鈴木 |
インターネットって、お客さんがダイレクトに
商品を手に入れられて、提供する側にもダイレクトに
お金が入ってくる環境が確保できる。
それって、フェアでしょ?
そういうのって増えてくると思う。
われわれもバンドのTシャツつくるときに、
「このデザインじゃ、ヤバイんじゃない?」
っていうことを考えるときもあるよ。
客がこれだけ来たらこれだけ買うだろうっていう、
ある程度のアベレージはあるわけだけれど、
でもね、自分たちで考えること、
それが非常に楽しいことなんですよ。 |
糸井 |
うん。 |
鈴木 |
これまではレコード会社っていうと
銀行だと思ってたわけです。
レコードつくります、これだけ費用がかかります、
ああ、ずいぶんかかっちゃいましたね、
足りない部分は他のところで補填するからね、って。 |
糸井 |
「あんたらは、ずるずるやるから」って。 |
鈴木 |
今は、そんなことはできなくなってきた。
それが逆によかったね。レコード会社っていうのは
銀行じゃない、と思うしかないわけですよ。
で、それなりにやっていくわけじゃない。
それなりの楽しさっていうか、何ていうかな、
お金が見えてくるわけだ。今頃遅いか。
Tシャツなんか特に、見えてるわけだからね。
ツアーをしたときに物販コーナー見てると、
Tシャツが売れることで目の前に札が舞うわけだ。
でも千円札。
お金ってこうなるんだな、って。
あんまりこんな年になるまで見てこなかったわけだけど。
ホント、チャンボー、情けないね。 |
糸井 |
ダイレクトにやってみたらおもしろかったんだね。 |
鈴木 |
そうだね。その流れ着く先が、今回の新曲のネット配信。
タダなんだよ。実験の要素が強い。 |
糸井 |
見本版をただでさしあげますってやつですよね。 |
鈴木 |
実は見本ではなくて本物、で、それで今後が
どうなるかということですよね。 |
糸井 |
あれって、MP-3で再生するの? |
鈴木 |
ありとあらゆる再生の方法を揃えたというのが
今回の配信実験なんですよ。 |
糸井 |
その配信実験に協力してる何とかさんっていうの……、
あの人レコード会社じゃないでしょ? |
鈴木 |
あの人はMAAという、サカモト(坂本龍一)とかが
やっている、著作権を考える団体の人。
「メディア・アーティスツ・アソシエーション」という。
要するにネットも含めて、ありとあらゆるメディアで
モノを作っていくアーティストの事を考える、
アーティストによる協会みたいなものです。 |
糸井 |
先々ぜったいそうなってくるんだよね。
対策を何処で作ってさあ、とかそういうことに
なってくるんだろうね。 |
鈴木 |
暫定的に決めて、もう始まっちゃってるし、
すごいスピードだし。 |
糸井 |
100円ライターの普及ってそうだった。
デュポンだダンヒルだっつって、何万円だの、
輸入品だなんて言って見せびらかしてる時代があった。
いっぽう、オイルライターっていうのは粗悪品だ、
みたいのがあって、マッチも、どこでももらえるから
いらねえよ、という空気があって。
ティッシュペーパーと同じ考えだね。
それが、チルチルミチル(100円ライターの元祖)が
100円で売れたときね、これ、俺、何かだと思ったんだよ。
当時編集長を2号だけやった雑誌があって、
その雑誌で秋山道男さんに100円ライターについて
書いてくれって依頼したんだ。
何でそのことを思ったかっていうと、
田中一光さんが100円ライター使ってたわけよ。
あんなにデザインにうるさい人が何で許したんだろう、
世の中こういうふうに変わっていくんだって、
100円アートのゆくえを見守るわけだよ。
そしたらもう、こうじゃないですか。 |
鈴木 |
ポップアートになるんだよね。100円ライターは。 |
糸井 |
たぶんウォークマンなんかでも
パチンコの景品になっちゃう。 |
鈴木 |
曲もウエブで配信する場合は100円とか200円だからね。 |
糸井 |
曲も100円とったら御の字ですか? |
鈴木 |
そうですね、どうだろう、わからないね、そこは。
全然わからない。 |
糸井 |
そこはさ、俺たち以外のタイプの人が欲しいんですよね。 |
鈴木 |
マーケティングはわからない。やってみないとわからない。
それはさ、世界を相手にしたらすごいんでしょうけど、
そうはいかないから。でも、道はできてるわけだよね。
外国のお店に置きたいなっていう、
しちめんどうくさいことはないわけですよ。 |
糸井 |
何枚売れたら「やったーっ!」て言える数字も
ないんでしょ? |
鈴木 |
ないんです。 |
糸井 |
とにかくやってみて、ああこうかって思いたいんだ。 |
鈴木 |
何かものを作ると、いろんなものが付加してくる。
くっついて、一個になるわけだよね、「もの」だから。
しょうがないよね。それ(数字)は、
ないんだもん、最初は。
極端な話したら、僕、ここにきて曲をつくる。
生中継でもそうだけどさ、今の気持ちではタダでもいいや
って思うじゃない。それ自分で作ってみようかな、って、
ちょっとやってみようかなって思うじゃない。 |
糸井 |
俺も今、100円シェアウェアをやってみたい。
やってみないとわからない。それができるっていうのが
デジタルメディアのすごいところですよね。
問屋に風呂敷包みを持ってって、
形になってないと仕入れようがないから、って、
ここで歌ってみますからってわけには
いかないじゃないですか(笑)。流しだよな、それはな。
流しは世界に行けないよな。 |
鈴木 |
流しはやっぱ人の目の前でやんなきゃいけない。 |
糸井 |
デジタル発信できないものっていうのは
根本的には運送屋さんだけがもうかることになる。
で、運送屋さんのほうはダンピングになる。
あれはあれでね、なかなかきつい商売してるんだよ。 |
鈴木 |
俺も運送屋さん安いなって、あるとき気づいたけど。 |
糸井 |
ロジスティックを組み立てたからですよ。
誰かが考えてるわけで。 |
鈴木 |
すんげえ重いもの送っても600円とかさ。 |
糸井 |
昔のイメージあるから安くってさ。
それは航空運賃もそう。飛行機会社も飛行機の値段は
こうだってだんだん下げてきちゃったから、
マイレージとかで自分の首をしめてるらしいよ。 |
鈴木 |
人を運ぶ処理費用っていうのは安くなるかな? |
糸井 |
宅配便が安くなったのは数が増えたからだろうね。
ターミナルを、大中小とわけて考えると、
日本って狭いからもっと違うかもしれない。
最後の小ターミナルから各戸へというのが
一番実は煩雑なんじゃないかな。居留守でした、とか。 |
鈴木 |
そりゃそうだね。
そういえば井口くん(月光庵さんの若手スタッフ)、
運送屋のバイトやってたんだよね。 |
井口 |
大変ですね。アルバイトの場合は数で歩合ですから。
同じ家に3、4回、1日に行くこともあるんですよ。 |
糸井 |
ガソリン代は自分持ち? |
井口 |
リースの車を借りるとガソリン代出るんですけど、
自分の車持ち込むと全部自分。
そのかわり歩合高くなるんで。 |
糸井 |
どっちにしたの? |
井口 |
ぼくはリースですね。冬場だと荷物が大きくなるんで、
自分の車では70個くらいしか積めないんですよ。
リースだと倍積めるんで。 |
糸井 |
そこまでっていうのは、クリエイティブの会社が
することじゃないんですよ。でも一杯、モノもらうけど、
ダイレクトメールでも見るのと見ないのとがある。
お歳暮でもいるのと、いらないのとがある。
ここがこれからの勝負だと思うんだよ。
(つづく) |