── |
岩崎さん、最後に「AKB48」のお話を
おうかがいしてもいいですか。 |
岩崎 |
もちろんです。 |
── |
「AKB48」をプロデュースするうえで、
ドラッカー的な考えかたは
どのように、影響しているんでしょうか。 |
岩崎 |
影響していません。 |
|
オトヤ |
え? あ、していないんですか? |
岩崎 |
ええ、直接的には。 |
── |
いやぁ、それは意外なお答えでした。
「あれは、ドラッカー的に言うと」とか、
そういう展開を予想していたのですが。 |
岩崎 |
というのも、やはり「AKB48」は
秋元(康)さんという才能から
生まれてきたものだし、
秋元さんご自身は
ドラッカーのことを、ご存じないので。 |
── |
ははー‥‥。 |
岩崎 |
私は秋元さんをサポートする役割しか
果たしておりませんしね。 |
オトヤ |
そうなんですか。 |
岩崎 |
ただ、秋元さんは徹底的な「顧客主義者」。
たとえば、そういう個々の部分が
ドラッカーと共通している、ということは
あると思いますけれど。 |
── |
たしかに「顧客主義」というのは、
ステージを拝見して、すごく感じましたね。 |
オトヤ |
至れり尽くせりっていうか‥‥。 |
── |
なにしろ‥‥うちのオトヤにいたっては
前田敦子さんの投げた
「一輪の赤いバラ」まで手に入れました。 |
オトヤ |
はい、大切にしたいと思います。 |
|
前田敦子さんの投げた「一輪の赤いバラ」は
立派なドライフラワーとなって、今もオトヤの机を飾っている。 |
岩崎 |
‥‥ひとつ言えるのは、やはり「劇場」が
秋元さんにとっても
ひとつの大きな化学変化をもたらす
装置だったんじゃないかなということです。 |
── |
なるほど。 |
岩崎 |
やっぱり、見ていて、おもしろいんですよ。
お客さんの反応がダイレクトですし。 |
── |
そうなんでしょうね。 |
岩崎 |
秋元さんは、30年近く
テレビの世界でお仕事されてきましたから、
ナマで「顧客」を見た経験は
あまりなかったんです。
だから、
いざ劇場で「AKB48」をやり出したら
ステージのようすそっちのけで
お客さんを見るのが
おもしろくなってきちゃったんですね。 |
── |
なるほど。 |
岩崎 |
以前から顧客主義的ではあったんですが、
劇場という装置のおかげで
その傾向が、ますます強くなったのでは。 |
オトヤ |
ははー‥‥。 |
岩崎 |
あとは、さきほども話に出ましたけれど、
ドラッカーのいう
「昨日はすべて陳腐化するが故に
古いものは捨て去るべきである」
という考えかたも
「AKB48」をプロデュースするときと
共通する考えですね。
つまり「らしさ」をつくらない、ということ。 |
|
── |
らしさ? |
岩崎 |
そう、「らしさ」をつくらない。
アイドルやアーティストって
「らしさ」が出てくると
もう「新鮮味」を、感じさせられなくなる。
だから「AKB48」の場合も
「AKB48らしさ」が固定化しないよう、
気を配っているんですよ。 |
── |
へぇー‥‥そうなんですか。
ちなみに「AKB48」がデビューしてから
軌道に乗るまで
どのくらいの時間が、かかってるんですか? |
岩崎 |
いちばん最初のお客さんは、7人でした。 |
── |
7人! |
岩崎 |
それこそ、メンバーの数のほうが
お客さんの数より、多かったわけです。 |
オトヤ |
そうですね、たしかに。 |
|
岩崎 |
で、定員250人の「AKB48劇場」が
はじめて満員になったのが
デビューから2ヵ月くらいたったころ。 |
── |
2ヵ月、ですか。 |
岩崎 |
だから‥‥そうですね、
早いとも言えるし、
ある意味では時間がかかったとも言える。
あっという間と言えばそうなんですけど、
最初のシングルは
オリコンで10位に入ったものの、
次の曲で苦労したりとか、
やはり、紆余曲折はあったんですよね。 |
オトヤ |
いま、デビューしてから‥‥。 |
岩崎 |
だいたい、5年くらいです。
今でこそ
「こんなかわいい子ばっかり集めたら
売れますよね」
なんておっしゃる方がいるんですけど、
そんな意見を聞くと、
メンバー含めて
ちゃんちゃらおかしいと言いますか‥‥。 |
── |
そうですか。 |
岩崎 |
だって、最初はもう、
泥だらけのダイヤモンドばっかりだった。
だから、初期のころの映像を見せると
「これじゃ売れないよ」って
みなさん、口をそろえておっしゃいます。 |
オトヤ |
そんなにですか。 |
岩崎 |
こう言っては何なんですけど、
輝いている子なんて、皆無だったんです。
さっき舞台の上で、
キラキラと輝いていた女の子たちは、
この5年間に
幼虫がサナギになり、サナギが蝶になって‥‥
そんな子たちばかりなんですよ。 |
|
── |
でも、その競争システムというんですか、
聞くだに過酷ですよね。
大島優子さんが勝ち、前田敦子さんが負けて
話題になった「総選挙」なども
具体的な投票数はもちろん
投票の全体が、丸見えなわけですし。 |
岩崎 |
ドラッカー的な言いかたをすれば、
彼女たち自身、みずからイノベーティブに
変わっていくことが出来ないと、
やはり、ステージには立ち続けられない。 |
── |
ええ、ええ。 |
岩崎 |
とにかく、戦って戦って戦い抜く。
そういうやりかたなんです。 |
── |
はい。 |
岩崎 |
そのあたりの「競争主義的」な部分は
ドラッカーからは
遠いところではあるんですけどね。 |
オトヤ |
あ、そうなんですか。 |
岩崎 |
ドラッカーさんは「適材適所」ということを
おっしゃっていますから。 |
|
── |
有名な「強みを活かす」という話ですね。 |
岩崎 |
「自らや作業者集団の職務の設計に
責任を持たせることが
成功するのは
彼らが唯一の専門家である分野において
彼らの知識と経験が
生かされるからである」‥‥。 |
オトヤ |
なるほど‥‥だからみなみちゃんは、
走るのが得意な選手に
走塁担当の役割を割り当てたのか‥‥。 |
── |
‥‥いま、「もしドラ」って
何万部くらい、いってるんでしょう? |
岩崎 |
電子書籍と合わせて150万部くらいです。
註:2010年11月現在の数字です。 |
── |
ひえ〜‥‥すごい。 |
オトヤ |
ひとつ、お聞きしたかったんですけど
なんでああいう
「萌え〜」な表紙にされたんスか? |
|
岩崎 |
経営層など、今までのドラッカー読者とは
ちがう人たちに届けたいという、
そもそも、そういうコンセプトでしたから。
方向性自体は、
はじめから「萌え〜」だったんですよ。 |
── |
はじめから「萌え〜」。 |
岩崎 |
もちろん、ダイヤモンド社のみなさんは
ビックリされたみたいですけどね(笑)。 |
|
オトヤ |
表紙画は、ゆきうさぎ先生ですよね。 |
岩崎 |
そうです。背景の「多摩の風景画」は
また別の会社に描いてもらってますけど。 |
── |
え、そうなんですか。 |
岩崎 |
「Bamboo」の益城貴昌さんという‥‥。 |
オトヤ |
あ! 『攻殻機動隊』の背景を描いてる? |
岩崎 |
よくご存知ですね。 |
オトヤ |
ええ知ってます! そうなんですか! へえ〜! |
── |
めちゃくちゃ食いついてる‥‥。 |
オトヤ |
だから、あんなにクオリティ高いんスね!
へぇ〜‥‥すっげー! |
|
岩崎 |
お好きなんですね(笑)。 |
── |
そうみたいですね‥‥。 |
岩崎 |
この背景を仕上げるために
発売を1ヶ月以上、延ばしてるんですよ。 |
オトヤ |
いや、その甲斐は
めちゃくちゃあったと思うんスよね! |
── |
オッティ、アニメ好きだったんだ‥‥。 |
オトヤ |
ええ、自分、ケータイもエヴァケータイ
(エヴァンゲリオンの携帯電話)だし。 |
着信音はTV版の「次回予告」のときにかかる、勇猛なマーチ風の音楽。 |
── |
‥‥。 |
岩崎 |
おもしろいですねぇ(笑)。 |
── |
‥‥岩崎さん、
今日は、本当にありがとうございました。 |
岩崎 |
こちらこそ。 |
|
オトヤ |
ありがとうございましたーっ! |
── |
‥‥オトヤさん、満足ですか。 |
オトヤ |
超満足ッス! |
|
|
<終わります> |