愛と言うには  ちょっと足りない。  『モテキ』をめぐる、とても自由な座談会。

第4回 二枚目は、たいへん。

久保 マンガを読んでくださった人の感想には
いろんなのがあって。
「ネットで集めた知識で描いてんじゃないの?」
とか言われちゃったりするんですよ。
糸井 おおー。
森山 そうなんですか?
ハマケン うわぁー。
久保 わしが、どれだけ‥‥
モテないなりに身を削って、
どれだけ、死にものぐるいで‥‥!
一同 (笑)
久保 農作物を育てている気持ちですよ。
糸井 かたい扉の向うの畑でね(笑)。
久保 そうそう、せまい畑を耕して
手に入れたわずかな作物だけでつくった、
そういうマンガなんですよ。
糸井 うーん。
久保さんが身を削ってっていうのは、
わかるはずですよ、わかるよね?
どう? ハマケン。
ハマケン そうっすね、おれは‥‥。
久保 わかんないって言ってもいいんだよ。
ハマケン いやいやいや(笑)。
糸井 ハマケンは意外とモテるのよ。
ハマケン ん?
糸井 これが困るんだよね、
物事をややこしくする(笑)。
ハマケン いやいや、それはともかくですね、
たいへんな思いで
描かれたマンガっていうのはわかりますよ。
──なんか、ぼく、人に言われたことあって。
「自分が望まれなくてもそこに行って、
 ライブする力を身につけろよ」って。
糸井 ほぉ。
ハマケン 幸世には、必要とされなくても出て行く力を
持ってほしくなるじゃないですか、
読んでて。
久保 うん。
ハマケン ほんとに、おれ、
それって重要なことだよなって、
最近ずっと思ってたんで。
久保 ‥‥うれしいです。
ハマケン だから、うーん‥‥
なんか、あの、モテるんですけど。
モテるんですよ、おれ(笑)。
一同 (笑)
久保 知ってますよ。
ハマケン いやいや、だから、
舞台の上にいるからモテるんです。
でもなんか、そういう感じじゃないっていうか、
穴を掘って待ってる女の子には、
おれでいいの? って思ってしまうというか。
久保 (笑)
糸井 わかる、わかるよ。
「おれでいいの?」だらけだよね。
──森山さんはどうですか。
森山さんは、いわゆる三で生きてきたことには
なっていないわけですよね?
森山 え? どういうことですか?
糸井 みんなにうらやまれてますよね、
モテる人として。
森山 ぼくがですか。
糸井 「いいですよね、モテて」
みたいに言われたりもしますよね、ときには。
森山 あはは。
糸井 それは不本意ですか。
森山 そうですね、不本意だから
この役をやりたいと思ってるところもあります。
糸井 おおー、そうですか。
──ぼくは、
モテない二枚目をいっぱい知っています。
ハマケン あ、ぼくも知ってます。
糸井 だから、みんなひどいよね。
二枚目に対して偏見があるよね。
森山 糸井さんの、二枚目の定義って?
糸井 二枚目っていうのは、
黙ってても女の子が寄ってくるだろうと
人に思われている役割ですね。
森山 思われてる役割。
糸井 うん。
森山 じゃあぼくは二枚目じゃないと思います(笑)。
糸井 そうですか。
森山 そこはハマケンと同じで、
舞台に立ってるからこそ保ててるというか。
ハマケン うん。
森山 舞台に立ってないと、存在できないから。
じっとしてて誰かが来るだなんて、
とてもじゃないけど思えないです。
糸井 舞台に立ってないときは別な人なんですか。
森山 いや、舞台に立つことと、
こうやってじっとしてることを含めて
トータルで自分でいなくてはいけない
と思ってます。
逆に言えば、
いま言ったような二枚目の役割を
やらなきゃならない人よりは
モテるのかもしれないですけど。
ハマケン でも、未來くんが出てきたとき、
オレちょっと衝撃を受けたよ。
森山 どういうこと?
ハマケン 『ウォーターボーイズ』とかで出てきたとき、
この顔は二枚目じゃなかった気がしたんですよ。
森山 あははは。
ハマケン でもいま、そうなってるじゃないですか。
糸井 なってるね。
お客をつくっちゃったわけだよね。
──昔で言うと、
ぼくは三浦友和っていう人が
たいへんだなぁと思ってて。
久保 へぇー。
糸井 二枚目だと言われてて。
立場的に、みんなが三浦友和を
きちんと評価する軸を持ってなかったんだよね。
久保 ああー。
糸井 どうやったらちゃんと
評価してもらえるんだろうって、
若いぼくは、人ごとながら考えてたね。
ハマケン 『アウトレイジ』の、ですよね。
糸井 そうです。
だからずいぶん後になってからですよ。
北野武さんもそうだけど、
やっと三浦友和さんの俳優としての軸に
気づいたんじゃないかなぁ。
久保 二枚目は、たいへんですね。
ハマケン うーーん。

(つづきます!)

2010-07-20-TUE


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(C)「モテキ」久保ミツロウ/講談社