
技術は絶対なんだけど、
技術の外側にあるものもしっかりしてないと
「うちはよその店とは違う」
とは言えないわけだね。
ものすごくいそがしいね、
そうなるとひとりひとりがね。
うちもそうだけど、必死でいかないと
何かオリジナリティって出ないんだよね。 |
宮村 |
じゃないと、みんなとおなじ
美容師になっちゃうと思うんです。
「天気いいですねー、
春だから髪軽くしますか?」
それで終わってしまえば何の意味もない。
もうちょっとつっこんだ、
そのひとをわかったうえでの
スタイル提案をできればいいと思います。 |
糸井 |
「実現するかわからないけど、
週休二日にしなよ」
って前にぼく宮村さんに言ったけど、むつかしい? |
宮村 |
お店が円滑にまわれば、
もちろんそうしたいとは思っています。 |
糸井 |
一日まるまる休みにするから
もう一日は前に進む日にするということで
お客さんを入れないようにすれば、
すごい信用は増しますよね。
必ずしも休む決まりにする必要ないけど、
「忙しいからどうしても構えないんですよ」
というのが、うちの課題でもあるんですけど、
好奇心のなくなっちゃったひとと接するのって、
すっごいさみしいじゃないですか。
だから、宮村さんから率先して
休んでるふりをしなきゃならない時期も、
来るんだろうなあー。 |
宮村 |
ひっぱっていくものとして、
「毎日あれだけやんなきゃいけないのかな
それでほんとに楽しいのかな」
と思われるのは、嫌ですね。 |
糸井 |
そうだよねー。 |
宮村 |
だから年に1回2階は海外旅行とかに行って
気分をリフレッシュしてくるとか、
そういうようなものも取り入れられたらと思うし。 |
糸井 |
宮村さんにお会いして、
美容師というのをイメージとして、
あらためて考えるようになったんです。
映画や美術館に見に行く時間のある美容師と、
ぼくなら会ってみたいと思うよね。
今はまだ火の車で動いているような気がするの。
上手にプログラムをつくって
ローテーションをできるようになったら、
休むことも可能かもしれないんですね。
そのためには、ちゃんと
ビジネスとして成り立っていて。
やる気のあるひととお金が欲しいひとって
きっと俺は別だと思っているんですよ。
「若いうちはただでもいいんですよ」
ってひともほんとはいると思います。
そのひとたちが週に4日だけは一生懸命働いて、
でもあと3日は自分の勉強すれば?みたいにして
2軍にいるだとかいうイメージが・・・。
特にこれからは、
小さくて、大きいサイズにしちゃいけない
ぼくらのやっているような商売では、
そういうことができると思うんですよね。
宮村さん、今度のお店楽しみにしていますよ。
お話、とてもおもしろかったです。
(おわり。) |