2011年3月11日、東日本大震災がおきました。
10年が経った今日、私たちは、
あの日を思い出したり、
区切りを感じたりするのかもしれません。
日本に住む私たちはそれぞれ、
ここに至る道のりを一歩ずつ進んできました。
今日がほんとうは特別な日ではない、
ということもわかっています。
しかし、どんなに関わりが少なかったとしても、
あの震災に暮らしを左右されなかった人は
いないんじゃないだろうかとも思います。
ほぼ日が親しくしている方々に、
この10年をテーマに、ご寄稿いただきました。
斉藤和枝さん
ずっと道の途中にいるだけで、
10年で何かできたわけではないと思います。
ですが、振り返ると
お世話になった、大恩のある方々のお顔が
次々と浮かびます。
これまで経験したことのないボリュームで
たくさんの方に助けていただき、
声をかけていただきました。
大声でありがとうございます。と心から叫びたく、
世話になったことを忘れないでいたいです。
ほぼ日さんにも会えました。
さんま寄席からはじまって、
様々な場面で仕事に混ぜていただけた学びは
私たちの考えの底を流れるように堆積し、
大きな影響をいただきました。
感謝しているというだけでは全く足りないのです。
震災で身一つになってから
かっこつけても仕方がない、ありのまましかないのだと
諦めるようになったことが
だいぶ楽にしてくれました。
今思うと
こんなのでは恥ずかしいとか、
進もうと思っても、
さっぱりわからないことばかりだとか
それでも
これしか中身がないのだから、
そこから始めるしか仕方がないと思えました。
震災前は東京のフィルターを通すと
俄然、かっこよくなると思っていました。
都会への憧れとコンプレックスが
自分たちを励ましてもくれたのかもしれないのですが
なんだか、どこか自分の腹の中で
怒っていたように思います。
ひとの話を見聞きし、体を動かし
正味の自分たちの腹の中から考え、
自分たちの手でつくり、
自分たちの言葉で伝えたいと思っています。
年齢のせいもあるかもしれないけれど
コンプレックスや、
できる人と比べて残念に思うことは
ようやく溶けかかり
地味だけれど、ここにあるということが
心底、嬉しいです。
それは若い人が、来てくれたことも
大きいと思っています。
出会えた、恩のある皆様に
瑞々しいものを、風が吹いてくるように届けて、
少しでも喜んで頂けるよう
頑張りたくてたまらないのです。
自分たちの手の中に、
磨けばいいものがいっぱいあるぞと思っています。
お話はずっと「つづく」です。
斉藤和枝
<斉藤和枝さんのプロフィール>
大正10年からつづく「斉吉商店」の専務。
斉吉商店は看板商品「金のさんま」「斉吉海鮮丼」をはじめ
新鮮な魚介を使った加工品を販売、
おいしさに魅了されたファンを全国に持つ。
オンラインショップで販売される季節商品は
毎回すぐに完売してしまうほどの人気。
「気仙沼つばき会」「鶴亀の湯・鶴亀食堂」への参加など、
気仙沼を盛り上げる活動も行う。
斉藤和枝さんのTwitter:@kazuesaitou
ほぼ日のこれまでのインタビューコンテンツ:
「気仙沼は不思議な港町だった。」
「『気仙沼のほぼ日』を、お開きにします。」
「東北の仕事論。」など。
(つづきます)
2021-03-11-THU