はじまりの儀式。
『MOTHER1+2』は、その名のとおり、
『MOTHER』と『MOTHER2』が
1本になったソフトである。
『MOTHER』と『MOTHER2』は
物語がつながっているわけではないから、
どちらからはじめてもかまわない。
事実、電源を入れると、まず、
「どちらからはじめますか?」
という問いかけがある。
僕がどちらからはじめるかはすでに決めてある。
『MOTHER』からだ。
とくに理由はない。あるとすれば、
「そりゃ出た順番にやるでしょう!
だって、1のつぎが2でしょう!」という
なんだかよくわからない感性以外ない。
くり返すけれど、どっちからはじめてもかまわない。
ちなみに、開発者の糸井重里さんは、
あるときゲームをあまり知らない人から
どっちからやればいいですか、と訊かれて、
「『2』からやれば?」と答えていた。
たぶん、質問してくる人によって
糸井さんの答えは変わるのだろうけど、
どっちからやればいいですか、と訊いてくるような人は
おおむねゲームを日常的にプレイする人ではないから、
より親切で、プレイヤーをもてなす仕掛けの多い、
『MOTHER2』を先に勧めるのだろう。
僕は『MOTHER』を選んだ。
タイトルロゴをしばらく眺める。
音楽がループするまでそのままである。
そこを長く見ることに意味はないけれど、
RPGのはじまりは
ゲームファンを少しばかり神妙な気分にさせる。
僕はこの儀式めいたムードがとても好きである。
ゆったりと始まりのメロディーがめぐり、
青い地球がくるくると回る。
斜線はことごとくドットの輪郭をあらわにしていて、
僕は小さな液晶を見ながら
昔、自分の部屋にあったボロボロのテレビを思い出す。
懐かしいとは思わないけど、
携帯ゲーム機のなかに古いテレビがあるような気がして
すうっとそこへ引き込まれていく。
ひょっとしたら、音楽のせいかもしれない。
ことに、主人公に名前を入力する瞬間は儀式に似る。
僕はいつもゲームに使う自分の名前があるので
それを主人公の名前として入力した。
ほかの友だちたちの名前は
あらかじめ用意されている名前を
そのまま使うことにした。
さて、つぎが第一関門である。
『MOTHER』では
なぜかそのはじまりに「すきなこんだて」を訊かれる。
僕はすでにこのゲームを知っているので
(といっても10年以上前の記憶だ)
そこに入力した「すきなこんだて」が
何に使われるか知っているのだけれど、
知っているからこそ迷ってしまう。
あ、ひとつだけこのページの方針を
書いておきますけれど
できるだけゲームの内容を記すことはしないつもりです。
というのは、僕が、ゲームの内容を話されることを
極端に嫌うためです。
それでプレイ日記が成り立つのかどうかは
僕もちょっと心配しているところですが、
まあ、なんとかなるでしょう。
さて、僕は「すきなこんだて」に
何を入力すべきだろうか。
以前、『MOTHER』をプレイしたとき、
何を入力したかを僕は覚えていない。
何しろそのときの僕は二十歳になって
ようやくゲームの楽しさに目覚めたころで、
人から薦められるRPGを片っ端からプレイしていた。
『MOTHER2』については
覚えていることは多いけれど、
『MOTHER』についてはほとんど記憶がない。
迷ったすえ、僕は『MOTHER2』で
自分が入力していた「こんだて」を入れることにした。
それにしても、『MOTHER2』にしたって
9年前のことで、我ながらそんなことを
よくも覚えているものだと思う。
はじまりの儀式がひととおり終わり、
僕はゲームのなかへ降りていくことにした。
印象的なモノローグが始まる。
また明日。