元ゲーム雑誌の編集者で、
テレコマンとしても活動している永田ソフトが
ここでは永田泰大さんとして
『MOTHER1+2』をプレイする日常をつづります。
ゲームの攻略にはまるで役に立たないと思うけど
のんびりじっくり書いていくそうなので
なんとなく気にしててください。

7月27日

キノコのせい

2番目の街にずいぶん長居してしまった。
ぼちぼちゲームを進行させたいという衝動に背を押され、
街の隣にある偉大なる死の谷へ向かうべく
準備万端で歩き出した僕だったが、
なんとも不本意なことにいまだ同じ街にいる。
こりゃまたどうしたことかと我が身を反省し、
さらなる固い決意を胸に街を出るのだが、
気がつくとまたもとの街へ戻っている。
いわばメビウスの輪の上を進む蟻のように
行くつもりが帰り、進むつもりが戻っている僕である。
結論からいうと、いまだ2番目の街にとどまっている。
のんびりプレイにもほどがあると反省しつつ、
なぜにそこがメビウスと化したのか、
経緯を説明してみたいと思う。

分析するまでもなく原因ははっきりしている。
それは、キノコのせいである。

述べたように2番目の街の隣には偉大なる死の谷がある。
街と谷はトンネルによって結ばれている。
さして長いトンネルではない。しかも一本道だ。

そこにキノコのモンスターが出る。

そのキノコが強くて歯が立たないかというとそれも違う。
いまの僕の力をもってすれば、
キノコのモンスターは一撃のもとに退けることができる。
やっかいなのは、キノコが時折くり出す特殊攻撃である。

キノコはときどき胞子をばらまく。
主人公がその胞子を受けると、
主人公の状態がおかしくなってしまう。

まず、戦闘中の攻撃が自分に当たってしまうことがある。
相手に60ダメージ与えていた攻撃を
自分で食らってしまうことになる。タイミングが悪ければ
自分で自分のとどめをさしてしまうことになる。

やっかいではあるが、これだけならなんとかなる。
戦闘中、こまめに回復すればいいだけの話である。
問題はそのあとだ。

胞子による状態異常は、戦闘後も継続するのである。
具体的にどうなるかというと、
主人公がまっすぐ歩かなくなってしまうのである。

通常、主人公の移動は十字ボタンによって行う。
当たり前の話をわざわざ書いてしまうことになるが、
十字ボタンの右を押すと主人公は右へ動く。
ところが、キノコの胞子を食らってしまうと
十字ボタンによる主人公の移動方向が
ランダムに変化してしまうのである。
十字ボタンの右を押すと主人公が左へ行ったり、
左を押すと下へ行ったりしてしまう。
ちなみに、そういった状態にあるときは、
主人公の頭の上にぽっかりとキノコが生える。

つまり、キノコによる胞子攻撃を食らうと、
主人公は頭にキノコを生やしたまま、
情けなくフィールドを
うろうろする羽目になってしまうのである。

そういった状態になると、主人公の移動は、
十字ボタンの方向が実際の進行方向に
どう作用しているのかを
いちいちたしかめながら進めることになる。
「右を押すと上へ行くということは、
上を押すと左へ行くのだな」というふうに
頭で考えながら進めることになる。

いちいち補足することにあまり意味はないけれど、
十字ボタンによる操作方向の狂いは、
すべてがバラバラになるわけではない。
じつにややこしい説明になることを承知で書くが、
右の反対が左、上の反対が下という
4方向の位置関係は固定のままなのである。
ただ、その基準がおかしくなるだけなのだ。
ええと、要するに何がいいたいかというと、
スーパーファミコンでプレイしていたときは、
「コントローラーをぐるりと持ち変える」
ことによって、キノコによる進行方向の異常を
制御することが可能だったのだ。
十字ボタンの右を押して主人公が左へ行く場合は、
コントローラーを上下逆さまに持てば
思う方向へ移動することができたのだ。
だんだん説明するのが馬鹿馬鹿しくなってきたので
わからないやつは置いていくことにする。
ここはテストに出ないから、興味がある人は
わかってる友だちにあとで訊いてみてほしい。

ともあれ、ゲームボーイアドバンスでプレイしていると、
キノコが生えることはとてもやっかいなことなのである。
それで僕はなかなか2番目の街を
出ることができないのだ、と、
ここに叩きつけてしまえばこの長々としたテキストを
終えることができるのであるが、
我ながら呆れ果てることに
話はまだ半分ほどが終わったばかりである。
第一部完、とはこのことである。
チャンネルはそのまま、とはこのことである。
来週もまた観てくださいね、とはこのことである。
否、こんなわけのわからない話を
2日にわたってお送りするわけにはいかない。
ここまで来たからにはいっそ最後までつき合ってもらう。
オレの酒が飲めねえってのか。
いいじゃん、いいじゃん、始発で帰ればいいじゃん。
毎度話が進まんなあ。

無理矢理に自己を鼓舞して第2部を始めるとすると、
キノコの胞子攻撃はそう頻繁にあるものではないのだ。
何回か戦えば、その攻撃があるまえにやつらを退け、
先へ進むことは不可能ではないのだ。

ならばなぜ僕はそこを突破することができずにいるのか。
原因はキノコの除去方法にある。

なにしろ以前プレイしたのが9年も前のことであるため、
僕は頭に生えたキノコをどうやって除去すればいいのかを
まったく忘れてしまっていた。
こりゃやっかいなことになったぞ、と思いながら、
とりあえず病院に向かうことした。
身体に異常があったらとりあえず病院に行くというのは
リアルとバーチャルを超えた共通の常識であろう。

それで、ふらふらしながら病院へと向かった。
そこでいくらかの金額を払えば
キノコを除去してくれるのだろうなあ、
とか思いながら、苦労して病院に向かった。

ようやくにして病院にたどり着き、
そこにいるヒゲのおじさんに話しかけてみて驚いた。
彼はこう言ったのである。

「そのあたまのうえにはえてる
キノコをうってくれないか。」

驚いた僕はもちろんそのオファーに応えた。
するとおじさんは「じゃ、50ドルで」などと言って
僕の頭のキノコを取り去り、
現金でポンと50ドル渡してくれるではないか!

災い転じて福と成すとはこのことである。
地獄で仏とはこのことである。
奇跡の生還、カメラが捕らえた
歌舞伎町24時とはこのことである。

ひどい目に遭って、
あげくいくらかの金を払わねばなるまいと覚悟して、
そこで訪れた病院で、キノコを取ってもらったうえに
現金までもらえるとは!
前回に述べたように僕は基本的に貧乏性であるから、
この収支逆転現象は思いのほかうれしかった。
こんなにうまい話があるのかと
少々不安になったほどであった。

そうなるとどうなるかというと、
キノコが生えることがうれしくなってくるのである。
ちなみにキノコの買い取りは
病院のおじさんだけでなくトンネルの先にいる
女の子も請け負ってくれることがわかった。
こりゃまたずいぶん便利な場所にいるものである。
ゲームのなかでもあきんどゴコロとはこのことである。

すなわち、僕の行動パターンは以下のようになる。
2番目の街を出発→トンネル→キノコと戦闘→
キノコが胞子→キノコが生えた→キノコを売る→
現金が貯まる→しばらくくり返す→お金が貯まる→
お金が貯まるとセーブしたくなってくる→
2番目の街へ帰る→2番目の街を出発→くり返し。

そのようにして、
僕は2番目の街を出られずにいるのである。
なにしろそのトンネルだけで
レベルが3つも上がってしまった。
当初1800ドルほどだった僕の貯金も
いつの間にか3500ドルを超えてしまった。

いま冷静になってこれを記しながら、
アホか、と僕は言いたい。

2003-07-28-MON