おとなが歌える歌を探して。 |
第1回 『おかあさんの写真』ができるまで。 去る7月17日の「今日のダーリン」で darlingはこのように書いています。 テレビのスピーカーから、男の太い声が聞えてくると、 なんだか珍しいものが流れているという気がする。 ひょっとして、もう見ている人も多いと思うんだけれど、 ハウスカレーのいま流れているCMは、 宮崎駿さんの描きおろしアニメーションで、 流れている歌の作詞も、宮崎さん、 歌っているのは上條恒彦さんだ。 高い声の女性の歌声ばかりが世の中にあふれていることに、 もうみんなが慣れきってしまっていて、 こういう男の太い声を、耳にする機会は少ない。 売れなそうなもの、なのかもしれない。 こういう音楽状況のなかで、 おとなの男の聴く歌、おとなの男の歌う歌がないと、 ずっと思っていた宮崎さんが言い出しっぺになって、 去年からずっとつくっていたアルバムが完成した。 アルバムのタイトルは『お母さんの写真』という。 16曲の選曲は、何度も話しあって、 宮崎さんを筆頭とする「親父たち」で決めた。 こんな時代に、逆行するかのような作品づくりだけど、 ぼくも含めてほんとにたくさんの協力者が集った。 「ほぼ日」でおなじみの人としては、 矢野顕子、宮沢和史なんて名前も見える。 ぼく自身も、作詞家としては、 『ひとつやくそく』と、 『豚の丸焼き背中にかついで』のふたつの詩で、 このアルバムに参加している。 いまが、こういう詩に曲がついてCDになるような 時代じゃないことは、よく知っているつもりだけれど、 もしかしたら受け容れられる可能性に賭けてみたかった。 宮崎さんの思いが伝わって、ひとり、またひとりと 「上條恒彦アルバム製作委員会」 のメンバーが増えていきました。 名刺を見ると「社長」だったり、 「代表」だったりする人。 名刺が必要ないくらい有名な人。 有名というのではなくみんなに認められている人。 いろんなおとなが集まって、 思い思いに意見を出し合いました。 「こんな歌が聞きたい」「この曲がいい」 「これも歌おう」「あの人に頼もう」 そんなふうにして、少しずつ、 『お母さんの写真』はつくられていったのです。 (そういった経緯は、darlingがアルバムに寄せた 「おとなが集まって、おとなの歌を集めたはなし。」 という文章のなかにまとめられています。) 関わったメンバーのなかで、 このアルバムの制作にもっとも長く携わったのが プロデューサーの大森昭男さんです。 大森さんはCMソングを中心に活躍されている 音楽プロデューサー。 大瀧詠一さんやYMOのメンバーたちが 若手ミュージシャンとして活躍しはじめた頃から 自身の企画するCMソングに積極的に彼らを起用し、 若い才能を育む場所をつくってきた人でもあります。 (darlingと矢野顕子さんの出会いも、大森さんの縁) 「このアルバムがすばらしい作品に仕上がったのは、 大森さんの力がすごく大きいと思う」 darlingは、完成したCDを聴きながら しみじみそう言いました。 「ほぼ日」では次回から、 宮崎さんでも、上條さんでも、darlingでもなく、 プロデューサーの大森昭男さんに、 このアルバムがどのようにできあがったのかを うかがっていこうと思います。
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2003-07-25-FRI
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