世界一のジャズプレイヤーを目指す
主人公・宮本大の成長を描いた
大人気漫画「BLUE GIANT」は、
ふたりの作家によって紡がれてきました。
ひとりは会社員生活から一転、
28歳で漫画家を志したという石塚真一さん。
もうひとりは石塚さんの元担当編集者で、
現在はストーリーディレクターとして物語を支える
NUMBER 8（ナンバーエイト）さんです。
「BLUE GIANT」好きなお客さんを前に、
糸井重里がたくさんの質問をふたりにぶつけました。
音が出ない漫画というメディアで、
ふたりはどのようにジャズを表現しているのか。
80人限定のトークイベントのようす、
テキストでたっぷりおたのしみください。
石塚真一（いしづか・しんいち）
漫画家
1971年茨城県生まれ。
会社員を経て、独学で漫画家を目指す。
2001年に『This First Step』でデビュー。
2003年から2012年まで連載した
『岳 みんなの山』で数々の漫画賞を受賞。
2013年より『BLUE GIANT』の連載がスタート。
シリーズ累計1200万部突破する大人気作品になる。
現在はNY編の『BLUE GIANT MOMENTUM』が
ビッグコミックで連載中です。
NUMBER ８（ナンバーエイト）
漫画原作者・編集者・脚本家
『BLUE GIANT』の連載開始時から
担当編集として石塚氏を支え、
ヨーロッパ編『BLUE GIANT SUPREME』からは
ストーリーディレクターとして制作に関わる。
映画『BLUE GIANT』では脚本を担当。
作品に登場する雪祈を主人公にした
『ピアノマン～BLUE GIANT 雪祈の物語～』では
小説家デビューを果たす。
- 糸井
- 漫画の中にすごい悪いやつを出したりすると、
盛り上がりが作れると思うんですけど、
それ、おそらく避けてますよね。
- NUMBER 8
- 単純に石塚さんが描けないんです、悪い人。
- 石塚
- ハハハハハ。
- NUMBER 8
- なぜか悪い人が描けない。
- 石塚
- 昔から描きたいなとは思うんですけど、
いい人になっちゃうことが多くて。
なんなんでしょうね。
- 糸井
- 先輩の漫画家は描いてらっしゃいますよね。
浦沢さんとか、手塚さんにしても。
- NUMBER 8
- 描いてます、描いてます。
- 石塚
- ぼく、これまでの人生で、
まわりに悪い人というか怖い人がいると、
行動原理はひとつで、逃げる（笑）。
- 糸井
- そうか（笑）。
- 石塚
- もうそれが出ちゃってるんでしょうね。
悪い人からなんか逃げちゃう。
先輩漫画家の方々は向き合ってますけど、
なんでかぼくは描けないですね。
- 糸井
- その辺、NUMBER 8さんは
いろんな漫画家の方と
お会いになってると思うんですけど。
- NUMBER 8
- うーん、なんなんでしょうね。
これはもう生まれつきというか‥‥。
- 糸井
- 生まれつき。
- NUMBER 8
- ぼく一度、石塚さんのお母さんに
そのことで聞いたことがあるんです。
どんな子どもだったら、
こんなふうになっちゃうんだろうと思って（笑）。
- 糸井
- おぉー（笑）。
- NUMBER 8
- そしたらやっぱり、
小さい頃からケンカが嫌いだったそうで。
やっぱりそうなんだなって。
長い間いっしょにお仕事してますけど、
ぼくが石塚さんに怒ることはあっても、
石塚さんがぼくに怒ったことって一度もないんです。
- 石塚
- ないかぁ。
- NUMBER 8
- あっ、１回あったかも。
- 石塚
- あった？
- 糸井
- それはどういうとき？
- NUMBER 8
- 旅行かなにかで朝ごはんをいっしょに食べてて、
石塚さんが納豆をすっごい混ぜるんです。
で、ぼくが「それ混ぜすぎじゃない？」って言ったら、
石塚さんの目が一瞬すごい怖くなって。
- 会場
- （笑）
- 石塚
- それは怒ったかもね（笑）。
- 糸井
- いまの覚えてます？
- 石塚
- いや、覚えてないですね。
覚えてないけど、やっぱりたまには。
- 糸井
- 納豆はやっぱり30回以上は混ぜないと（笑）。
- 石塚
- 混ぜたいタイプですね（笑）。
納豆ラブなんで。
- 糸井
- 納豆を食べ続けると、
なんかいいんじゃないですか？
- NUMBER 8
- 人に優しくなる（笑）。
- 石塚
- たぶんそうだよ。
だって食べないでしょう？
- NUMBER 8
- いやいや、ぼくも食べますよ（笑）。
- 会場
- （笑）
- 糸井
- でも、悪い人が描けないとか、
そういう個性があると漫画家に向いてないよって、
ちょっとは思いかけますよね、ふつう。
- NUMBER 8
- でもそこは石塚さんのいいところでもあって、
描けないものがあるけど、
その分、演奏とかポージングとか、
そっちの表現はものすごく描こうとする。
だから悪い人が描けなくても、
別にいいんじゃないかなと思うようになりました。
- 糸井
- これからも悪い人は出ない？
- 石塚
- どうする？ 出す？
- NUMBER 8
- そろそろ挑戦してみますか。
- 石塚
- そろそろ、悪いやつをね。
- 糸井
- 例えば、悪い人の側を主人公にしちゃったら、
その人をよく見るようにするから、
悪くても描けたりするんじゃないですか。
ぐるーっと視点を180度まわしちゃって。
- 石塚
- あぁー。
- 糸井
- こいつほんとうはいいやつなんだよっていう、
悪い主人公の漫画を描けば。
- 石塚
- そっか、なるほど‥‥ヨシッ！
- NUMBER 8
- えっ、いけますか？
- 糸井
- もしや！
- 石塚
- 俺、こんな軽く言っていいのか（笑）。
- 糸井
- ぼくもいまデタラメに言ったことですけど、
そんな漫画あったらめっちゃ読みたいですよ。
『ダークナイト』って映画あったじゃないですか。
悪役を主人公にした、
ヒース・レジャーが出てるやつ。
- NUMBER 8
- はい、ジョーカー役の。
- 糸井
- そうそう、ジョーカー。
あれ、すっごいすてきな悪役じゃない？
- NUMBER 8
- じつはあれ、ぼくが一番好きな映画で。
- 糸井
- え、そうなの？
- 石塚
- 俺、ちょっと席外そうか（笑）。
- 会場
- （笑）
- 石塚
- いまのはほんとうの話で、
NUMBER 8さん、あの映画が大好きなんです。
- 糸井
- ぼくも好きなんです。
彼、めっちゃ悪いですよね。
- NUMBER 8
- 悪いんですよ。
理屈がない感じというか。
もう底が見えない感じがすごくて。
- 糸井
- あいつを好きな人があいつを主人公にしたら、
悪い側からでも
描けるんじゃないかなと思ったんです。
- NUMBER 8
- 石塚さん、あの映画好きですか？
- 石塚
- 俺はね‥‥まあまあ。
- 糸井
- まあまあ（笑）。
- 石塚
- 俺、顔に化粧するやつ、
よく分かんないんだよねぇ。
- 会場
- （笑）
- NUMBER 8
- はははは。
- 石塚
- 俺、顔に化粧してる時点で逃げちゃうもん。
だって、よくわからないもん。
なんかすみません、こんなんで（笑）。
- 糸井
- いやいや、素敵だと思います。
むしろ問題が整理されているところに、
いまとても感心しました。
（つづきます）
2023-12-11-MON
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大ヒット映画『BLUE GIANT』が、
いよいよおうちでもたのしめます！
Blu-rayスペシャル・エディションには、
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初日の舞台挨拶などの特典映像を収録。
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