アリのおしゃべりを解明する研究や
日本におけるヒアリの水際対策の第一人者、
九州大学の村上貴弘さんが、
なんといま、宇宙飛行士に挑戦しています。
なぜアリの先生が? なぜ50歳を超えて?
そんな疑問はぜんぶ、
「夢」ということばが吹き飛ばしてくれます。
JAXAが実施する宇宙飛行士候補者の
選抜試験に挑戦中の村上貴弘さんから
原稿が届く、毎週木曜日の連載です。
地球の裏側までアリを研究しに行く先生が、
地球から離れる日がやってくるかも?
どうか、宇宙へ飛び立つその日まで‥‥!

>村上貴弘さんのプロフィール

村上貴弘 プロフィール画像

村上貴弘(むらかみ たかひろ)

九州大学
「持続可能な社会のための決断科学センター」准教授。
1971年、神奈川県生まれ。
茨城大学理学部卒、
北海道大学地球環境科学研究科博士課程修了。
博士(地球環境科学)。
研究テーマは菌食アリの行動生態、
社会性生物の社会進化など。
NHK Eテレ「又吉直樹のヘウレーカ!」ほか
ヒアリの生態についてなどメディア出演も多い。
近著に『アリ語で寝言を言いました』(扶桑社新書)、
共著に『アリの社会 小さな虫の大きな知恵』(東海大学出版部)など。
ほぼ日ではこれまでのコンテンツで、
特定外来生物のヒアリについての知識や
ハキリアリのおしゃべりについて解説いただきました。

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最終回 5年後に向けて

宇宙飛行士選抜試験への
チャレンジを終えたぼくには
ある手応えがありました。

高校生の頃には全く苦手だった英語が
そこそこできるようになっていました。
海外で苦労した経験が
少しは役に立ったんだなぁと思いました。
それから、50代であっても体質は改善するし、
運動機能も向上する余地があることは
大きな励みになりました。

逆に、思ったよりも
できていなかったことは数学です。
高校時代はそこそこ得意科目だったのに、
JAXAで応募要項が発表された
2021年12月20日から勉強をはじめても、
半年では全く間に合いませんでした。
こんなにも解き方を忘れるものなのか
と愕然としました。
物理はほとんど勉強したことがなかったのですが、
意外に解けて面白かったです。
ただ、試験のレベルが想定より少し難しくて、
解けなかったのは心残りです。

1次試験までは通過したかったけれど、
2次試験まで行かないとJAXAに行けなかったし、
体力測定もないので
そこまでは行きたかったですねぇ。
残念です。

今後のことですが、
まずはアリの音声コミュニケーションに関する論文を
早々に発表できるように、
着実に準備を進めています。
研究はしっかり進めて、
宇宙空間でのアリ類の社会性の維持に関する研究に
繋げていきたいと思います。

そう、
ぼくのチャレンジはまだ続きます。
JAXAでは5年後に再度募集があるという話も
耳に入っております。
5年後なら、ぼくもまだ56歳。
ギリギリ挑戦できる年齢かなと思っています。
そのためにも継続して体調管理、運動機能向上、
勉強、そして研究を頑張っていこうと思います。

ほぼ日の読者のみなさま、
残念ながら、今回の挑戦は
0次試験の最後で終わってしまいましたが、
次の機会に向けて頑張ろうと思います。
世界の状況がどう変化しようと、
純粋な好奇心をなくすことなく、
コツコツと頑張っていきます。
これからもアリの研究も含めて、
応援よろしくお願いします!
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!

(この連載は、以上でおしまいです。
またいつか、新たな挑戦の際にはぜひ!
村上さんへの感想や励ましのメールもお寄せください)

2022-07-21-THU

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  • 村上貴弘さんの過去のコンテンツ

    正しく恐れるためのヒアリ講座

    アリがしゃべった!