糸井 | 久保ミツロウさんが漫画のラフで 50ページのストーリーを描いてきて、 それで、どうなるんでしょう。 |
大根 | ぼくが脚本化します。 そしたらまた久保さんが続きをすこし描いて、 ぼくが脚本に。 また10ページ描いてきた、脚本に。 という感じです。 |
糸井 | 漫画を、脚本に。 すこしずつ足していくんですね。 |
大根 | ときどき久保さんが止まっちゃって、 ぼくがちょっと追いこしたり。 |
糸井 | あ、追いこすことがあるわけだ。 |
大根 | 脚本が原作を追いこすって そんなの聞いたことないですけど。 |
糸井 | ないですよね(笑)。 |
大根 | 途中で東宝に第1稿を出さなきゃならないとき、 久保さんの手が止まってたんで、 「ごめん、とりあえずおれ、先行くから。 あとでついてきて」 みたいな感じでいったん最後まで書いて、 あとから久保さんと修正する、という。 「こんなんじゃダメですよ!」 「なんでだよ!?」 「大根さん、わかってない!」 「じゃあ描けよ!」 「描きますよっ!」みたいな。 |
糸井 | はあー、 すごいですね、そのふたりの蜜月ぶりは。 |
大根 | 関係性が最初からよかったと思うんです。 やっぱり原作者っていうのはどこか、 たてまつられちゃうというか。 |
糸井 | 敬して遠ざける、みたいになりますよね。 |
大根 | なりますね、そうなんです。 |
糸井 | ていうことは、 おふたりは打ち合いができるわけだ。 |
大根 | 「これダメじゃん」というのを お互いに言える関係でした、最初から。 |
糸井 | なかなか他にないでしょう、そういうのは。 |
大根 | ない、ですね。 |
糸井 | ないですよね。 聞いたことないですよ、 脚本が原作を追い越したとか。 |
大根 | 追い越したときは、 さすがにどうかと思いましたけど(笑)。 |
糸井 | いや、このふたりならあるんでしょうね。 |
大根 | でも、その‥‥ ぼくが追いこした部分っていうのは、 ドラマ版のヒロインたちの その後のエピソードなんですよ。 |
糸井 | ドラマ版の女性が出てくるんですか。 |
大根 | そう、やっぱりぼくは、 土井亜紀とか中柴いつかとかを もう1回みたかったんですよね。 だからほんとうに、 元カノを忘れられない状態で(笑)。 |
糸井 | ああー、なるほどその話(笑)。 元カノが、 前のドラマのことが忘れられない。 |
大根 | 脚本に書いてたんです、 ドラマ版ヒロインとの再会シーン。 |
糸井 | 書いちゃいますよね、忘れられてないですから。 |
大根 | そんなぼくにくらべて、 森山未來くんは最初からずっと、 「過去のヒロインはぜったいに出しちゃだめだ」 と言ってたんです、一貫して。 |
糸井 | すばらしいですね、そのアドバイスは。 |
大根 | なのにぼくは、 「とはいえ未來くん、 前のヒロインがTVに出てくれば、 ドラマファンはよろこぶよ」と。 |
糸井 | うーん(笑)。 森山さんはなんとこたえましたか。 |
大根 | 「ドラマ版であれだけやり切った彼女たちを もう一回出すというのは、 それは監督、失礼ですよ。 新しいヒロインたちにも失礼です」 |
糸井 | 拍手をしますよ、ぼくは。 すごい発言ですね。 |
大根 | はい。 |
糸井 | 以前、森山さんに会ったときにもぼくは、 この人は若いのに すごいことを言うなぁって思ったんだけど、 今のそれもすごい発言だなあ。 |
(c)2011映画『モテキ』製作委員会 |
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大根 | そうですね。 でも‥‥ドラマ版ヒロインとの再会シーンも、 悪くない脚本だったんですよ。 土井亜紀がまた登場してくる‥‥。 |
糸井 | まだ元カノのことを(笑)。 |
大根 | 最初の脚本にも書いたんで、 一応オファーもしたんですよ。 そしたらみごとに断られました。 |
糸井 | はあー。 |
大根 | 「私たちはやり切りましたから」 |
糸井 | それもつまり、 森山未來さんと同じ意見じゃないですか。 |
大根 | 同じなんですよ。 |
糸井 | かっこいい。 |
大根 | それでもぼくはやっぱり出てほしくて、 「出てよ」みたいなメール出して、 「いや、ほんとにもうムリだから」 みたいな返事がきて。 なんなんだこのメールのやりとりは! |
糸井 | それ、おもしろい(笑)。 |
大根 | 「そんなこと言わないで、頼むよ」 「私はかげから応援してるから」 「いや、でもさぁ」 って、すごいしつこい男みたいな(笑)。 |
糸井 | ああー(笑)。 ドラマの続きだったら、 それはあると思うんですけどね。 |
大根 | そうなんですよ、ドラマなら‥‥。 でもやっぱり、映画『モテキ』という 今カノに向き合わなきゃいけない。 つきあうことは決まってるんだから、 この子のよさを見つけなきゃいけない。 でもぜんぜん見つからないから、 元カノにすがるっていう状態が ずっと続いてたんです。 |
糸井 | すがりたい気持ちはわかります。 でも新しくつくる映画の中に ドラマの元カノを上手にまぜるのは、 そうとう難しいことですよね。 |
大根 | ええ。 だから、今カノのよさを探す作業というのが、 クランクインしてもずっとありましたね。 脚本を書きながら、 撮影を進めながら、 「これ、ドラマよりおもしろいのか?」って。 (つづきます) |