COOK
鈴木慶一くんと、
非時事放談「月光庵閑話」。

さて第5回。前回に引き続き、ポカスカジャンの話題です。
今回は、月光庵、darling、カグチが揃って出かけた
プーク人形劇場でのライブの感想から。
月光庵

鈴木 プークでは、また、ポカスカジャンに至るまで、
っていうのがあるじゃない。
客の詰め方! ありゃ、ビックリしたわ。

(注:プーク人形劇場でのポカスカジャンのライブは、
 桟敷席がまるで満員電車以上のような状態だった)
糸井 すごかったよ。俺たちは2階席でいたんで安定してたけど。
で、「あっちの人たちを憎みなさい」ってあおるんだ、
のんちんが。「あいつら、のうのうと!」って(笑)。
鈴木 セリで上がってきたんだよね。
糸井 あのイントロはよかったなあ。大げさで。
鈴木 あれで思い出したことがあってさ。
スパイナル・タップっていうバンドがあるんだ。
海外の一応ハードロックバンドなんだけど、
それが、映画が2本あって。
1本目はドキュメンタリーに見せているんだけど、
実はウソばっかなの。すごく笑えるんだ。
60年代からやっているすごい歴史のあるバンドで、
過去の映像とかも残ってる。
それが、フラワーチルドレンみたいな格好してたり
するの。で、「ビッグボトムという曲をやります」
って始めるわけだよね。
ところが、3人ギターがいるんだけど、
3人ともベースなんだ(笑)。
で、よく見ると、ベースのやつはダブルネックの
ベースで、どっちもベースなんだよ。
糸井 ダブルネックでしかも両方ベース!
鈴木 (笑)……っていうバンドがいるんだけど。
ほんとそれしょうがないバンドで、
架空のウソのバンドなのに、第2弾の映画が、
ロイヤル・アルバートホール・ライブなんだ。
糸井 それはホント?
鈴木 うん。ホントにやってる。
スパイナル・タップのTシャツ着てる客の前に、
メンバーが上から降りてくるんだよ。ロープで。
ところがひとり、降りられなくなって、
自分でペンチでロープ切って降りるんだ。
それをちょっと連想しましたね。
ポカスカジャンのあの出だしは。
それで、その話ちょっとすると、その最初の映画で、
「俺はすごく壮大な曲を書いた。ストーン・ヘンジという
曲を書いた。そのためにストーン・ヘンジを発注したい」
って、ステージの美術として発注するんだよ。
ところが16フィートを16インチと間違っちゃう。
16フィートのはずなのに、16インチのこのくらい
(小さい)のが完成する。
「これは、模型ですよね?」
「いや、これが本物です」
って。で、しょうがないからそれをステージで
上から降ろすわけだ。
糸井 いいなあ、それ!(笑)。
鈴木 で、演奏しながら「え?」って顔するんだけど。
第2弾でもやっぱりストーン・ヘンジが登場するんだ。
今度はそれがでかすぎて、楽屋の入り口から
入らない。ローディーが全部壊して、小さくしてさ。
で、やっぱり、演奏に間に合わないんだ。
それも結局、音楽が主なんだけど、
お笑いの度合いはポカスカジャンほど
多くはないけどね。そういう感じがしたね、
あのオープニングはね。「来たなーっ!」って。
糸井 そういうの、ポカスカは見ててやってる訳じゃないよね。
たぶん。あれは、セリをどう遊ぼうか、だろうな。
あそこの、段差、よかったもんね。
始まって……あの音楽で出てきて、
どうネタを始めるかってときに、
「♪今日も元気にポカスカジャン」って。
鈴木 あのアタマのBGMなんだっけ?

(注:ステッペン・ウルフのBORN TO BE WILDでした)
糸井 ツァラトストラ系だよね、要するに。
すごいよなあ。あれをさ、ボキャブラに出ているような
若い子たちがあそこでああ出てきて、
「ハイッ、そういうわけでございますけどねっ!」
ってったら、面白くないんだよ。
それは種類が全然違ってるんだなぁ。
バンドなんだな、やっぱり。
鈴木 3人の、顔の、すみ分け具合っていうのかな、それもいい。
だけど、「どんと意識してる」って、言うか?
糸井 「この衣装、どんとを意識したんです」って。
わかんないって。

(注:ボ・ガンボスのどんとです)


これが「どんとを意識した」という衣装

鈴木 寺山修司も、ウケなかったんだよね。

(注:寺山修司のロックンロール、というネタ)
糸井 ああ、でも、初日はもっとウケなかったみたい。
俺らのときは、あれで大丈夫って言えると思うよ。
永六輔だって……。永ちゃんで……。

(注:永六輔<永ちゃん>のロックンロール、というネタ)
鈴木 (笑)。
糸井 いちばんウケたの、年寄りだもん。
鈴木 そうそうそう。
だって、タオルまでだもんね?

(注:E・ROKUSUKE、と書かれたバスタオルを
 わざわざつくって、客に投げ入れた)
糸井 ちょうどさ、カミさんが一緒に行ってたじゃない?
で、あの人はB型のヒトで、
平気でコンサートの途中で帰れる人間なんですよ。
鈴木 おお。すげえ。
糸井 勇気ある人というか、
それが当たり前だと思っている人なの。
で、ライブ行くって言うから、
「ヤだなぁ、途中で帰ったら」って思ってたんだよ。
なんの悪気もなく、悪びれずに帰るんだよ。
「じゃあ、あたし、行くから」って。
「待ってるから」って。「ゴハンどうする?」
なんつって帰っちゃうんだよ。
「ヤだなあ、それ、やられたら」って思ってさ。
ところがさあ。ずうっとねえ、大喜びでいて。
しかも、楽屋で「おもしろかったです!」って
本人たちに言ったんだよ。
あんなこと、ないよ。ふつうは、
「ありがとうございました」なんだよ、
ああいうときの挨拶は。
だって、「おもしろい」って明確な感想を
述べているわけじゃない? 肯定的な。
それはなかなかないよ。
あいつはねぇ……ケチだよ。
鈴木 褒めケチ。
糸井 うん。要するに、単純に言うと、
「意味もない正直さ」だから、
つまんなかったときって、まず楽屋にまで行かない。
「……いいんじゃない?」なんてごまかすんだけど、
行って、おもしろかった、まで言うっていうのは!
━━ 前回のときは慶一さんがいらっしゃるって
いうんで緊張してたんですよ。
俺らミュージシャンだから、って。
鈴木 その辺が、ドリフターズじゃないんだ、って気がするね。
糸井 あのさ、ポカスカジャンって、つい、ネタを
手伝いたくならない?
鈴木 うん。
糸井 こういうの、なんか、ないかな、とか、
一緒になって考えちゃうよね。
あれ、シェアウエアっぽいよね。
このネタをこう転がしていく方法はないだろうか、って。
あれも、だから、芸として、表の顔・裏の顔じゃなくて、
どっちだかわかんない顔を見せるタイプだから、
そうなるんだろうなあ。
鈴木 そうだね。双方向性が生まれる。
糸井 あるよね。
あの双眼鏡のギャグ、みんな……、
鈴木 やっちゃった。

(注:双眼鏡を覗くジェスチュアを客にさせて、
 右手だけ口元にもっていかせ、前後に動かさせ、
 むにゃむにゃむにゃ……あとはとても書けません)
糸井 俺もやっちゃったもん(笑)。
そういえば、うち、ムスメも「ポカスカ」見てたんだって。
あの日は用事があって行かないことになって、
終わったころにメールが入ってて。そのタイトルが
“今日も元気にポカスカジャン”だったんだよ。
鈴木 おお。
糸井 あれ? と思って。なんで知ってるんだろう、偶然かな?
とか思ってさ。で、聞いたら、お笑いの、
大勢出るライブで、2度くらい見てるみたい。
「いいよねー」なんて言ってたよ。
“今日も元気にポカスカジャン”って、
……くだらない家族だなぁ、なんて思って。
鈴木 いいな、そういう家族って、って思うけどね、俺は。
くだらないものが、だいじ……っていう。
糸井 共通するの。
━━ ポカスカっていうのは……ギター、うまいんですか。
鈴木 うまいよ。
うまいにもいっぱいあるけど、じゅうぶん。
じつにじゅうぶん。
糸井 ああいう、楽器持って出るお笑いの人とは、
もう全然ちがうよね。レベルがね。
つまり、ホテル・カリフォルニアの
ツイン・リード聞きたいな、って言わせるレベルだから、
それはもう全然違うんじゃないかな。
のんちんのハーモニカもうまかったよね。
鈴木 ナイスだったよ。ミック・ジャガーなハーモニカだった。
糸井 あと、あの、応援したくなる原因のひとつは、
双方向もあるんだけど、稽古好きですね。
あの、短い期間で、新ネタ全部やったんですよね。
あれ、稽古してなかったら、もたないでしょう。
で、暗記モノがものすごく多いでしょう。
あれはスゴイと思うね。
鈴木 そして長いし。あれ、チャック・ベリー「剣の舞」だっけ?
糸井 ベンチャーズの「剣の舞」。

(注:ベンチャーズが剣の舞を演奏したら、というネタ)
鈴木 あれ、好きだなあ。
あれね、ちょっとクヤしくてウラヤマシイものあんの。
ああいうのをね、音楽聴きに来たお客さんの前でやると
笑ってくれると思うんだよ。
やりてぇな、っていうね。
だから、なんかね、ポカスカジャン見にくると、
2回目は、「なにパクッてやろうかな?」ってね。
糸井 おお。
鈴木 ただね、ムーンライダーズのステージ上で
やることではないかもしれないけれど。
糸井 慶一くんのソロで、もう一人ギタリストが遊びに来て、
さんざん練習しておいて、「せーのっ」でやる、
なんて、カッコイイよね。
鈴木 それがベンチャーズ「剣の舞」だった、とかさ。
コピーしたくなっちゃうよね。ホントに。
(次回につづく)

ポカスカジャンに質問! パート2

1999-05-03-MON

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