糸井 |
びっくりシリーズでいうと、野田秀樹と対談したときに、
「芝居やんないと食えないしさあ」って言ったんだよ。
芝居しかやってないねえ、って言ったら、
「いやー、芝居やんないと食えない」って。
おいおい、それは芝居やってる人にとっては
衝撃的だと思うんですよ。芝居って、
やんないから食えてる人はいっぱいいるけど、
やると食えないって人はいっぱいいる。
でも、やんないと食えないっていわせた
野田秀樹ってかっこいいでしょ。 |
鈴木 |
ケラ(ナイロン100℃)とかもそうだよね。
芝居やんないと食えない。そのかわり芝居の量も
めっちゃくちゃ多いよ。年間こんなにいっぱい、
なんでできるの? って。年間6本とかやってますから。 |
糸井 |
あの人はオーソライズされたハンコもらいましたよね。 |
鈴木 |
欲しかったでしょうね、よかったですよ。
いわば、新人賞のようなものだから。 |
糸井 |
よかったね。例えばケラと慶一君が何をどうやって
やれるかっていうのは、お互いの考え方をぶつけあって
何ができるかっていうのを、
今までの興行の仕組みじゃなくて発想できるっていうのは
一つの考えで……、 |
鈴木 |
できるよ。 |
糸井 |
俺はケラって会ったことないけど、1個だけ俺が作詞した
『君はガンなのだ』を歌ってくれた人として、すごいって。 |
鈴木 |
ちゃんと録音もしてくれたよね。 |
糸井 |
ね、まんま出した人として、俺たちは今までの
枠組みにいたけど、あれ、潰したのも丸山さんですよ。
SONY社長ですよ。 |
鈴木 |
最後になってぜんぶ潰したね。レコーディングも全部して。 |
糸井 |
それを拾ったケラがいる。一方で丸山さんのやれることは
全部やってるんですよ。あの人やっぱり働きもので、
スニーカー履いた経営者ですから。で一方でケラが、
こんど丸山さんの側からのハンコをもらいながら
生きてるじゃないですか。俺らはどっちもOKだよね。
俺らが彼らとジョイントしたときに何を考えるかって
いうと、どっかのところでツーペー(差し引きゼロ)じゃ
ないといやなんですよね。共通してるのは、
俺も慶一君もお金もらうときに、
お布施じゃいやなんですよね。あと投げ銭嫌いですよね。 |
鈴木 |
きらい。お金けっこう好きだけど。 |
糸井 |
だったら、企画をアイデアにして組んで、
一緒に失敗しようぜってやるのが、
俺の来年のイメージなんだ。そのかわりお前、
俺といるとひどい目にあうかもしれないぞって。
このページ始めたときもそうだったんですよ。ほぼ日も。
ひどい目にあうかもしれないよ、って。
で、俺も遭う。で、慶一君来ても粗末に扱って
何の得があるってわけじゃないけど、
何かいいような気がするっていう
その匂いをかぎにくるわけじゃない。 |
鈴木 |
糸井さんの読みぴったり当たってて、
3月でパソコンつないで、そういうもんですよ。
なにかをかいだんですね。 |
糸井 |
そこは、ギャランティのやりとりはなくて、
あの、よくいうんだけど、机の下で情報っていう
大金が取引されているわけですよ、情報と考えですかね。
この時代をこのまま半端な見えやすいベンチャーとか
今までの枠組みのなかで何やってういくかっていうことを
考えてたら、これね、希望なんかありゃしないんですよ。 |
鈴木 |
そんなこと考えたくないですね、
おそろしくつまんなくなる。
私の場合、枠組みを覗いちゃ、他へいく。
でもその枠の中たるやみんな同じ。 |
糸井 |
つまんないでしょ。俺はもっと男の子になるしかないぞって
いうのを日々ね、やってるわけですよ。
だから今、クリエイティブと金についてっていうのを
2週連続で書いて、八谷さんが会いたいって書いて。
もともと八谷さんって知ってるんですけど、
ただ会ってゆっくり喋りたいって、
わかるよ彼は今、30代って一番見本になる年齢じゃない。
クリエイティブで食えるんだっていうのを証明したくて、
受け手の立場から作ったクリエイティブなんですよ。
あれ、売れるぞと思って作ったクリエイティブじゃ
ないんですよね。これは売れる可能性があるぞと思って
作ってるんですよね。 |
鈴木 |
あの人ほかで作ってるのってへんなのばっかりですもんね。 |
糸井 |
そう、あの変なジェット噴射みたいなの。
で、ポスペがちゃんとプロデュースの能力のある人と
くっついて、八谷さんは何にも節を曲げずに、
ちゃんとペイしてるんですよ。極端に言うとあの人、
おもしろいなあーって思うんだけど、
ポスペのホームページって有料サイトなんですよ。
ぼくはペイしてるって言えるんですよ、あの立場だと。 |
鈴木 |
うーん、有料サイトってすごいな。 |
糸井 |
俺には思いつかない。
アーティストでありながら実は食えてて、
何したいんだろうっていう、ジェット噴射みたいなの
ばっかりやってるっていう、そういうやつばっかになる
時代って、今までではありえないんで、
糸井さんがいいっていったから何か俺って
有望かもしれない、とか、名前が出るかもしれないとか、
きっとそんなやつばっかりかもしれないけど、
今、そんなやつあてにしてらんねえぞって。
どっかのところで実はライバルだぜっていうところに、
俺の会ってないところにいるわけですよ。
それは、敵じゃなくて大きい意味で味方なんですよ。
お互いに。そこがね、今お互いにリンクする匂いが
するじゃない。俺はケラって知らないけど、
レコードのことで覚えてるし、
でも向こうはそれを作った人ってあいつだよな、
っていうとこでつながってるんでしょうね。
おおげさにいえばクリエイター同士のつながりって
あるんですよ。で、慶一君はたとえば何かやるときに、
もう、ちょと手伝わせてっていったときに
できるかもしれない。そこで僕は彼に何が渡せるんだろう、
で、向こうは何が僕に与えられるんだろうっていうのも、
先生と生徒っていうんじゃなくて、
助手と大学院生くらいの関係かな。
この気分になりたいんですよ。わくわくするよね。 |
鈴木 |
そうだね。助手って、そうだね。 |
糸井 |
デジタルハリウッドの校長先生と話をしたら、
最初機械を入れたけど、先生がいないんだってさ。
生徒募集するんだけど、しょうがないから自分の友達の
助手連中とか院生とか集めて、バイトしないかって言って
そこに放り込んだら、人に教えたことなんてないやつ
ばっかりだからめちゃくちゃなんだって。
自分はできるんだって。
生徒はそういう人からものを教わるときって、
より前に行くんですよね。
で、あの学校をスタートしたらしいんだよ。
学校だけど寝泊りしていいっていうんだよ。
理由は簡単で、そんな高いマシンは自宅にないって
いうんだよ。これ使いたい人はいらっしゃい、
っていうのはものすごい魅力で、
先生に雇われた人もぜひそこに行きたがったし、
生徒もそうだったでしょ? 今でもそういうシステムに
なってるらしいよ。スタジオ借りまくってる
音楽家みたいなもんだね。
こういうことやってる人はそれはそれで助手やってたりさ。
それにくらべると俺なんかまだ慎重すぎると思ってる。 |
鈴木 |
子供にみえるけどなあ。失礼。 |
糸井 |
そういう言われ方はまんざらではないけど、
正確でない判断はよくないと思うんで、
俺は今、「慎重すぎる」が正しいと思う。
たとえばさ、こないだ俺は金ちゃんに負けてるんだよ。
金ちゃんは何にも考えてないと思うんだけど、
Tシャツっつったら儲かるっつったんだよ。
そしたら俺は「ものを売るのはどんだけ大変か」っていう
ことを含めて、説教がてら、5枚だったときには、って。
金ちゃんは最初に、1000枚だったんだよな?
1000枚売ったらいくらになりますよ、って言ったんだよ。
すっげえーって言って大笑いしてた。
で、夜中にここで集まって
「1000枚売るっていうのは、まあいいよ。理想にして、
1000枚にして在庫抱えたときも同時に考えなきゃいけない」
って言ったんだよ、おとっつぁんの考えだよ。 |
鈴木 |
おとっつぁんだよね。 |
糸井 |
おとっつぁんの考えはここからはじまって、
じゃあ買うって決めてる人からはじめりゃいいって
思ったんだよ。時間かかったなあずいぶんなあ。
買うっていう人何人いますかってアンケートとって。
300何人、400人……、 |
鈴木 |
それ無謀じゃない。ぜんぜん無謀じゃない。 |
糸井 |
そうでしょ? すごいんだよ。工場のほうも
受注生産看板方式だから、うちは在庫を抱えないで
一銭も使わないって決めてたから、
純粋にほぼ日Tシャツっていブランドだよ。
それを、金ちゃんが1000枚って言ったときは、
いや、そんなにあれだったらTシャツって物販は
いいと思うんですよねって言った時に、
そんなに考えはないと思うんですよね。
1000枚売れたときには200万なんですよね、売上で。
売上で考えたときに、今までの俺の経験で100枚売れる、
500円で100枚、いくら? 計算してみ、金ちゃん、
って説教モードよ。「そうですねー」って。
そうですねえって言うもののその提案があって、
慎重すぎる俺がいて、どうしたかっていうと
発明したわけですよ。質問して作るって。
これアイデアですよ。そしたらまあ300枚売れたら、
儲けにもなんないけどまあ損にもなんないし、
宣伝にはなるかな、って。で、やりましたよ。
で、俺ら仕入れとかぜんぜんまけてくれとか言わずに、
郵送はこうすればいいとかいうのを読者にきいたわけで、
宅急便より郵送のほうが安くなるとか
教えてくれるわけだよ。慶一君のメーリングリストのような
ものだよ。で、またここでこそこそっと話をして、
リスクはなんだろうって、また慎重に。
最初にお金もいらないし、300枚でも400枚でもいいやって。
ところが答えが3000枚と出たときに、
俺はもう滂沱の涙だよ。無力だと思っていたものがさ。 |
鈴木 |
うん。 |
糸井 |
クマちゃん(篠原勝之さん)の喧嘩の話もそうなんだけど、
クマちゃんって喧嘩の名人なんだけど、
昔はいつもカツアゲされてたんだって。
新宿駅の地下通るのヤだったって。
そこでいっつも有り金はたかされてたんだって。
もう払えないっていって、あるとき初めて殴ったんだって。
そしたら相手が簡単にへこんだんだって。
それ以来クマちゃんは喧嘩の強い人として
第二の人生を歩みだしたんだって(笑)。
それに限りなく近いんだけど。 |
鈴木 |
Tシャツってちょうどいい手ごろなもんなんだよね。
原価と売値と。で、そんなに何千万も儲かるもんじゃない。
でもTシャツ捨てないじゃない。
持ってるTシャツってさ。 |
糸井 |
でも俺ら販売に出た覚えもないし営業したこともない。
ただ正直に書いてた。いくら儲かるかも、
前から読んでるやつは計算してると思うんだよ。
これもスケルトンなんだよ。
こういうことは俺反則だと思う、って俺書いたの。
こういうことやると商品の市場を荒らすことになるから、
俺はしたくなかったんだけど、あんまりみんなが
ぶつぶついうから、こんなことだよ、あとは知らないよ、
売れたら俺たち御殿たてるんだってやったら、
こういう結果になったんだ。 |
鈴木 |
ダイレクトにやってて、ダイレクトにお金が入ってきて、
っていうのが商売かどうかわからないけど、
そういうのが増えてくるな。
(つづく) |