鈴木 |
相当いろんな音楽を聴いているんだろうね。
CD聴いてるほうが好きだぁ、っていう感じが……。 |
糸井 |
やっぱりミュージシャン系ですよね。
クレイジーキャッツなんかは、
俺はデビューから知っているんだけど、
アマチュアっぽさが、すごく面白かったんですよ。
ほんとはバンドマンなのに、お笑いをやってるから、
ちょっとやけっぱち、っていうような感じがあって。
で、そのあとの、ドリフは僕は好きじゃなかった。
じつは。今だから話そう、みたいだけど。
つまりね、音楽好きとは思えなかった。
で、本職だったんだよ、やっぱり、お笑いが。
おとといだったかな、雑誌の対談で、いかりや長介が、
ドリフターズはバンドじゃなかった、
あの形をとって、クレイジーみたいなものの
おこぼれを拾おうと思ってスタートした、って。
それをちゃんと言っているんで、
ああ、やっぱり! って。
35年さかのぼって……もっとだよ。
40年さかのぼって腑に落ちた。 |
鈴木 |
くっきり違うよね。クレイジーと。
でも、ビートルズの前座やってる。 |
糸井 |
ポカスカジャンが、あのバンドっぽさを捨てずに
やっていくためには、思いっきり、
芸人さんもやらないようなバカな衣装とかさ、
そういうことが大切なんじゃないかな。
お笑いの人たちは、どっちかっていうと、
「カッコイイお笑い」になりたがっているわけですよ。
それがさ、あのボンボリつけたような衣装で出てくる。
あれは、お笑いの人は、いまはもう
しないことですよね。そこでバランスをとってる。 |
鈴木 |
そうだね。ミュージシャンシップみたいなものとね。 |
糸井 |
あれはもうやっぱり、ナイス・プロデューサーがいる、
っていう気はしますね。
誰だってさ、バンドやってるやつって
モテたくて始めるわけだから。
ワァワァキャアキャア言われたいわけじゃない?
それを、どんどんヘンなふうにしていってるじゃない?
あれはねえ、異界に、人身御供(ひとみごくう)で
送られた人間だっていう……。
「異界の人身御供」っていうのと、
「二丁目のオーロラ輝子」っていう。 |
鈴木 |
コピーが2つ出たね。 |
糸井 |
あのバンド・ヒストリーの唄のなかに、どうやって
人身御供をやってきたか、っていう話が入っている
わけだよね。
あのさ、のんちんの、攻撃的な舞台進行っていうのは、
やっぱり、いいね。
あそこにミック・ジャガーが生きているよね。 |
鈴木 |
あとパンクもあるね、あそこに。
又、使うけどこの言葉。 |
糸井 |
あぁ、パンク入ってる! |
鈴木 |
場面の切り替えの時に強引なところもいいんだよ。 |
糸井 |
あれもパンクだ。 |
鈴木 |
そうそう。突然、絶ち切っちゃうから。
だから見ている側はネタを忘れるのかも。次から次へと。 |
糸井 |
出合いがしらの笑い、みたいのが多いじゃない?
で、それは、ホントは、お笑いから言うと
「低い」とされているタイプのものなんだけど、
でも、明らかに、練って作ってますよね。
……練り込まれた出合いがしら。 |
鈴木 |
ウン。 |
糸井 |
今日、俺、コピーライターみたいだ(笑)。 |
鈴木 |
みっつめ(笑)。 |
糸井 |
3人のキャラが全くちがう、っていうのもいい。
カブリが全然ないんですよ。 |
鈴木 |
ないね。 |
糸井 |
……ポカスカジャンの『ホテル・カリフォルニア』が
聴いてみたいね。 |
鈴木 |
あ、いいね。 |
糸井 |
ツイン・リードで。両サイドの。
バンド気分を自分で思いっきりウットリしててもらって、
一言だけギャグが入っているみたいな……。
おまえ、これ、どういうネタなんだよ? って。
「ギターが弾きたかったんだよーっ!」(笑)。 |
鈴木 |
そうだよ。
「ギターが弾きたかったんだよ」ていうのは
成立するんだよ。あの人たち。 |
糸井 |
するよね。「これ弾きたかったんだよ」って。
で、あの、のんちんが、口ギターで。トリプルギターで。
「俺だってこんなバケツ叩いてばっかり
いられねえんだよ、時には」って。 |
鈴木 |
そういえば、あのドラムセットすごいね。
あのバスドラがわりの金だらいに、上履きがくっついてる。 |
糸井 |
あれ、上履きのおかげで、戻るようになってる。
ギターはちゃんと高いの使ってたよね。 |
━━ |
YAMAHAのモニターになったんですよ。 |
鈴木 |
え? YAMAHAのモニターになったの?!
楽器のモニターやってるお笑いの人っていないだろうなあ。
それやっぱりさ、バンドとかさ、ミュージシャンだよ。 |
糸井 |
慶一くんは「ポカスカ」、全く知らなかったんだ? |
鈴木 |
ウン。「ワハハ」は知ってっけど。 |
糸井 |
俺がだまして連れてったみたいなもんなんだ。
「おもしれえんだよー」って。
実は俺も生で見るのは初めてで。昔、テレビでね、
『東京Aランチ』っていう、お笑いのグループばっかり
集めた、ネタをちゃんとやらせる番組があったんですよ。
若手のお笑いの人を、どういうふうに育てていくか、
っていう番組。
1組に1人ディレクターがついて、
一緒になって自分たちの売り込み方を考えて、
ネタをやる、っていう番組だったんだ。
これはね、俺ね、よぉーーーーっく探せばビデオに
録ってあるんだと思うんだけど、
すばらしい番組だったんだよ。
だって、ココリコ、ネプチューン、ふかわりょう、
ポカスカ、いっぺんに出てたもん。
それが全部ネタやったんだもん。
いま、ネタやる番組ないからね。
そこで、すげえなあと思ったのがネプチューン。
わけがわからないんだけどチャーミングだった。
ふかわは、これ間違うと売れるぞ、ってかんじだったんだ。
ココリコは、完全に台本がよかった。田中くんの。
で、ポカスカはね、これ、前からやってたんじゃ
ないか? っていうくらい完成されてたんだ。
それで、優勝がポカスカだったんだよ。 |
鈴木 |
あ、そうなんだ。 |
糸井 |
優勝すると、番組がつくってもらえる、
っていう権利の争奪戦だったんだ。
でもそのごほうびの番組は、10分とかの番組なんだけど。
「やっぱポカスカのほうがオトナだから
ネプチューンじゃないんだなー、1等賞になるのは」
って目で俺は見てて。
「でも、どっちになってもOKだよなー」
って思ってた。これが1回目。
そのあとはね、中山省吾が家出をして、
お父さんに勘当されたんだけれども、
故郷に小さな錦を飾る、っていう番組があって。
それで見た。泣かせものだったの、それ。
勘当とかされるんだよ。
それも知ってたんで、あのヒストリーものは
特にオツだったわけ。 |
鈴木 |
(笑)。 |
糸井 |
それじゃあ、第1回二丁目篇は、
「また次のライブがあったら見よう」って気にさせた? |
鈴木 |
そう。 |
糸井 |
お笑いはもともとキライじゃないんだよね。 |
鈴木 |
キライじゃないよ。 |
糸井 |
で、べつに「ポカスカ」を一番だっていわなくても
いいんだけれども、ほかにどんなのが好きなの? |
鈴木 |
ほかにねえ……俺ね、ここんとこ好きなのは、
昭和のいる・こいる。
あれ、神経症漫才だと思うんだよね。
「あーわかったわかったああそうねそうね」っていう。
これもね、NHKかなんかで、1年……
1、2年くらい前かな、「なんだこの漫才は!?」
と思ったんだ。ウン。 |
糸井 |
ちょっとライダーズ色あるね。 |
鈴木 |
昭和だから。昭和のバンドだからね。 |
(次回につづく) |