
テレビや映画ですてきな芝居をしてるあの人の、
舞台での姿はご存知ですか!?
‥‥と言いたくて言いたくてたまらない
演劇ライター、中川實穗です。こんにちは。
今回は、瀬戸康史さんにお話をうかがいました。
ドラマや映画、CMなどで
活躍している印象が強い俳優さんですが、
実は、十代の頃から定期的に
舞台に立ち続けていて、
そこでの瀬戸さんには、
際立った魅力があるのです。
そんな瀬戸康史さんに、
舞台で輝いて見えるのはなぜかと聞いてみると、
キッパリと飾らない言葉が返ってきました。
舞台にルーツを持つ瀬戸さんのお話、
ぜひ読んでみてください。
瀬戸康史(せと・こうじ)
俳優
1988年5月18日生まれ、福岡県出身。
2005年、「第2回D-BOYSオーディション」で
準グランプリを受賞。
同年12月に俳優集団D-BOYSに加入し、
芸能界デビュー。
2008年に『仮面ライダーキバ』で人気を集め、
以降、舞台、映画、
テレビドラマと幅広く活躍。
舞台『関数ドミノ』にて
第72回文化芸術祭演劇部門新人賞、
映画『愛なのに』で
第44回ヨコハマ映画祭主演男優賞を受賞。
俳優業以外にも、
地元である福岡県嘉麻市との共同プロジェクト
「SETO×KAMAプロジェクト」のオリジナルキャラクター
「カマシカちゃん」など、イラスト制作も行う。
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- ──
- もともとあった舞台への苦手意識というのは
どういうものだったのですか?
- 瀬戸
- 「演出家さんが
100%いいっていうものを出さなきゃいけない」
ってずっと思ってたんですよね。
- ──
- 答えみたいなものが先に決まってる
と思っていたんですかね?
- 瀬戸
- そう、そしてそれを出さなきゃいけないっていう
変なプレッシャーみたいなものがありました。
あとは「同世代の役者に
できないって思われたくない」とか。
でもまあ、なんでそんなこと考えてたんだろうと
いまでは思いますけどね。
- ──
- D-BOYSみたいな俳優集団の中にいると
そういうふうに考えることは
ありそうな気がします。
- 瀬戸
- そこにもうちょっと早く気づけていたら、
とか考えたりもしますけど、
そういう経験があってよかったなと思います。
だから事務所にはめっちゃ感謝しています。
- ──
- ちなみに映像でのお芝居でも
そういう感情はあったのですか?
- 瀬戸
- ありました、同様に。
でも舞台のほうがやっぱあったなと思います。
毎日稽古がありますしね。
ただ、そういうことを考えなくなってからはもう
舞台でも映像でも
「た~のしいっ!」って感じです。
- ──
- (笑)。どういうことが楽しいですか?
- 瀬戸
- 現場でひとつひとつつくりあげていくこと。
舞台だったら、
なにもないところから
どんどん動きが決まってきたりとか、
稽古場に「ソファーが入りました」
「じゃあ、そこでやってみよう」とか、
「なんかここにテーブルが
あったほうがいいかも」とか、
そういう、ひとつひとつをみんなでつくっていく
という作業がすごく楽しい。 - 逆に映像の場合は、
撮影現場に行ってみないとわからないんですよ。
だから、「あ、ここに座れる場所があるんだ。
だったらこういうことができるな」
みたいなワクワクがあります。 - じっくり(=舞台)と、
ちょっと瞬発力が必要な感じ(=映像)と、
どっちも楽しいですね。
- ──
- 瀬戸さんは以前、
舞台と映像でのお芝居の違いについて、
「声の大きさが違うくらいで、そんなに変わらない」
とおっしゃっていましたが、そういうものですか?
- 瀬戸
- 僕はそうだと思ってるんですけどね。
声の大きさはやっぱり、
映像と舞台もそうですけど、
250人キャパの劇場と1,000人キャパの劇場でも
まったく違いますから。
そこを切り替えていけばいいだけで、
お芝居の感じはあまり変わらないかなと思ってます。
- ──
- 個人的な印象ですが、
瀬戸さんって役柄とは別のところで、
テレビドラマでは誠実さ、
舞台だと縦横無尽さを感じています。
そういう違いとかないですか?
- 瀬戸
- 舞台ではトリッキーなこともできるのが
おもしろさではありますね。
あと最近は舞台で
そういう役を振られることも多いです。
『陥没』(2017年)という作品で、
KERAさん(劇作家・演出家の
ケラリーノ・サンドロヴィッチさん)から
すごい役をいただいたんですよ。
- ──
- 観ました。
井上芳雄さんの弟役で、
けっこう変わった青年ですね。
- 瀬戸
- KERAさんとはあれが初めてだったんですよ。
俺のどこ見て、
あの役を振ろうと思ったんだろうっていう‥‥。
- ──
- ははは!
すがすがしかったです。
- 瀬戸
- あの役は僕も気持ちよかったです。
新たな自分が発見できたなと思いました。
三谷さん(劇作家・演出家の三谷幸喜さん)も、
KERAさんとまたちょっと違う
僕の抜けたところを見つけてくださいました。
『笑の大学』(2023年)もそうですし、
『鎌倉殿の13人』(2022年)でも
当て書きをしてくださって。 - だからそういう(縦横無尽さの)部分は、
自分で見つけるというよりも
作家さんとか演出家さんが
掘り起こしてくださることが多いなと思います。
- ──
- 『陥没』の瀬戸さんを観たとき、
「ああ、こんな俳優さんだったんだ」
と思ったんですよ。
- 瀬戸
- いやそれ、僕も思いましたもん。
「俺ってこんな感じなんだ」。
- ──
- (笑)
- 瀬戸
- でもやっぱりそういう役を振ってもらえるというのは
期待されてるってことだと思うので、
その期待には応えたいです。
応えられなかったら怖いな
っていう不安ももちろんありますけどね。
『陥没』のときは、稽古が始まって2週間、
僕の役が登場しなかったんです。
- ──
- 中盤から出てくる役でしたもんね。
- 瀬戸
- しかもKERAさんは
稽古中にも脚本を書き進める方なので、
いつ自分が登場するかわからない、
というのもおもしろかったです。
なんか俺の役の名前だけは出るんですよ。
「清晴」って役だったんですけど、
「清晴はこういうやつで」みたいな。
で、どんどんハードルだけが上がっていく。
だからもう、
出るときはすごく緊張したのを覚えてます。
- ──
- 評判ばかりが先走って(笑)。
- 瀬戸
- そうそう(笑)。
同じKERAさんの
『ドクター・ホフマンのサナトリウム
~カフカ第4の長編~』(2019年)では、
稽古の途中で「あ、俺、双子なんだ」って知りました。
- ──
- しびれますね!
- 瀬戸
- でもそういうスリルのある稽古も大好き。
これも舞台でしかできないから。
最初から台本ができていて、
緻密に計算しながら
稽古していくのもおもしろいですけどね。
- ──
- スリルを大好きと思えるのは、
もともとの性格ですか?
- 瀬戸
- も、あるんじゃないですかね。
でもなんか「どうにかなる」と思ってるんですよ。
そこも楽しめたら勝ちだなって、何事も。
そう思うようになったのも
『マーキュリー・ファー』以降じゃないですかね。
なんかいい意味で余裕が出てきたというか。
- ──
- では、もしかするとこれも
『マーキュリー・ファー』以降かもしれないですが、
舞台の瀬戸さんって
なんかいつも楽しそうな感じがするんですよ。
- 瀬戸
- あ、それうれしいです。
- ──
- それは作品の内容とは関係ないんです。
『A Number―数』(2024年)なんて
いわゆる難役でしたもんね。
でも楽しそうだなって。
- 瀬戸
- あれはむずかしかったです。
でもまあ、どの作品をやるうえでも、
試練という意味では、
壁があったほうがいいと思うので。 - 演出のマンビィさん
(演出を手がけたジョナサン・マンビィさん)も、
ワークショップは行ったことがあるんですけど、
公演では初めてでしたし、
それ以前に、海外の演出家さんとやること自体が
初めてだったんですよ。
だからそういう意味でも挑戦でした。
- ──
- 二人芝居の相手である
堤真一さんとも初共演でしたしね。
その堤さんとジョナサン・マンビィさんは
何度も一緒にやられていて関係性ができている、
というのもなかなかの状況だなと想像します。
- 瀬戸
- そうですね。
でもなんかどこかで「自分ならできる」みたいな、
なんだろう、自分を信じてる自分もいて。
- ──
- ワクワクする?
- 瀬戸
- いや、正直、すっごい複雑でしたけどね、気持ちは。
ワックワクしてる自分もいるし、
緊張している自分もいるし、
「今さらだけど3役できるかな」って自分もいるし、
でも「どうにかなれ」って自分もいるという。
(つづきます)
2025-03-04-TUE
-
<放送日時>
毎週月曜 21時~21時54分<出演>
清野菜名
瀬戸康史
ほか<脚本>
橋本 夏、小柳啓伍<プロデュース>
渡辺恒也<演出>
水田成英、並木道子、丸谷俊平<制作協力>
C.A.L<制作著作>
フジテレビジョン