家で過ごすことが増えたいま、
充電のために時間をつかいたいと
思っていらっしゃる方が
増えているのではないかと思います。
そんなときのオススメはもちろん、
ほぼ日の学校 オンライン・クラスですが、
それ以外にも読書や映画鑑賞の
幅を広げてみたいとお考えの方は
少なくないと思います。
本の虫である学校長が読んでいる本は
「ほぼ日の学校長だより」
いつもご覧いただいている通りですが、
学校長の他にも、学校チームには
本好き・映画好きが集まっています。

オンライン・クラスの補助線になるような本、
まだ講座にはなっていないけれど、
一度は読みたい、読み返したい古典名作、
お子様といっしょに楽しみたい映画や絵本、
気分転換に読みたいエンターテインメントなど
さまざまな作品をご紹介していきたいと思っています。
「なんかおもしろいものないかなー」と思ったときの
参考にしていただけたら幸いです。
学校チームのメンバーが
それぞれオススメの作品を
不定期に更新していきます。
どうぞよろしくおつきあいください。

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no.19

映画『37seconds』

「産まれて」「生きる」ということ

  


(c) 37 Seconds film partners

劇場公開時にほぼ日社内で話題になり、
「ほぼ日カルチャん」で、
オススメされた映画でもあります。
でも、残念なことに、
新型コロナウイルス感染拡大防止のために
公開途中で映画館が休館……。
「ああ、悔しい」と思っていたら、
この映画を世界配給することになったNetflixで
配信公開されているのを見つけました!

タイトルの『37seconds』
産まれるときに、
たった37秒間息ができなかったことで、
身体に障害をもってしまったことを
意味しています。

この映画を観ていると、
ほぼ日の学校「ダーウィンからの贈りものⅠ」第4回
胎児の3D映像を見たときのことを思い出しました。
短い時間のあいだに様々な表情を見せ、
まるで宇宙遊泳するように自由に動きまわる。
子宮の中の胎児は、思いがけない表情を見せて
想像もしなかった生き方で成長している。

産婦人科医の増﨑英明さんの
「胎児さんは、絶対
僕らと同じ生き物じゃないんですよ」
という言葉を聞いたときは、
「えっ!?」と一瞬驚きました。
その意味は、オンライン・クラスを
ご覧いただければわかっていただけると思います。

(c)37 Seconds film partners (c)37 Seconds film partners

映画の主人公ユマもきっと、
子宮の中で“胎児さん”だったときは
手足を自由に動かしていたんだろうな。
ただ産まれ出てくるときに、
息ができなかったことで、
手足が不自由になってしまった。
わずか37秒のあいだ。
「私があと1秒早く息をしていれば……」
ユマはつぶやきます。
彼女のせいではないのに。

本作では、HIKARI監督が実際に障害を持つ人に
演じて欲しいと強く願ったことから、
演技初挑戦の佳山明さんがユマを好演しています。
ユマと同じように出産時のトラブルで
身体に障害を負った女性です。
そして、その「37秒」を誰よりも重く背負って、
娘を一人で懸命に育ててきた母(神野三鈴)の、
毅然としながらも危うい姿が切ないのです。

(c)37 Seconds film partners (c)37 Seconds film partners

とはいえ、本作は
ただのお涙ちょうだいの障害者映画、
母娘ものではありません。
人生にもがく普通の若者と同じく、
自我や世間の不条理に目覚め、
親の庇護を拒否するように、
ずんずんと未知の外の世界に突き進んでいくユマ。
そこで出逢う、出版社の女性編集長やデリヘル嬢。
常識とか、良識とかにとらわれず、
自分らしく生きる凛々しい大人の女性たちが
ユマの背を強く押します。

(c)37 Seconds film partners (c)37 Seconds film partners

物語は、ユマの自分探しの冒険です。
広く、遠い世界に羽ばたいて、
少し大人になって帰ってくるユマ。
娘を案じながら、静かにじっと待っていた母。
産んでくれてありがとう。
産まれてきてくれてありがとう。
心から、そう思える映画です。

徐々にですが劇場公開再開も予定されています。
詳しくはこちらから。

Netflixでの視聴はこちらから。

(つづく)

2020-05-13-WED

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