糸井 |
じゃあ、進化させて、ポカスカジャンの今後の
活動について、展望を語り合おう。 |
鈴木 |
アコースティックギターを、エレキ化する。 |
糸井 |
とうぜん持ってますよね。 |
鈴木 |
彼ら、すべてエレキの弾き方だから。
すべてとは言わないけど、ほとんどエレキの弾き方
なんだよ。エレキのほうが、音量と喋りの問題がね。 |
糸井 |
そうか。やってる曲も、
全部エレキの曲ばっかりだもんね。
エレキになったからって邪魔になるわけじゃないよ。
モト冬樹さんみたいなやり方あるもん。
そうしたら、ベース音での遊びもできるしね。
ソウルフルなこともできる。
それ、慶一くん、いいよね。……人のことなのに(笑)。 |
鈴木 |
エレクトリック化。 |
糸井 |
俺はね、
今のテレビはネタをやらして
くれないでしょう?
そのなかで、お笑いの人たちが、
せっかくお笑いとして突き進んでいっても、
やがてカーブしちゃうんですよ。
つまりね、最高のゴールが司会者なんだよ。 |
鈴木 |
司会だね。
まずテレビに出るのが好きだ、っていう気持ちが
すごい多い感じだよね。だからさ、
最終的に司会者でもいいんじゃない? |
糸井 |
だって司会者いちばん長く出てるだもん、みたいなさ。
「カンムリ番組がほしい」って、
みんなお笑いの人たちは言うんですよ。
『ナイナイのナントカ』みたいなのに憧れちゃう。
それは違うよね。だからネプチューンなんかは、
うまいこと擦り抜けているとは思うんですよ。
ネタやったり、バラエティ化してったじゃないですか。
でも、その道以外にないのかよ?
という気分は、あるんですよね。
そうなったときにね、ポカスカジャンって、
俺、そのへんのカンいいんだけど、
司会者の流れでは使いにくいバンドだな、と。 |
鈴木 |
あ、使いにくいと思う。 |
糸井 |
つまり、レスポンスで生きているわけじゃないから。
やっぱり、発信するバンドで、
反射するバンドじゃないんですよ。
反射性がいちばん要求されているいまのテレビ時代には、
ホントはもうフィットしていない。
でも、それが、希望がないわけじゃないなと思うのは、
そのテレビに、みんなが
「違うな」と思い始めてるんですよ。 |
鈴木 |
いま? |
糸井 |
うん。だからいま売れてる出演者だって
「いまのドラマはヤバイよ!」って、本気で言ってる。
それ、たしかにそうだよ。
いつでも、始まったときは面白かったものが、
安定して、衰退していくカーブで、口当たりのいい、
おざなりな、というか、当たり障りのないものが
「全部」になっちゃったじゃないですか。
テレビの全部がそうなっちゃった。
そんときに、意外に、ある一部の人は
ドキュメンタリーに目が行ったり、
NHK見ることが多くなった。 |
鈴木 |
俺、NHK見ること多いんだよね。 |
糸井 |
そういう人が、前より多くなっているっていうのは、
次への予感でもある。テレビとのつきあいをやめる、
ってことではないんだけど、
テレビは、やっぱり対等に出るもんだと思うんですよ。
出してください、じゃなくて。
そこんとこの距離っていうのを、ポカスカジャン、
これから、草の根活動をするらしいから、
俺、大賛成ですね。
全国を、地味に、ハイエースで回るっていう
ツアーをやるっていう。 |
鈴木 |
ハイエースで回るっていうのは
すごいバンドっぽいね。
(注:7、8月にかけて、全国20個所を回る予定) |
糸井 |
呼んでくれた人の家に泊まったりとかっていう。
俺の(ポカスカジャンの応援活動は)最終的に、
欲をいうと、『ほぼ日テレビ』だね。
『ほぼ日テレビ』があったら、
「今日はポカスカジャン。どうぞ1時間勝手に
やってください」ってね。できるよなあ……。 |
鈴木 |
ラジオは? |
糸井 |
ラジオってのはやれると思うんだけどね、
そのラジオで、ばらまく面積に比例して、
手間はおんなじにかかると思うんだよ。 |
鈴木 |
いや、たしかにそうなんだよね。 |
糸井 |
ラジオの可能性はずっと考えるんだけどね。
そういうときのお手伝いにはなかなかなりにくいんだよね。
ラジオって、待ってて聞く、っていうのって、
AMの夜の時間帯だけでしょ。しかも、高校生とかだけ。 |
鈴木 |
ウン。 |
糸井 |
あれを突破する方法をうまく考えられないと、
ラジオ、だめなんだよ。 |
鈴木 |
世田谷の、ケーブルテレビの世田谷版なんてのは、
とんでもない番組やってるけどね。70歳くらいで、
ドラムをやってます、ってバアさんが出てきたりさ。 |
糸井 |
初期のころのスペースシャワーなんかに
ゲストで行ったときも、
「これホントに誰が見てんだろう?」
って思ったよ。
3人くらいしか見てないから自由にやってください、
なんて言い方されてたけど、
今は、スペースシャワーっていうのは、それなりに、
音楽の紹介とか「してください」って側から、
ちゃんとスポンサードされて、
お金とってってところまで育ってる。
っていうの聞くと、そのレベルのテレビも
あるとは思うんですよね。
……慶一くんのソロと、ポカスカの組み合わせって
できないのかな。 |
鈴木 |
俺がポカスカに入ってなんかやる…… |
糸井 |
入ってやるのは、難しいでしょう。 |
鈴木 |
難しいね。あのリズム。 |
糸井 |
出番をサンドイッチにして。
で、どっちの客だかわからないっていう、
クラクラっと来るかんじのコンサートを、
実現できないかなあって。 |
鈴木 |
俺は、一緒にやりたいなって気持ちはあるよ。 |
糸井 |
小さいとこでもいいよね。 |
鈴木 |
それをどうするかはねえ…… |
糸井 |
俺のイメージではね、
アタマ、ポカスカジャンで始めて、
慶一くん入れてポカスカジャンで終わって、
慶一くんをユルくするわけ。
ライダーズ系の人たちは、
観客としてそんなにいなくてもいいけど、
好きなことだけやってるオッサンひとり入りました、
みたいにして、責任はポカスカジャンにある、
って構成だったら面白いと思うんだよ。 |
鈴木 |
そうだね。僕が責任をとるとなると、
かみあい方が、彼らがゲストになっちゃうよね。 |
糸井 |
なんか、オーティス・レディング
みたいのやってもいいな。
最後にみんなで口笛吹いて終わるとかね。
ヒュッ、ヒューッ、って。
観客席ぜんぜんもりあがらないんだ。 |
鈴木 |
それで俺、はさまれたときに、
下手に、笑わせなきゃいけないんじゃないかと思うと、
こりゃ大失敗になる。 |
糸井 |
だから慶一くんはいつものようにしてて、いいんだよ。
ただし、イヤなことはぜんぜんしない、
っていう。わがままな40分。 |
鈴木 |
40分イタダキっ。ちょっと彼らに、ギターで。 |
糸井 |
手伝わせたり。 |
鈴木 |
ひとりのライブは、いやホント自由だよ。
何が自由ってね、間奏っていうのがあんじゃない?
間奏が、おっきなヤマなんだよね、ひとりだと。
なにもないから。で、間奏途中で切っちゃったりさ。 |
糸井 |
それをさ、プーク劇場よりちょっと大きめのところでさ、
損はしないよ、って程度でやったら、面白いよね。 |
鈴木 |
もういっこ、ポカスカジャンの前になんかあるっていう、
もうちょっとイベント的にすることもできるよね。 |
糸井 |
そうか、もうひとつ何かを入れてもいいんだ。 |
鈴木 |
安易な方法としては、DJ的なものがあったりとか。
なんだろう、この日は? っていう。 |
糸井 |
チケットに書いてある言葉としてはさ、
「歌とお笑いの2時間半」とかさ。
なに? そのマッスグさは? みたいなさ。
……なんか、できるなあ。ちょっと、はさんでみたいなあ。
客入んないはずはないですよ。
もうひとつ欲しいのってなんだろう。
短編映画くらいでいいのかな。 |
鈴木 |
そうだね。 |
糸井 |
笑った後に音楽聞けて、
音楽聞いた後にちゃんと笑える、
っていう知性の人だけを呼びたい。 |
鈴木 |
現在って、客が凝視型でしょ。
ステージ上を見て動かないじゃない。
で、俺の場合もそうなんだけど、それを、
なんか、動けるような。飲んだりできて。
そういう、客がゆらゆらしているところで、
ポカスカジャン、パーッと出てくると、
見たい人前のほうへ、って。
東京No.1ソウルセットとかだと、そういう
ゆらゆら客や、ダベリ客多いけど。
ポカスカジャンの客も、みんな、こう、
(まっすぐに)見てるよね。 |
糸井 |
だってあれ、詰め込まれてるから。どうしようもない。 |
鈴木 |
そうだね。つい、見ちゃうよね。 |
糸井 |
もうひとり、俺も加わりたい、ってやつがいると、
ガーッと熱くなるね。 |
鈴木 |
うん。 |
糸井 |
小さいデヴィッド・カッパーフィールド
とかいないのかな。 |
鈴木 |
コカッパーフィールド(笑)? |
糸井 |
おお。テヒット・カッハーヒールト、みたいなやつ。
できそうな気もするんだよなあ。
つまり、左脳的な人は入れたくないんです。 |
鈴木 |
ウン。ルー・ケーズや、ブルーノ・サンナルチノ。 |
糸井 |
話で面白いのを組み合わせたら、
昔の「ヘンタイよいこ」になっちゃうんです。
それは時代がちがうんですよね。
もっとね、……なんなんざんしょ。
ポカスカの面白さがわかって、慶一くんの歌がわかって。
妙な野心があっても困るし。
音とお笑いと、あと何があるんだろうね。
踊りでもないかなあ。
そういうのってさ、慶一くん、
相互観客関係っていうのがいいよね、舞台の上が。
俺も見たいから、じゃあ、客席にいるよ、みたいなさ。
で、またひっくりかえって、っていう。
ポカスカは、どこ連れてかれるかわからない、
っていう面白さが、やっぱり…… |
鈴木 |
それがね、最大の魅力ですよ。
すんげえ好きだよ、俺。ホントに。 |
糸井 |
じゃあ大丈夫だ。ギターもうまいって言ってるし。 |
鈴木 |
いやあ、ギター、うまいし。俺よりうまいし(笑)。 |
(第2シーズンおわり) |