2025年1月10日に全国で公開される
松重豊さん監督・脚本・主演による映画
『劇映画 孤独のグルメ』。
飯島奈美さんと7days kitchenのみなさんが
フードスタイリングを担当している作品です。
‥‥しかーし! この映画、じつは
「ほぼ日」の「SUPER LIFE MARKET」も
かかわっているんです。
飯島奈美さんと「lelill」デザイナーの児玉洋樹さんと
いっしょにつくった3つのエプロン
「シャツエプロン」「ジレエプロン」「ジップエプロン」が
なんと、劇中に登場するんです。
それも、けっこうたくさん!
「ぼくらがつくったエプロンが出てる!!」と、
試写会を観た児玉さんの感動たるや‥‥。
ネタバレになることは話せませんが、
そんな児玉さんといっしょに、飯島奈美さんに、
映画の舞台裏のことなどをお聞きしてきました。

  • 児玉
    『LIFE』チームといっしょに
    『劇映画 孤独のグルメ』を試写で拝見しました。
    もう、うれしくてうれしくて。
    ものがたりも面白かったし、
    飯島さんのフードスタイリングもすばらしいし、
    話したいことはいっぱいあるんですけれど、
    なによりもまず‥‥エプロンですよ、僕は! 
    飯島
    はい、エプロンですよね。
    児玉
    あんな登場の仕方! 
    ネタバレになるから言えないことが多いんですが、
    もう、僕、エプロンが出てきたとき、
    座席から座ったまま飛び上がっちゃいました。
    「内田有紀さんが着てくれている~!!!」って。

    飯島
    ほんと、すごいことですよね。
    でも思えば、児玉さんには無理を言ってしまって。
    監督から、児玉さんといっしょにつくったエプロンを
    劇中の衣裳で使いたいというお話をいただいたときは、
    「シャツエプロン」はまだ、開発中でしたね。
    児玉
    そうなんです、まだサンプルしかなかった時でした。
    なのに「これを映画に使いたい」って。
    1年半くらい前のことですよね。
    どういうことなんだろうと思って。
    飯島
    そうですね。2023年の10月頃でした、撮影は。
    児玉
    ジップエプロンやジレエプロンなら、
    現場で7days kitchenのみなさんが着ているだろうから、
    採用されるチャンスがあったのかと思っていたんですが。
    飯島
    なぜ私がシャツエプロンのことを
    言っちゃったかっていうと、
    まさしくぴったりなシチュエーションがあったんです。
    私は脚本を読んでいたので、
    「このシーンにはシャツエプロンが似合うなあ」って。
    それで監督に「実は‥‥」って。

    児玉
    それが衣裳として採用になり、
    「撮影は1ヶ月後であと10枚必要です」と。
    あの時、僕、奈美さんに、
    「じゅ、10枚ですか???」って、
    ものすごく驚いた顔をしたと思うんです。
    飯島
    覚えてます、そうなんですよ。
    児玉
    でもね、試写を見たら、
    むしろ10枚でよく足りたな、と思いました。
    これもネタバレになるから
    詳しく言えないんですよね。
    「10枚じゃ足りなかったかもしれないくらい、
    たくさん使ってくださっていた」
    ということです。
    飯島
    ほんとうにありがとうございました。
    たいへんだったんですよね。
    児玉
    パターンも正式に出来上がっていない
    開発中のタイミングでしたから、
    すぐに完成品を10枚作るって、ありえないんですよ。
    でも僕としてはほんとうにうれしい話だし、
    「もちろん、いけますよ!」って言ってから、
    必死になって製造をすすめました。
    それでよくよく話をきいたら、
    作品は『劇映画 孤独のグルメ』といって、
    主演の松重豊さんが監督と脚本もつとめているって。
    ということは、松重さんが僕のつくったエプロンを
    気に入ってくださったってこと?! って。
    飯島
    そうなんですよ。
    児玉
    飯島さんってフードスタイリストじゃないですか。
    でもこういう相談も受けているんですか。
    飯島
    いえいえ、めったにないんですけれど、
    たまに「こういう飲食店の衣裳を探している」
    というような相談を受けることはありますね。
    児玉
    そうなんですね。
    しかもジレエプロンやジップエプロンも
    劇中で使ってくださって。
    飯島
    あっちは、7days kitchenにある私たちの私物と、
    「ほぼ日」さんにあるサンプルを集めて、
    なんとか数をそろえたんですよ。
    だから、実際に私たちが着ているものを
    映画の中で役者さんが着ていたりするんです。
    松重さんって、私服もとっても素敵なんですよ。
    そんなセンスのいい監督に、
    使いたいって言ってもらえるなんてと、
    私たちもうれしくて、
    なんとか応えたいなっていう気持ちでした。
    児玉
    うれしいなあ。
    飯島
    ありがとうございました、その節は。
    児玉
    いやいや。間に合ってよかったなって、
    試写を見て思いましたよ。
    飯島さんが担当なさったお料理は、
    具体的には、たとえば内田有紀さんが登場する
    島を舞台にした場面ですか。
    飯島
    そうですね。
    内田有紀さんが暮らしている場所は
    「とある島」なんですが、
    小さなコミュニティということで、
    それを意識した料理を考えました。

    児玉
    深いですね。
    フードスタイリングの仕事って、
    そういうアイディア出しもなさるんですね。
    飯島
    そうですね。
    このシチュエーションのメニューを考えてください、
    という依頼から始まるんですが、
    考えた料理は、どうしてそれがいいと思ったか、
    背景や理由まで説明します。
    児玉
    主人公の井之頭五郎が「あるスープ」を探すことが
    この物語の軸になっていましたが、
    あのスープにも飯島さんが関わっているんですか。
    これ、あんまり言っちゃダメって言われてるんですが。
    飯島
    そうですね、関わってるというか、
    アイデア出しに参加させていただいたという感じです。
    「ほぼ日」で「おだし」をつくったことや、
    松重さんと一緒に釜山に行かせてもらったこと、
    前年に行ったパリで飲んだスープの経験などが
    すこしは役に立ったかな、という感じです。
    おだしがちょうど出来たタイミングで、
    松重さんに飲んでいただくことができたりもして。
    いろんなことが絶妙なタイミングで起こりました。
    児玉
    すごい!
    飯島
    そういうことってあるんですよ。
    『真実』っていう是枝監督の映画で、
    シチリアのデザート「カッサータ」を
    つくることになった時、
    イタリアの航空会社に勤めていた
    カメラマンのヤヨイさんっていうお友達に
    電話をしたんです。
    以前、ティラミスのつくり方を教わったことがあるので、
    カッサータもわかるかな? と思い電話をしたら
    「今ちょうどシチリアにいて、
    日本人お菓子の専門家のお友だちが横にいるから
    聞いてみるね」って。そして、
    「カッサータの型を買って日本に戻るね」
    とまで言ってくれて。
    児玉
    すっごい、そのタイミング。
    飯島
    けっこうあるんです、
    料理の仕事に関しては、そういうことが。
    児玉
    すごいなあ。
    『孤独のグルメ』の話に戻るんですが、
    エプロンのスタイリングもすばらしくて。
    ちゃんと、タオルかな、掛けてくれてましたね。
    あの絵を見た瞬間にもう拍手でした、心の中で。
    飯島
    衣裳のスタイリストさんがエプロンに合わせて、
    タオルをスタイリングしてくださったんです。
    素敵でしたよね。

    児玉
    超、嬉しかったですよ。
    さらにジップエプロンを内田有紀さんが
    けっこう長い時間着てくださってましたね。
    景色も含めてめっちゃくちゃ印象に残りました。
    飯島
    かっこよかったですね。
    普通の首掛けのエプロンとはちょっと違うのが、
    きっと、よかったんですよね。
    児玉さん、私たち、いいものを作りましたね!
    児玉
    ありがとうございます。冥利に尽きる。
    ほんともう1回映画館に見にいきます。
    僕、井之頭五郎さんと胃袋がシンクロしちゃって、
    冒頭からどんどんおなかがすいちゃって、
    グウグウ言わせてました。
    物語の中にもちゃんと、TVの『孤独のグルメ』の
    あの雰囲気が入ってるんですよね。
    ‥‥って、もうこれ以上は言えないですよね。
    「ハラをすかせて劇場にどうぞ」って感じですね。

    飯島
    ふふふ。
    児玉
    物語としても、すごく楽しめて。
    試写会のあと、「ほぼ日」のみなさんと
    腹が減ったとごはんを食べたんですが、
    「ぜんぜん違うけど『かもめ食堂』を
    観終わったときの感じに似ている」って
    誰かが言って。
    大人のおとぎ話で、ご飯が美味しそうで。
    飯島
    わかる気がします。
    児玉
    そうそう、調理の音や食べる音が、
    ASMRっていうんでしたっけ、
    ものすごく食欲を刺激するんですよね。
    あの音でお腹がすく。
    飯島
    音は大事ですよね。
    児玉
    しかも井之頭五郎の食べ方がきれいな上に
    ほんとに食べてるリアリティがある。
    たまらなかったですよ。

    飯島
    以前、糸井さんとの対談でもお話しなさってましたが、
    松重さん、1つの料理を最初から最後まで
    ちゃんときれいに召し上がるんですよ。
    こういう撮影って、同じものをいくつかつくって、
    それを取り替えながら、
    撮影のセッティングも変えて、食べ進めるんですけど、
    『孤独のグルメ』は、出来立てを1回だけ。
    フードスタイリングの立場からしたら、
    ああ、湯気がなくなっちゃった、
    ここでアツアツの別のお皿を出したいな、
    と思ってしまうんですけれど、
    それよりも、つながりを大事になさっているんですよね。
    TVの撮影で慣れているチームなので、
    角度を変えて撮るときも、
    セッティング変更がすごく早いんです。
    ラップをかけるひまもないくらい。
    児玉
    そうなんですね、面白いなあ。
    制作裏話、もっとお聞きしたいんですけれど、
    ネタバレしちゃいけませんから、このあたりにします。
    ところで飯島さんがフードスタイリングを担当した映画は
    ほかにも公開される予定があるんですか?
    飯島
    これも2023年に撮影したんですが、
    『敵』 っていう映画のフードスタイリングをしました。
    この映画、東京国際映画祭で
    東京グランプリ/東京都知事賞、最優秀監督賞、
    最優秀男優賞を獲ったんですよ。
    さらに是枝監督の『阿修羅のごとく』もあります。
    児玉
    すごい! 公開ラッシュですね。
    飯島
    ぜひご覧になってください。
    児玉
    ハイ! 拝見します。
    飯島さん、ありがとうございました。
    飯島
    こちらこそ、ありがとうございました!

    『劇映画 孤独のグルメ』
    2025年1月10日(金)全国公開


    原作:『孤独のグルメ』
    作/久住昌之・画/谷口ジロー(週刊SPA!)
    監督:松重 豊
    脚本:松重 豊  田口佳宏(「孤独のグルメ」シリーズ)
    松重 豊
    内田有紀 磯村勇斗 村田雄浩 ユ・ジェミョン(特別出演)
    塩見三省 杏 オダギリジョー
    ©2025「劇映画 孤独のグルメ」製作委員会