久保 | マンガを読んでくださった人の感想には いろんなのがあって。 「ネットで集めた知識で描いてんじゃないの?」 とか言われちゃったりするんですよ。 |
糸井 | おおー。 |
森山 | そうなんですか? |
ハマケン | うわぁー。 |
久保 | わしが、どれだけ‥‥ モテないなりに身を削って、 どれだけ、死にものぐるいで‥‥! |
一同 | (笑) |
久保 | 農作物を育てている気持ちですよ。 |
糸井 | かたい扉の向うの畑でね(笑)。 |
久保 | そうそう、せまい畑を耕して 手に入れたわずかな作物だけでつくった、 そういうマンガなんですよ。 |
糸井 | うーん。 久保さんが身を削ってっていうのは、 わかるはずですよ、わかるよね? どう? ハマケン。 |
ハマケン | そうっすね、おれは‥‥。 |
久保 | わかんないって言ってもいいんだよ。 |
ハマケン | いやいやいや(笑)。 |
糸井 | ハマケンは意外とモテるのよ。 |
ハマケン | ん? |
糸井 | これが困るんだよね、 物事をややこしくする(笑)。 |
ハマケン | いやいや、それはともかくですね、 たいへんな思いで 描かれたマンガっていうのはわかりますよ。 ──なんか、ぼく、人に言われたことあって。 「自分が望まれなくてもそこに行って、 ライブする力を身につけろよ」って。 |
糸井 | ほぉ。 |
ハマケン | 幸世には、必要とされなくても出て行く力を 持ってほしくなるじゃないですか、 読んでて。 |
久保 | うん。 |
ハマケン | ほんとに、おれ、 それって重要なことだよなって、 最近ずっと思ってたんで。 |
久保 | ‥‥うれしいです。 |
ハマケン | だから、うーん‥‥ なんか、あの、モテるんですけど。 モテるんですよ、おれ(笑)。 |
一同 | (笑) |
久保 | 知ってますよ。 |
ハマケン | いやいや、だから、 舞台の上にいるからモテるんです。 でもなんか、そういう感じじゃないっていうか、 穴を掘って待ってる女の子には、 おれでいいの? って思ってしまうというか。 |
久保 | (笑) |
糸井 | わかる、わかるよ。 「おれでいいの?」だらけだよね。 ──森山さんはどうですか。 森山さんは、いわゆる三で生きてきたことには なっていないわけですよね? |
森山 | え? どういうことですか? |
糸井 | みんなにうらやまれてますよね、 モテる人として。 |
森山 | ぼくがですか。 |
糸井 | 「いいですよね、モテて」 みたいに言われたりもしますよね、ときには。 |
森山 | あはは。 |
糸井 | それは不本意ですか。 |
森山 | そうですね、不本意だから この役をやりたいと思ってるところもあります。 |
糸井 | おおー、そうですか。 ──ぼくは、 モテない二枚目をいっぱい知っています。 |
ハマケン | あ、ぼくも知ってます。 |
糸井 | だから、みんなひどいよね。 二枚目に対して偏見があるよね。 |
森山 | 糸井さんの、二枚目の定義って? |
糸井 | 二枚目っていうのは、 黙ってても女の子が寄ってくるだろうと 人に思われている役割ですね。 |
森山 | 思われてる役割。 |
糸井 | うん。 |
森山 | じゃあぼくは二枚目じゃないと思います(笑)。 |
糸井 | そうですか。 |
森山 | そこはハマケンと同じで、 舞台に立ってるからこそ保ててるというか。 |
ハマケン | うん。 |
森山 | 舞台に立ってないと、存在できないから。 じっとしてて誰かが来るだなんて、 とてもじゃないけど思えないです。 |
糸井 | 舞台に立ってないときは別な人なんですか。 |
森山 | いや、舞台に立つことと、 こうやってじっとしてることを含めて トータルで自分でいなくてはいけない と思ってます。 逆に言えば、 いま言ったような二枚目の役割を やらなきゃならない人よりは モテるのかもしれないですけど。 |
ハマケン | でも、未來くんが出てきたとき、 オレちょっと衝撃を受けたよ。 |
森山 | どういうこと? |
ハマケン | 『ウォーターボーイズ』とかで出てきたとき、 この顔は二枚目じゃなかった気がしたんですよ。 |
森山 | あははは。 |
ハマケン | でもいま、そうなってるじゃないですか。 |
糸井 | なってるね。 お客をつくっちゃったわけだよね。 ──昔で言うと、 ぼくは三浦友和っていう人が たいへんだなぁと思ってて。 |
久保 | へぇー。 |
糸井 | 二枚目だと言われてて。 立場的に、みんなが三浦友和を きちんと評価する軸を持ってなかったんだよね。 |
久保 | ああー。 |
糸井 | どうやったらちゃんと 評価してもらえるんだろうって、 若いぼくは、人ごとながら考えてたね。 |
ハマケン | 『アウトレイジ』の、ですよね。 |
糸井 | そうです。 だからずいぶん後になってからですよ。 北野武さんもそうだけど、 やっと三浦友和さんの俳優としての軸に 気づいたんじゃないかなぁ。 |
久保 | 二枚目は、たいへんですね。 |
ハマケン | うーーん。 (つづきます!) |
(C)「モテキ」久保ミツロウ/講談社 |