糸井 | ドラマ化される前のころを思い出すと、 『モテキ』のチームはすごかったですよね。 |
大根 | そうですか。 |
糸井 | 「なんだ、このチームは?!」っていう、 うらやましさがありました。 宣伝の勢いが、もう(笑)。 |
大根 | 勢いが(笑)。 |
糸井 | 深夜ドラマの宣伝をするのに、 みんな、ものすごい一生懸命なんですよ。 あの時期の、なんて言うんでしょう‥‥ 力はないけれども、 一生懸命バットを振っている感じは ほんとによかったですねぇ。 風がきましたから。 |
大根 | ブンブン振っといてよかったです(笑)。 |
糸井 | もうブンブン振ってましたよね(笑)。 その制作チームに、 たしか女性の人がいらしたでしょ。 その人がほんとにすばらしくて。 |
大根 | あ、それはえーと、 たぶんこの女性を中心にした スタッフではないかと‥‥。 |
糸井 | あなたですか。 なんであんなにみんな一生懸命になれたんですか? |
女性 | なんででしょう‥‥。 もちろん『モテキ』という作品自体が、 好きだっていうのはあります。 あとは、ツイッターというものが すごくこの作品に合っていて、 みんなでつぶやくのが楽しかったんです。 |
糸井 | 自分たちがたのしかった。 |
女性 | はい。 つぶやいてるうちに自分たちがどんどん、 この作品とチームを好きになるんですよ。 お客さんの反応が、 すごく素直であたたかくて。 友だちがいっぱいいるみたいになるんです(笑)。 |
糸井 | そうだった、見ててそんな感じでした。 |
大根 | ドラマを観たあとなんかは、 ちょっと話したくなるし。 その意味でもツイッターに向いていましたね。 |
糸井 | 漫画だと、読んだ人たち同士が話すのは なかなか難しいんですよ。 テレビドラマになったら 一気にばらまけるから、 同じタイミングで同じテーマの話ができる。 |
大根 | そうですね。 テレビはそこが大きいと思います。 |
糸井 | とはいうものの、 ぼくはまず、漫画で興奮したんですよ。 テレビ東京の女性に メールで教えてもらったんです。 「今度ドラマ化する漫画がおもしろいです」って。 |
女性 | あ、そのメールはわたしが。 |
糸井 | え! そう、あなたですか。 ほんとうにすばらしい人ですね(笑)。 メールを読んで、すぐにピンときて、 漫画を買って、それからですよ。 ドラマもどんどんたのしみはじめて現在に至る。 |
大根 | ありがとうございます。 |
糸井 | DVDもね、買うんです。 一度は観たし、録画もしてあるのに買うんです。 |
大根 | 恐縮です。 こんなにほめられていいのかどうか(笑)。 |
糸井 | いやいや、 まだ映画の話に行ってないですから。 |
大根 | そうですね、そういえば。 |
糸井 | よし、もう、じゃあ、ぴょんと飛んで 映画に行っちゃいましょう。 そもそもが、 終わったはずの話ですよね。 |
大根 | そう、そうなんです。 |
糸井 | 原作者の久保ミツロウさんは、 「これで終わり」とはっきり言ってたわけです。 新しい話を作って映画化という話を、 どう口説いて了解してもらったのでしょう。 |
大根 | ぼくは、原作の終わり方を まったく気に入ってなくて、 「これは久保さん、この終わり方よくない」 って、ドラマのときから言ってたんです。 |
糸井 | ドラマでは最後を変えてますよね。 |
大根 | ええ。だから今回も、 「久保さん終わったつもりでも、あの終わり方じゃ 実は終わってないんじゃないの?」 っていう話はしたような気がします。 「まだぜったい書けるはずだ」って。 |
糸井 | そこまで話すんだ。 |
大根 | 「たとえば1年後にセカンド・モテキがきて、 主人公もちょっとだけ成長してて、 なんか就職して働いてる、 みたいな設定でどうかな」という話をしたら、 「ちょっと考えてみます」と。 |
糸井 | なるほど‥‥。 最初にぼくが素直に思ったのが、 「そうか、映画は別な話なんだ」 ていうところだったんですよ。 これ、いまだにリメイクだと思い込んでる人が いるかもしれないですよね。 |
大根 | そうですね。 |
糸井 | はっきり言っておきましょう。 みなさん、ドラマ『モテキ』と、 映画『モテキ』は、ぜんぜん別のストーリーです。 |
大根 | ありがとうございます(笑)。 |
糸井 | 「ドラマであれだけウケたんだから、 同じストーリーでいこう」という意見も、 会議をしたら出ちゃいますよね、きっと。 |
大根 | 最初にそれを言われました。 「別キャストでもう一回ドラマを 作り直す方法もありますよ」って。 |
糸井 | その選択はなかった。 |
大根 | ないですね。 原作『モテキ』をいちばん愛してるのは 久保ミツロウで、 ドラマ『モテキ』のいちばんのファンは、 ぼくなんです。 だから、それをもう一回やるのはありえない。 やるんだったら、新しいもの。 そうなると、じゃあ新しい話は ドラマを超えられるのか‥‥。 |
糸井 | そこだよねぇ。 |
大根 | それはきつかったですね。 前の彼女が良すぎる、みたいなことで。 |
糸井 | そうだ(笑)、前の彼女が、 つまりドラマがおもしろすぎたから。 |
大根 | 元カノのことを忘れられないのに、 新しい彼女と付き合うっていう(笑)。 |
糸井 | しんどい(笑)。 |
大根 | しかも、映画化しようって言ってるくせに、 ドラマ版にいちばん引きずられてたのは じつはぼくだったりしたんです(笑)。 |
糸井 | それはいけません。 |
大根 | そうしたら久保さんが、 最初の打ち合わせから2週間後ぐらいに、 「ちょっと思いついたんで、 一晩徹夜して書いてみました」と、 50ページぐらいのえんぴつ描きの 漫画のネームを見せてくれたんです。 ニューヒロイン・長澤まさみ演じる、 みゆきと出会って、 「本当のモテキだ、これ!」 というところまで。 それがもう、ものすごくおもしろかった。 前の原作を超えてるくらいおもしろかった。 みゆきというキャラクターの魅力も これまでで最高だと思って、 「あ、これで行ける」と。 |
糸井 | ‥‥すごいですね、久保先生。 ドキドキしてきました。 (つづきます) |