糸井 | 久保さんと、森山さんと、ハマケン、 この3人で会うことは何回かあったんですか。 |
森山 | この3人では、ないですよね。 |
ハマケン | うん。 まだぼく、撮影に入ってないし。 |
久保 | 森山さんとは、 この前はじめて対談でお会いしました。 ハマケンさんは、 わたしずっとSAKEROCKのファンで。 みなさん舞台の上の人なのに、 こうして同じ壇上に上がらされてしまって‥‥。 逃げたくてしょうがないです、いま。 |
森山 | そんな(笑)。 |
久保 | そもそも、モテない人の気持ちが みなさんにはわかるのかな? っていう疑問が、正直あるんですよ。 |
糸井 | お、きましたね。 |
久保 | 仕事の話に置き換えたら、 糸井さんにニートの気持ちが ほんとにわかるんだろうか? っていう。 |
糸井 | はい、はい。 |
久保 | 団塊の世代のかたから 「ユー、はたらいちゃいなよ」 って当然のように言われても、 ひきこもりは困るだけなんですよ。 |
ハマケン | ははは。 |
糸井 | そうなんだろうね。 |
久保 | 結婚されてるかたとか、 芸能人のかたとか、 すごく活躍してちゃんとモテている人たちに この作品のことがわかるんだろうかって。 |
ハマケン | なるほど。 |
久保 | だからモテない人にしか理解されない マンガだと思ってたんです、わたしは。 そしたら、なぜかいろんな人に読んでもらえて、 糸井さんみたいな人にまで おもしろいと言っていただいて、 これはどういうことだろうと‥‥。 |
糸井 | モテるって、紙一重ですからね。 |
久保 | 紙一重? |
糸井 | モテる人にも2種類いるんです。 |
久保 | 2種類。 |
糸井 | ひとつは、ヘタな鉄砲を撃ちまくって、 もう、なんていうの、 立てこもりの銃撃する人いるじゃない。 |
久保 | あー、かたっぱしから(笑)。 |
糸井 | そう。あれはモテるんです。 だって、クジをいっぱい引くから。 |
久保 | そうでしょうね。 |
糸井 | モテるってことが仕事というか、 生きがいというか、人生というか。 でも、そのタイプの人はめずらしいんです。 あんまりいない。 |
久保 | はい。 |
糸井 | もうひとつのタイプは、 人を例に出すと話しやすいんですけど、 みうらじゅんのモテ方っていうのあるんですよ。 |
久保 | ああー。 |
糸井 | みうらに直接、訊いたことがあるんです。 「結局さ、受け身でしょ?」 そしたらみうらは、「そうですよ」って。 |
久保 | ははは。 |
森山 | へえー、そうなんですか。 |
糸井 | まず、落とし穴を掘るんです、女が。 |
久保 | わたしたちが。 |
ハマケン | 男が掘るんじゃなくて? |
糸井 | 女性です、掘るのは。 で、みうらみたいな男は 穴を掘られると、落ちるんですよ。 |
一同 | (笑) |
糸井 | で、落ちて、 その落ちている瞬間に 「おまえが好きだー!」って言っちゃえば、 自分が口説いたことになる。 |
久保 | あっ、なるほど! |
糸井 | 周りの人はそこから後しか見てないですから、 その男は「モテた」ってなるんです。 |
久保 | そっかー(笑)。 |
糸井 | そういうことが、このマンガに いっぱい描いてあるじゃないですか(笑)。 この女性たち、みんな穴を掘ってますよ。 |
森山 | ほんとだ。 |
久保 | いや、わたしはただ、 これをこうしか描けなかったから。 |
糸井 | うん。 |
久保 | しかも、童貞のモテない男の気持ちを 想像しながら描いたんじゃなくて、 軸を自分に持ってきて描いたので、 一般的な作品にはならないと思っていました。 |
ハマケン | え、じゃあ幸世(森山さん演じる主人公)は、 久保さんなんだ。 |
久保 | そうです。 自分の生理や考えだけで描いたはずの幸世が、 あとになって答え合わせをしてみたら 案外いろんな人と一致することが多くて、 それはちょっと意外でした。 ましてや、糸井さんが 読んでくださるのかとか思うと。 |
糸井 | ぼくは昔から友だちと こういう話をうんとしてましたから。 |
久保 | そうなんですか。 |
糸井 | うしろ手にドアを閉めて、 カギをかけられるかどうかって問題について。 |
森山 | え、どういうことですか? |
糸井 | つまり、女の子とラッキーな状況になったとして、 そんなときに「しよう」って言って 部屋につれてはこないじゃないですか。 |
森山 | そうですね(笑)。 |
糸井 | ラブを前提に動いてないじゃないですか。 たとえばさ、 マンガを読んでいく? とかさ、 お茶を飲もうよ、とかね。 |
久保 | うんうん。 |
糸井 | なんかウソを言って誘うじゃないですか。 |
森山 | たしかに(笑)。 |
糸井 | そういうつもりがほんとうにないなら、 ドアを開けっ放しにしておくべきなんですよ。 |
森山 | そうですよね。 |
糸井 | 森山さんみたいに、二枚目でもそうですよ。 |
森山 | (笑) |
糸井 | うしろ手にカギを「カチャッ」とかけないと 人がきちゃうんだから。 |
ハマケン | 「カチャッ」の瞬間は、だれにでもある。 |
糸井 | そう。 うしろ手にカギをかけるときっていうのは、 大冒険なわけで。 |
森山 | なるほど。 |
糸井 | カギかけるときの瞬間というのは、 もうニートの気持ちどころじゃないんですよ。 誰もがそうなんです。 |
久保 | ああーー。 (つづきます!) |
(C)「モテキ」久保ミツロウ/講談社 |