無口な街
このゲームはいつの間にか無口になるのだ。
あの手この手でもてなしてくれていたのに、
気がつくと長い廊下に取り残されているのだ。
仄暗い灯りが遠くにぽつんと点っていて、
僕はもう、そこへ向かって進むしかないのだ。
このゲームはいろんな企てをして
プレイヤーをあちらこちらに振り回すけれど、
本質的には驚くほどオーソドックスなのだ。
いろんな変化球を投げて、
のけぞらせたり、タイミングをずらしたりするけれど、
ここぞというところでは
綺麗なフォームから伸びのある速球を
キャッチャーのかまえたミットに向かって
ぴゅっと投げ込んでくるのだ。
このゲームはお約束を疑い、
盲目的に継承される様式やルールを
いちいち問いつめていくけれど、
「これでいいのさ」と決めたところに関しては
てらいなく王道を踏みしめていくのだ。
「どっちでも好きなほうでいいんだぜ」と、
余裕たっぷりで自由な行動をほのめかしたりするけれど、
ほんとうの自由は
快適なことばかりじゃないと知っているから、
状況によっては突然「こっち!」と叫ぶのだ。
その証拠に、どこかへ向かって急ぐ僕は、
「どうか無事でいてほしい」なんて願っているのだ。
なんて、オーソドックス。
あらためてことわるまでもないことだけれど、
この日記はどんどん不鮮明になっていく。